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そろそろ暑くなる季節ね。
新緑の枝ぶりが立派な、我が家の木々に窓越しで話しかける私、勿論心の中で。
セコズ伯爵は、夫人とアーノルドを連れて、恐縮しながら我が家の応接室で鎮座している。
隣に座るアーノルドとそれを挟んだ向こうに座る夫人は、全く以前と変わらず、心の内では何故我が家がこちらに来なければならないの?などと考えていそう。
横柄な態度の彼等には、伯爵の気持ちは伝わらないらしい。
“厚顔無恥”
メイリンの言葉が、真理だったと思わずにはいられない目の前の二人だった。
お父様とセコズ伯爵が、今後についての話をしている間、こちらを睨む視線に真っ向から返すのも馬鹿馬鹿しくて、私は只管窓の外の我が家の新緑を見つめながら、心の中で木々に語りかける。
「レニファ」
「えっ?」
自分の婚約のことなのに、お父様任せで全く聞いていないという、他力本願を発揮していた私は、声を掛けられてつい驚いてしまった。
「セコズ夫人が、お前の気持ちを聞きたいそうだ」
「私のですか?」
私の問にお父様が頷くので、私は視線を夫人に向ける。彼女はいつものように、少しまぁるい顔の眉間に皺を寄せていた。
「あなた、本当にアーノルドと離れてもいいの?」
「へっ?」
思っても見ない事を言われて、思わず変な声が口をついて出てしまった。
その言い方だと、私がアーノルドを好きみたいではないか!
えっ!本当に?
まさかそんな勘違いを?
私は夫人に向けていた視線を、少しずらしてその隣に座るアーノルドを見た。
婚約を結んだ時は、嫌ではなかった。
それは本当だ。
だけど、彼に関して思うのはそれだけのような気がする。
慕う気持ちは正直なかった。
僅かにあったかもしれないが、覚えてない時点でなかったと言える。
今はもう嫌悪の対象でしかない。
そう思って一旦俯いて、再び彼に目を向ける。
うん、無理。
「全く問題はありません」
私は、自分の気持ちを夫人だけではなく、前に座る3人をゆっくり眺めつつ、微笑みながら言い切った。
その時、窓の外の新緑が風にそよいで揺れた。
「よく言った」
そう言われたみたいで、私の心は軽くなった。




