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昼休憩の隠れ東屋。
今は私とメイリン、そしてそれぞれの侍女しかこの場にはいない。
個室ではないところで、あまり話していいものか迷ったけれど、メイリンを早く安心させたくて、私は意を決して口を開いた。
「あのね、メイリン。一番初めはカンテラ伯爵令息だったそうなの」
「何が?」
「はじめに、カティを見初めたのがカンテラ伯爵令息様って事」
「え、そうなの?」
「えぇそうなの」
そうして、私はあのアルチェの一連の黒幕は、カイル殿下であり、それを頼んだのがカティを心配していたエルマール様だと暴露した。
その時に、カイル殿下がカティと私とを何故か勘違いしていた事も話した。
「だから、レニファにカンテラ伯爵令息を?」
私が頷くと、メイリンは大きく溜息を吐いた。
「レニファに言う前に、カンテラ伯爵令息を後押しすればいいのに」
それは私も思ったわ。
でもね、メイリン。その時はきっともうカイル殿下は気付いていたのよ、勘違いに。
とは言えない。
これは言ったら駄目だと流石に思った。
「カンテラ伯爵令息が煮えきらなかったらしいの」
「ヘタレってこと?」
「⋯そうかもしれないわね」
「はぁ、そうなのね。じゃあ、カティは本当にカンテラ伯爵令息に見初められて、婚約できたでいいのよね。カティは幸せになれるのよね?」
ずっと親友を案じていた、メイリンらしい言葉だなって思った。だから私はその言葉に頷いた。
すると、先程まで青白かった顔色が、少しだけ普通に戻ったようで、やっと安心できる。
お茶会のあとから、ずっと思い悩んでいたのね。
「レニファは?勇気って?」
「あぁ」
今度は私の心配まで。
でもメイリンその前に、私はあなたの話に非常に興味があるのだけど⋯。
ちょっと聞くのが躊躇われるなぁ。
「私の場合は、政略よ。ただローザン侯爵令息は好ましいと思ってるって言ってくださったから、前向きに考えようと思ってるの。ただね、隣国に行く勇気が持てなくて、それで迷ってもいたの。意外とオードン語は覚えるのは、難しくなかったのだけど」
「もう、オードン語を勉強しているの?」
最近勉強を始めたというと、メイリンは少し手を頬に添えて考え始めている。その姿が何だか普段のメイリンよりも女性っぽくって、ドキドキしてきた。
令嬢にドキドキする私って⋯⋯病気?
「私もレニファと一緒に勉強してみようかしら?」
動悸の理由をあれやこれやと考えていた私は、その言葉で我に返った。
メイリン!
カイル殿下の事を前向きに考えているみたい。
あんなに嫌悪していたのに、その心境の変化は何だろう?
「メイリン、お返事はしたの?」
「さっき、カティはちゃんと見初められたんだって聞いてから。踏ん切りがついたかもしれない」
「そう、良かった。おめでとう」
「⋯ありがとう?でいいのよね。カイル殿下がどうして伯爵令嬢の私に打診をした理由は分からないけれど、条件はこの上ないほどいいの。断る理由もないから、それに⋯」
「それに?」
「何でもないわ。でも留学はまだ考えられない」
「そうよね」
私もカティの話を聞かされて、婚約についてはお受けしようと思ったけれど、留学はまだ考えられなかった。
隣国に行ってしまうと、この国にはなかなか帰ってこれなくなる。
だからせめて学生の間だけでも、家族と過ごしたい。
それから私とメイリンは、ランチをしながらオードン語やオードン王国についての話に花を咲かせた。




