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王都の最も人が集まる場所。
大通りに面した広場に設置された噴水。
通称噴水広場といわれる場所から、少し道を反れた場所に、馬車停りがある。
その場所で、起こした騒ぎだ。
何事かと野次馬はあとを立たなかった。
ケビン様は、私の手を握り安心させてくれたあと、後ろに控えるユリアの怪我に気が付いてくれた。
彼に会って呆然としていた私は、その事を忘れてしまっていた。主失格である。
「君の侍女だったよね、怪我したのか?」
「あっ!ユリア、ユリア手当をしないと」
慌ててユリアの元に駆けつける。
痛々しいほどハンカチが血に染まっている。
止血出来ていなかった?
思わずハンカチを触ると、血は固まってきていた。
「お嬢様、大丈夫です。お嬢様を守れず申し訳ございません」
ユリアはそう言うと私に頭を下げた。
隣にいる御者もユリアに合わせて頭を下げている。
私は、急に思い立って外出したことを、もう何度目かわからないほど後悔していた。
「私の方こそ、外出なんかしてごめんなさい。とりあえずユリアは手当をしないと、何処かに噴水以外の水場はないかしら?」
私の言葉に御者が心当たりがあるというので、付いていくことにした。
すると、私の横にケビン様が並び、一緒に行こうとする。
「ケビン様?」
「ん、何?」
「いえ、あの、一緒に行くのですか?」
「えっだめなの?」
だめではない。
だめではないけれど、どうして?
そんな言葉が頭に浮かんだけれど、私の疑問よりも先ずはユリアだ。
私の疑問は後回しにして、ユリアを連れて御者の案内で、当初昼食を食べる予定だった公園の水場にやってきた。
そこは、馬車用の馬に水や餌を与える場所で、水場が広く、怪我を洗い流して血が流れても大丈夫そうな場所だった。
他の人の迷惑にならないように、一番端の方へとユリアを連れて行く。
洗い流している間に、薬と包帯を御者に買ってくるように私が頼むと、ユリアがポケットから小袋を一つ出して御者に渡している。
そうだ、私は普段お金を扱わないものだから忘れていたが、今私は無一文で御者に買い物を頼んだのだ。
可哀想な御者、申し訳ない。
御者が走っていなくなると、ケビン様が「失礼」と言って、ユリアの腕をまくった。
怪我は掌なのに、何て無礼なことをしているの?
そう思ったが、それは私の浅慮な考えだった。
御者が水場で汲んできた桶に入った水を、ケビン様は小さな容器で何度もユリアの掌に掛けていく。
始めはハンカチの上から、ハンカチがびしょ濡れになると、今度はそれを解いて直接傷に掛けていった。
腕を捲ったのは、水を流す度に水滴が跳ねるからだった。飛び散る水滴には血が混じっている。ユリアの袖にそれが飛ばない配慮だった。
私って、本当に何にも知らないのね
イレギュラーな出来事が起こった時に、その人の真価が問われると歴史学の時に教授が言っていた事を思い出す。
私の真価って⋯ダメダメ?
カイル殿下やエルマール様を残念だなどと、思っていたけれど、どこから目線で言っていたのか。
私の方こそ残念な人だ。
蠱毒令嬢じゃなくて残念令嬢だ!
ケビン様がユリアの掌を、何度も洗い流してくれている間、私は、洗い流されるたびに痛みに顔を歪めるユリアの横で、彼女の体が傾がないように、支えて上げることしか出来なかった。




