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ケビン様は呆けた顔の私を見ながら、ゆっくりとお茶を飲む。
途中で目を少しだけ見開いたように見えたのは錯覚かしら?
カップを口から離すと同時に視線が私から外れた。
思わず「ふぅ」と息を吐いた。
イヤだ、私息を止めていたみたい。
顔を上げたケビン様は、またもやあの笑顔を振りまく。もうそれはやめて頂きたい。
そんな私の心中を察してか、今度は「クスッ」と笑い声も漏れていた。
「突然の提案でびっくりしたかもしれないけど、呆けた時間が長すぎる。おーい戻っておいで」
戯けた事を言うケビン様に、若干イラッとしてしまう。いや若干どころじゃないかも⋯。とてもとても苛ついた。
「冗談でも、言っていい事と悪い事の区別もつけられないのですか?」
「心外だな、冗談なんて言うわけ無いだろう」
「⋯っ!」
冗談じゃないなら本気だとでも言うのだろうか?
何故?
どうして私と婚約なんてしたいの?
お願いっていったい何なの!
その時心の中で思ったことが、顔に出ていたようで苦笑しながらケビン様は私を宥めようとする。
「ちゃんと説明するから、そんなに警戒しないで。それと怒りも鎮めてほしいな」
「⋯⋯説明してください」
「もう少し、柔らかくお願い。あっお茶飲んで!気が鎮まるよきっと。とっても美味しいから」
我が家の出したお茶を褒めてくれるのは嬉しいけれど、なんか違う気がしてしまう。良いように言いくるめられてる?
それでも、気を鎮めるにはお茶が一番だと私も思ったから、コクリと一口飲んで唖然とする。
お母様!
これって先日、ご友人の公爵夫人から、領地の初摘みを頂いたわと、ご自分だけで部屋でこっそり飲んでいたものじゃないですか!
先日強請って一度だけ、私も飲ませてもらった稀少なお茶を、ケビン様に惜しみなく出すなんて。
お母様の気合が見えた気がして、私は真っ赤になってしまった。
お母様もユリアと同じく絶対お見合いだと思っていたのだと、私は脱力してしまう。
でも、とふと気付いた。
そういえば私は先程、ケビン様から婚約を申し込まれたわ。
どんな理由があるのかを聞いてみないと。
そうして、思考に耽って視線を下げていた私は、ようやく顔を上げて、ケビン様の顔を見つめた。
「実はね、殿下がエルの好きな人を勘違いしてるのは事実なんだ」
「やっぱり」
「まぁね、でも勘違いしてもおかしくない状況でもあったんだよ。それはエルも悪いんだが、それは今は関係ないから説明しない」
「えっ?私には多いに関係ありますけど。殿下にちゃんと説明を、ってどうして勘違いってわかっているのに、言い続けていたんですか?わかっているなら誤解を解いて欲しかったです」
「いや、ごめん。その⋯実はね。それもだいぶ前に殿下は解っていらしたんだ」
「は?」
ケビン様の言葉に私は顳顬がピクリと引き攣るのが分かった。
誤解は解けていた?
一体いつ?
でもだいぶ前って今言ったわよね。
「いつからですか?!わざと?ねぇあの苦行はわざとですか!?」
「く、苦行って⋯そんなに?」
「当たり前です!王族の方の側で食事をするなんて、肩に力が入りまくって食べた気なんかしません!」
「も、申し訳なかった」
ケビン様は、私の気迫に焦ったようで、手を合わせて拝むように私に謝り倒している。
そんなケビン様を私は腕組みをして睨んでいた。
あとで、ユリアに「怖かったですよ、今後はお気をつけください」と苦言を呈された。




