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恩人の彼の勘違い  作者: maruko


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 午後の授業は、普通に受けられた。

 午前中に私の頭の中をグルグルと渦巻いていた、色々な事柄は、昼休憩で聞いたカティの話で上書きされた。


 先程まで私は、自分が世界で一番可哀想だと思っていた。“蠱毒令嬢”などと渾名をつけられ、一人で寂しい学園生活を送り、卒業したらアーノルドと婚姻する。アルチェの影が見え隠れする婚姻生活。


 それだって想像すればゾッとするけれど、少なくとも私は婚約破棄をしても良いと言ってくれる両親がいた。それは我が家がセコズ伯爵家と対等だからだ。何なら家格で言えば少し上かもしれない。少しだけだけど。


 もし、アルチェが今回退学にならなかったら?


 それを考えたら、カティに振りかかった不幸は私の比ではないと思えた。

 アルチェ(彼女)が退学しなくても、私は婚約破棄の道を選べるが、カティはご実家の事がある為、そういうわけには行かない。


 良かった。

 今回のことで、カティはお飾りの愛人などという訳のわからないものになる事はなくなった。

 そして今まで影で支えてくれたメイリンとも、大っぴらに友人として付き合えるようになったのも、カティには嬉しい事だろう。


 子爵家の借金問題も、伯爵家からの慰謝料で、かなりの額が払われた事で解決したらしい。


 彼女にとっては、今回の件で婚約者と離れられた事は僥倖と言える。


 (私も早く破棄できるといいけど)


 午後の授業中、私はエルマール様のこともカイル殿下の事も、頭の中に一つも思い浮かべる事はなかった。



 ◇◇◇



 カティの話を聞いてから2週間、漸く今日セコズ伯爵が、我が家へ訪れる予定だ。


 あの日から私は、メイリンとカティの友人枠に入れてもらい、昼休憩も彼女たちと過ごしている。あの日の帰りの馬車内では、ユリアが涙を流さんばかりに「お嬢様良かったです」と繰り返していた。


 クールな彼女のそんな姿はあまり見たことがなくて、私はこんなにも彼女に心配をかけていたのかと、申し訳ない気持ちと、ありがたい気持ちが同時に胸に広がった。


 自分のことを心から心配してくれる人がいることは、とても幸せなことなのだと実感する。


 アルチェの憂いが無くなった今の私は、残る問題の内の一つと本日対峙する。


 食堂で遭遇してからも、度々アーノルドの襲来はあった。

 殆どは同じクラスのメイリンが、撃退してくれるし、私もかなり強気でアーノルドに破棄を告げている。


 それでもめげない彼のバイタリティは、何処から湧いてくるのだろう?


 取り敢えずこちらを先に決着つけたら、もう一つもどうにかしたい。


 最近私の周りに、アーノルド以外の男性がチョロチョロとしていて、正直言えば苛ついている。


 私もカティのように、早く心の安寧を取り戻したい。


 もう恋だの婚約者など、考えたくないわ!








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