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我がクルーズ伯爵家はそこそこの伯爵家だ。
そこそこと言っても、伯爵と名乗る方々を上から並べたら、中の上位にはきっと数えられるはず。
そんな我が家には、自慢の庭など存在しない。
そこそこの広さの庭を、そこそこの腕の庭師のペリィが、頑張って手入れしてくれている。
その庭が見えるサロンに準備をして、我が家は、ローザン侯爵令息ケビン様の訪いを歓迎した(私以外)。
玄関前で、お父様とお母様、そして弟のショーンに私。私達の後ろには家令と執事と侍女長まで揃ってお出迎え。
その仰々しさに怯むことなく、ケビン様は訪いの挨拶をする。
「クルーズ伯爵、来訪を快くお認めくださり感謝申し上げます。クルーズ伯爵令嬢も皆様もお出迎えありがとう」
ケビン様が私の名を出したので、用件は私にあると存外に匂わせる。
はぁ、これが高位貴族なのだと思わず感心してしまった。
でもこれって伯爵令嬢如きの私がすれば、ただの勘違い女になりそう。
そんな事を思いながら、お父様に案内されるケビン様の後ろをお母様とついて行く。
はじめのうちは、当たり障りのない時候の話や世間話などを、私の両親としていたけれど、30分ほど経過した時、お父様が徐に言い出した。
「ケビン殿、良かったら我が家の料理長が腕を振るいますので、昼食をご一緒に如何だろうか?」
「ありがとうございます、是非とも」
「では、あなた。私達はそろそろ外しましょうか?折角のお越しなのですもの。レニファ、あとはよろしくね」
何だか、予めお父様とお母様が打ち合わせたように、ショーンを連れてサロンを退席する。
私はその姿を眺めながら、今までの事もある為、あぁケビン様はどんな厄介な話を持ち込んで来るのだろうかと、心の中で嘆息していた。
そんな私の姿を、しばらく見つめていたケビン様が、急に首元を締めていたシャツのボタンを一つ開けた。
「久しぶりに貴族の家に訪問したから、緊張しちゃったよ」
砕けた話し方を始めたケビン様に、私は呆気にとられる、先程までは貴公子然(いや貴公子だけど)としていたのに、なんだろう?
そういえば先程両親も交えたお喋りの中で、ついでの様にお互い名呼びすることを約束もさせられた。
そんなに親しくなかったのに、随分な変わりようである。
何を企んでいるかわからずに、訝しみながら見ている私に、突然ニコッと彼は笑った。
眩しい!
思わず目を瞑るほど、キラキラとした笑顔は反則級だった。隣国の第二王子であるカイル様の側近だからか、たしかにケビン様もその容姿は整っている。それでも今までは、ここまで美丈夫だと思った事はなかった。
それ以上に端正な美丈夫が、常に彼の側に居たからかもしれない。
「レニファ嬢は突然でびっくりしたよな。急に申し訳なかった。ただこちらももう時間がないこの切羽詰まった状態で、どうにかしなければならないから、君には協力してもらいたいんだ。そのお願いにやって来た」
「協力?お願いですか?」
「あぁ、そうなんだ」
やっぱり。
ユリアが言っていたようなお見合いではなかったのだ。
私は期待していたわけじゃなかったのに、何だか肩透かしを食らった気分だった。
でも協力って何をさせられるの?
面倒事なら断りたいけど、私って断れる立場なのかな?
「レニファ嬢、協力してもらう事もそうなんだけどね。それも踏まえた上で、私と婚約してもらえないか?」
「⋯⋯⋯⋯へ?」
私はケビン様の申し出に、思わず口から変な言葉が飛び出して、扇で隠す暇もないほど、呆けた顔を彼に晒していた。




