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ユリアを送り出したあと、外出からそのままだった私は、部屋で着替えを手伝ってもらってメイクを直してもらう。
私の専属侍女はユリアだけだ。
今日からユリアが復帰するまでは、ユリアのお手伝いで偶に来ていたメイドのリザが、代わりをしてくれる事になった。
「どうですか?」
「大丈夫よ、ありがとう」
私の事はほぼ全てユリアがしていたけれど、リザはその横で補助をしてくれたこともある。メイクの時に、ユリアへブラシを渡したりしてくれていたようで、私の好みの薄めのメイクを施してくれた。
私の言葉にリザはホッとした顔をしていた。
その時、ノックの音がして、お父様が呼んでいると家令が言いに来た。
お父様とケビン様はどんなお話をされたのかしら?
とても気になるところだった。
「旦那様、レニファ様がお見えです」
「入りなさい」
お父様の執務室へ入ると、ケビン様はいらっしゃらなくて、代わりのようにお父様の対面にはお母様が座っていた。
「そこに座りなさい」
「⋯⋯⋯はい」
そんなに広くもないけれど、ぐるりと目線で部屋を一周してしまう。そんな私にお父様が、一人がけのソファに座るように言った。
ケビン様は、もう帰られたのかしら?
ご挨拶しそびれてしまったわ。
不安に思いながら座ると、お父様が話し始めたのはアルチェの話だった。
それはそれで気になっていたので、居住いを正して聞く姿勢を取った。
アルチェが、彼女の父であるマーカー子爵に見限られて、修道院に送られた事は聞いていた。だけど、今日王都に彼女はいたのだから、何か変更でもあったのだろうか?
「実は、マーカー子爵令嬢は修道院に行く途中で、行方不明になったと、今朝連絡が入っていた」
「今朝?」
「あぁ、レニファが出かけたあとだ」
「そうだったの」
「誘拐されたという話だったのだが⋯」
「誘拐?」
お父様が聞き捨てならない事を仰った。
アルチェが誘拐?
いやいや堂々と王都の街で騒ぎを起こしていたけれど?
あっ!ひょっとして?
「あの、ひょっとして伯父様は誘拐犯と思われて?」
「そうらしいな。というか捕縛したときは騎士の方も分かって連れて行ったのだろうが、共犯として」
「共犯ですか?」
「今朝行方不明の連絡があったのは、我が家も疑われていて、聞き取りのために秘密裏に来た騎士団から知らされたんだ」
「な!」
何とアルチェは、修道院に行く途中で行方不明になり、その後子爵家にお金の要求があったらしい。アルチェの父であるマーカー子爵からの訴えで、調べていた騎士団がお父様にも今朝話を聞きに来たそうだ。
「でも、アルチェは誘拐されたようには見えませんでした。しかもユリアを突き飛ばしたりして!」
思い出したら再びムカムカと怒りが湧いてくる。アルチェがユリアを怪我させたのだ。
謝罪させたい気持ちも同時に湧いてきた。
「どうやら、ケビン君がレニファを助けようと前に出た所に、騎士から声を掛けられたらしい。それでアルチェの素性がわかり、数日前から誘拐されていたはずの令嬢が、王都で堂々と人前に居る事で、虚偽の訴えの疑いで捕縛することになったそうだ」
「そんな事が⋯」
なんとも言えない気持ちになった。
伯父のゲットン伯爵の様子では、アルチェが誘拐されたという訴えがあった事を伯父は知らない?
どう考えても誘拐などされているようには見えなかった。
「またカティリアが何か企んだのかもしれないわね。これで《《あの人》》も懲りるといいのだけど」
お母様は、頭を振りながらそう言ってお茶を飲んでいた。
「レニファ、マーカー子爵令嬢の話は、今の所分かっているのはそんな所だ。一応ユリアが怪我をさせられた事は、我が家から騎士団に文書で先程届け出た。あとは、騎士団に任せることになる。いいな」
「⋯⋯はい、ユリアがいいならそれでいいです」
「そうか。アルツドクターが、御見舞は受け付けてくれるそうだから、数日様子を見てから行ってみなさい。ユリアの怪我が治ったら私からも何かお礼をしなければな。レニファを守ってくれたんだから」
「はい、お父様お願いします」
お父様は私を安心させるようにそう言った。
話の区切りだったようなので、私も出されたお茶を飲んで見る。流石にお母様の秘蔵の茶葉は今日は使われていなかった。
いつもの我が家のお茶だ。渋みが少ないお茶で、私は我が家の領地のこのお茶も大好きだ。
お茶を2口ほど飲んだところで、お父様が私の方を見た。
何だろう?
「レニファ、今日の夕食は王都のレストランを予約している。カイン君が迎えに来るから仕度をしておきなさい」
「えっ?レストランですか?」
「ユリアがいないから、代わりに侍女長が一緒に行くから」
「⋯はい」
「今日、彼とは少し話をした。何を話したかはケビン君から聞きなさい。レニファにも関係するからな」
「⋯⋯わかりました。では⋯⋯失礼します」
ケビン様はいつの間にか居なくて、戸惑ったけれど、何故か今日の夕食を一緒にする事になっている。
私の知らないところで、誰もが色々と動いているみたいで、何だか落ち着かない気分になる。
それでも⋯⋯。
(夕食をご一緒できる)
その事に私の心はとても弾んでいた。




