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ケビン様とカイル殿下の、この国の貴族家に対して懺悔をしているような話が続いていた。
お父様が指摘したのは、貴族の婚姻についてだという。その言葉をケビン様が仰ったとき、何当たり前のことを指摘したのか、と私は思った。
貴族の結婚は主に政略。
お互いの家が、何かしらの関係により、今までよりも多くの物を手に出来る為に、その関係が強固になるように婚姻を結ぶ。貴族の令嬢はそう言って親に育てられてきている。
極稀に恋愛結婚も無きにしもあらずだが、カイル殿下がこの国の貴族に申し込んだのは政略の方だった。
その点がお父様の前置きだった。
それならば、貴族の令嬢がお見合いの席で言った言葉たちは、カイル殿下の意向には添えていなかったかもしれないが、本当に不適切でありましたか?
この国の貴族家達が、カイル殿下と婚姻するに当たって、何も提示されていないのではないですか?
それならば、カイル殿下と婚姻する事の旨味は、王子という点でしかないのでは?
だから、後押しという事を、内政干渉になるかもしれないと思いつつ、見合いの席で確かめたのでは?
何れ臣籍降下する予定の爵位の提示はされましたか?
大事な娘を誰も知りあいのいない隣国に嫁がせるのに、家に何の享受もないとなれば、安心して嫁がせられないし、娘も嫁げない。その不安を解消する為の、説明を省略するのは傲慢ではありませんか?
まさか、王子に嫁げるのだから嬉しいだろうとか、思っていませんよね?
と概ねがそんな事を手紙で指摘したらしい。
お父様⋯⋯。
「我々もそうだが、殿下がその手紙を読まれて落ち込んでいらした」
「も、申し訳「謝らなくていいんだ。悪いのは我々だった」」
お父様の質問攻めの手紙の内容を、聞いていくうちに、実は私はなるほどなと思ってしまった。だけど、話の流れ的に謝罪をと思ったけれど、ケビン様に途中で止められた。
そして彼は自分達の非を認めたの。
「クルーズ伯爵が、今回その指摘をされた理由は、私がレニファ嬢に婚約を申し込んだこともあるけれど、エドラー伯爵令嬢に殿下が恋をした事が関係していた」
「エドラー伯爵令嬢の事ですか」
確かにあの時私はお父様に、メイリンはカイル殿下の事を、あまりよく思っていないと言ったし、それならばメイリンの気持ちを考えたら迷うと言ったけれど。
「カイル殿下とエドラー伯爵令嬢との仲を取り持ってほしいと私は言わなかった。ただチャンスが欲しいとだけ言ったよね」
「ええ、ケビン様はそう仰いました」
「でも、どんな形であれ、レニファ嬢が間に入るということは変わらないとクルーズ伯爵は考えていらした。指摘されると、そうだと私も思ったよ」
「⋯そうですね」
それを聞いて、私もそこまでは考えていなかったと思えた。
カイル殿下にチャンスというけれど、結局は殿下がメイリンに婚約を申し込むという事なのだ。どんな作戦を考えて、どんなセッティングにしようとも、結論は変わらない。
それはメイリンからみたら、私がカイル殿下との仲立ちをした事になる。
いくら、私には《《そんなつもりはなかった》》としても、メイリンはそう思うはずだ。
しかも全く私には悪意がないのだ、だって《《そんなつもりはない》》のだから。
そして隣国の王子に正式に申し込まれれば、エドラー伯爵は断れない。そしてそんな父親を見ればメイリンもどんなに不本意でも嫁ぐ事を決めるだろう。その婚姻にエドラー伯爵家には何の旨味がなくても、メイリンがカイル殿下の生贄のように。
そこまで考えて私は血の気が引いてしまった。
「クルーズ伯爵の手紙では、エドラー伯爵令嬢に申し込む時には、適切で真摯な態度でお願いしますと書かれていらしたが、今日私と会ったときにお話されたのは、レニファ嬢への事だったよ」
「私の事?」
「あぁ、今までの学園生活で、何の楽しみもなく過ごしていた娘が、やっと得られた友情を隣国の王族と貴族に滅茶苦茶にされたくないと仰った」
「お父様が⋯」
私はお父様が、どんなにか覚悟を持ってカイル殿下への指摘を手紙に認めたのか。
それを考えたら、涙が溢れてきた。
それにメイリンとの友情は、私だって壊したくなんかない。
「今日、私の覚悟をクルーズ伯爵は聞いてきたよ。まだ調整中で申し訳ないけれど、侯爵家とクルーズ伯爵家の事業提携を提案させて頂いた。それも含めて私との婚約を考えてほしい。当たり前の事を提案するのが遅くなって申し訳なかった」
ケビン様はそう言って私に頭を下げてくれた。
貴族の婚姻を好ましいなというだけで考えようとしていた私は、まだ覚悟が足りなかったのだと、気付かされた。
これでは、ケビン様に嫁いでも隣国では、やっていけないだろう。その時、お父様の言葉がまた思い出された。
『そうだ、一人でも隣国に嫁いでいける覚悟を先ず考えなさい。私達はお前の気持ちと意思を尊重するから。わかったね』
私はお父様の愛情を強く感じて、溢れる涙を止められなかった。そんな私の涙を、ケビン様がご自身のハンカチで優しく拭ってくれるのが、私の気持ちに寄り添ってくれてるようで堪らなく嬉しく感じた。




