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「お嬢様、これを」
「何かしら、招待状?」
学園から帰宅した私に、家令が渡してくれたのは招待状だった。
とりあえずリザに預けて、そのまま部屋へ行き着替えて落ち着いた頃に、その招待状を詳しく見ると、何とカティからだった。
カティが、領地へ言ったとメイリンから聞いて2週間。それ以来全く連絡がなくて心配していたのだけど。
「リズ、返事を書くから用意してもらえる?」
「かしこまりました」
リズは、私の専属侍女になるべく、今とても頑張っている。
ユリアの御見舞に一緒に行った時も、必死にメモを取っていた。
ユリアの両掌の傷は塞がったが、少し指が引き攣るようになってしまって、今はリハビリをしている。
今無理をすると、後遺症が残る可能性をドクターから示唆された為、もう少し仕事は休ませる事になった。
周りもユリア本人も勿論私も、思っていたよりも怪我は深刻だった。
「場所が⋯」
「どうされました?」
私の呟きに瞬時にリズが反応する。
メイドの時は、こんな反応ではなかった。侍女見習いになってからのリズの努力が窺える。
「カティの家は、タウンハウスを随分前に一度処分して、元婚約者の援助で王都の郊外に借りていると聞いていたのだけど、慰謝料で買い戻したのかしら?場所が改めて記載されてるわ」
その住所は郊外ではなく、王都でも比較的中心街の近くになっていた。
「行かれますよね?明日ですか?」
「えぇ、勿論行くわ。明日の招待というのは異例だけど、きっと休んでいた理由にも関係あるのかもしれないし、何よりカティに会いたいわ」
「では、旦那様に報告してまいります」
「んー自分で言いに行くわ。話しがあると言ってきてもらえる?」
「畏まりました」
リズは、そう言って制服をクローゼットに仕舞ってから、部屋を出ていった。
リズが頑張ってくれている事が、とても嬉しく思えた。
そうして私は、翌日カティに指定された場所へ向かった。
◇◇◇
久しぶりに会ったカティは、どこかしら雰囲気が変わっているように思えた。
カティのお茶会に招待されたのは、メイリンと私だけだった。
久しぶりの再会をハグで交わしていた時、私は感極まって涙が溢れた。
カティの元気な姿が見られてホッとしたのだ。
何の連絡も情報もなくて、私もメイリンも心配で悪い方にばかり考えていたからだ。
メイリンは私以上に泣いている。
薄化粧が崩れて大変なことになって、彼女の侍女が直すのに一苦労していた。
「此処って前の場所とも違うわね」
メイリンの言葉に、カティはただ微笑むだけで、まだ話しは始めないようだ。
お茶が出されるのを待っているのかしら?
カティの侍女は、テキパキと仕度を熟して、お茶とお茶菓子が私の前にも整った。
そうすると、リズもメイリンの侍女もカティの侍女に促されて、視界の外に消えてしまった。
予め人払いを伝えていたようだ。
途端に私は緊張が走って、背筋がピンと張り詰めた。何かしらの難しい話しをカティがするのだと思ったからだ。
「二人とも、そんなに緊張しないで。実はうちの侍女と二人の侍女も、別の場所でお茶会をしてもらうつもりで用意していたの」
「えっ侍女のお茶会を?」
私が驚いて聞くとカティは笑顔で頷いている。その笑顔も何だか雰囲気が変わって見えた。休む前のカティは、大人しいどちらかといえば控えめな人だった。それが何だかそこに自信の様なものが浮かんで見える。
何かしら話しがあるのだろうと思い、私は薦められるままお茶を口にした。
一口飲むと緊張から乾いていた喉が潤う。
メイリンを見ると彼女も同じように緊張していたのだろう、その様子を見るとメイリンにも事前に知らされていなかったようだ。
3人ともに一口目を飲みカップをソーサーに置いたとき、カティは一瞬だけ視線を下に落としてから、再び上げて話し始めた。
「実はね、私このまま学園は年度末まで休んで留学することになったの」
「「えっ?」」
「婚約が整ったから、オードン王国へ行くことになって、留学前に色々と準備をしなきゃならなくて。二人には、先に報告しなきゃって思ったから今日招待したの」
私もメイリンも驚いて、カティを凝視してしまう。
カティが婚約するなんて、全く聞いていなかった。きっと突然の話だったのだろうと思った。
そして私にはそれが誰なのか分かった。
「お相手はどなたなの?」
メイリンが震える声でカティに聞いた。
「カンテラ伯爵令息様よ」
やはりエルマール様だった。




