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恩人の彼の勘違い  作者: maruko


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 二人っきりのお茶会にて~


 私とケビン様の会話が、聞こえない位置まで下がっていたユリアが、話の切り替えを感じたのか、お茶のお代わりを淹れに来た。お母様秘蔵のお茶は、2杯目も美味しく私達の喉を潤していく。


「うん美味いな」

「ありがとうございます」


 我が家の用意したお茶を褒められるのは満更でもなく、私は嬉しくて微笑んで返事をする。


「一つ、誤解しないでもらいたいんだが、私の頼みごとと、私との婚約は一応別のものとして考えて欲しいんだ」

「別のものですか?」

「あぁ、確かにあなたに殿下の事を頼もうと思った時に、婚約を思いついたのはそれは間違いない。けれど、前提として私がレニファ嬢を好ましく思っているから出た考えなのだと分かって欲しいんだ」

「⋯⋯⋯あの、好ましい⋯ですか?」

「⋯⋯あ、あぁそうだ」


 突然の好ましい発言は、私の心を強く揺さぶった。

 男性にそんなふうに言われたのは、初めてではないだろうか?

 あっ!カイル殿下がエルマール様の気持ちが云々言っていたけれど、あれは全くの勘違いだから⋯うん!やっぱり初めてだ。

 それは、とても嬉しかった。

 だけど、それを素直に表面に出すことが出来ない私がいる。

 恋とも言えない淡い気持ちを、散々勘違いで右往左往させられた事が、私が素直になれない理由だった。

 そうだ、信じたいけど信じることが出来ないのだ。

 目の前のケビン様がうざ絡みしたわけではないけれど、でも殿下のそばにはいたから私の中では同罪なのだ。


 好ましいと言われて、素直に嬉しいと思える自分と、本当に?揶揄ってるんじゃないの?と考える自分もいる。


 色々と思考を飛ばしていたから、複雑な表情をしていたのか、ケビン様が私にもう一度優しく繰り返した。


「難しく考えないで欲しい。君を好ましいと思っているのは本心だよ」

「⋯⋯⋯!」


 私は単純なのだろうか。

 言われれば言われるだけ、信じたいと思う天秤の方に気持ちが大幅に傾いていく。

 そして隠したくても隠せなくなった。何故なら私の隠したいと言う気持ちに反して、私の頬は勝手に赤く染まっていくのだ。


 お願い!私のほっぺ!

 冷静になって!お願いだから。


 願いも虚しく頬から額に耳にと伝わって、私は頬だけではなく、顔全体が真っ赤に染まってしまった。


 恥ずかしくて俯いていた私、チラリと上目で見るとケビン様がこちらに笑顔を向けている。

 本っ当にその笑顔は、勘弁してもらいたい。益々顔を上げ辛くなっていく。

 そんな赤面乙女に、ケビン様は容赦なく話の続きを始めた。


「それから、ここからがお願いなわけだけど、薄っすら気づいているかもしれないが殿下の事なんだ。実はね、カイル殿下は結婚したくない宣言までしていたんだけど、ここに来て、あと数カ月で卒業するという、こんな時に恋をしてしまったんだ」

「えっ!恋?」


 赤面乙女は恋というワードに敏感で、思わず赤面のまま顔を上げて、驚きの声が出てしまった。


「あぁそうなんだ、恋だよ。それで君のことを勘違いと分かってからも、恋する相手と接点を持ちたいがために、そのフリをし続けていたんだ」

「な、何ですって!それが勘違いと分かってからも、あの苦行を強いた理由ですか?」

「あ、あぁ実はそうなんだ」


 私はカイル殿下に呆れてしまった。

 全くなんてとんでもない王子だ!

 そして自然と殿下がだれに恋をしたのかわかってしまう。それはどう考えても2択だ。


「どちらですか?」

「⋯⋯」

「メイリン?」

「⋯⋯」

「カティ?」

「!」

「カティなの!」

「違う!彼女はエルの!あっ!」


 なるほどエルマール様の想い人はカティだったのか。あぁそれなら早く婚約者を排除してあげたい気になるのは納得だった。

 カティの元婚約者は私達が思うよりも遥かに屑だもの。

 なんせ、お飾りの愛人ですからね。いやこれ考えたのはアルチェだったわ。

 まぁどっちみちどちらも屑で間違いないから、どちらでも構わないかな?


 カティ(そちら)に意識が持って行かれ、私は暫く肝心な事を考えていなかった。

 油断していたとはいえ、エルマール様の秘密を暴露してしまったケビン様は、私の前でアタフタしていたようだったが、私はそれに暫く気付くことも無く


 (まぁでもエルマール様って意外とヘタレなのね。そんな人にカティを任せられるかしら?)


 なんて事を考えたあと、アレッ?私重大な事を聞かされなかったかな?

 エルマール様の想いびとがカティで。

 殿下の恋した相手は2択で⋯⋯。


 えっ?


「カイル殿下はメイリンに恋しちゃってるんですか!?」


 意識が脳内に行っちゃっていた私は、自分が暫く黙り込んでいた事に気付かずに、大きな声を上げたのが突然だったらしい。


 私の大声で、ケビン様は危うく心臓発作を起こしかけた。








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