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恩人の彼の勘違い  作者: maruko


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 久しぶりに来た学園は、今までの私にとっては、驚くほど変わっていた。

 アルチェによって流された悪評は、全てが彼女の策略だったと分かった皆が、授業の合間の小休憩のたびに謝罪をしに私の席近くへとやって来る。


 彼等はアルチェの母親の事も、今回の事で親から聞かされたのだろう。その事にも触れたりしていて、私の怪我にも気遣いを見せてくれる。


 本当なら、とても嬉しく思えたはずのその出来事も、私の中では馬車から見る窓の外の景色のように流れていく。


 午前の授業は、全く頭に入らなかった。

 昨夜のお父様の言葉を何度も何度も思い出していた。



 夕食後にお父様に呼ばれた私は、執務室へと向かった。

 中にはお母様も待っていた。


「明日から、学園に復帰するが無理はしないようにな。体を徐々に慣らす感じでいいんだぞ」

「えぇ、でも昨日から庭を散歩もしているし、今日もゆっくりだけど一周できたもの。大丈夫だと思うわ」


 お父様の心配する言葉に、私は大丈夫だと繰り返した。


「それでだな、今まで調べたことなんだが」


 そんな切り出し方で、お父様は話し始めた。

 アルチェによって評判を落とされた令嬢は3名。

 伯爵令嬢が一人、子爵令嬢が二人。

 3人の令嬢の婚約者は全員伯爵令息。

 その3人の婚約者を両天秤どころか、何かの法則のように歪な3つの天秤にアルチェはかけていた。


 本命は、子爵令嬢の婚約者だったらしい。

 それは周りの私見で、アルチェの本音は今となっては分からないそうだ。何故その方を本命と周りは見たのか、それは見目と生家の伯爵家の財政だった。


 私の婚約者のアーノルドの生家、セコズ伯爵家は、そこそこな家だ。

 アーノルドの見目はそれなりに整っていた。

 ただ、彼の家の財政は良くも悪くもない、派閥でもあまり発言力のない家で、本当にそこそこな家だった。


 そしてお父様が言ったのは、アーノルドに関しては、私の婚約者だったからというのが大きいそうだ。

 もし彼が私の婚約者でなければ、アルチェは狙わなかったかもしれない。

 そう考えると、アーノルドは気の毒と言えるのか?と考えたけれど、いやいやそれは関係ないと思い直す。

 もしそうだとしても、私を蔑ろにしていい理由にはならないのだから。


 そしてお父様が調べた結果、やはりカイル殿下は、“側近候補”の為に、今回動いたということ。

 その動きは早く、水面下などという、まどろっこしい事をせずに、直球でアルチェを追い込み退学までさせたのだ。


 そしてお父様は言った。


 カイル殿下が、国外で婚約者を探す理由は、隣国の王位継承の争いごとを減らすためだという。

 その事は、直接お父様の友人である王宮の外務省に務める方からの情報で、侯爵家以上に通達された話らしい。


 隣国の王太子殿下が子を儲けるまでは、継承権の放棄が出来ないカイル殿下は、未だにカイル殿下を押し上げようと、自分の娘を差し出そうとする貴族たちを躱すために、我が国での婚約者探しを吟味することにしたという。


 カイル殿下の希望は、我が国の高位貴族でもそこそこな家が好ましいと仰っていたそうだ。


 そして、婚約者が孤立しないように、自分の側近候補の者達にも、我が国で婚約者を選んでほしいと、一緒に留学してきたのだとか。


 そして今回どちらの側近候補の為に動いたか、それがエルマール様だったそうだ。


 自分の好ましいと思っている令嬢が、誹謗中傷を受けているのが許せない、しかもその令嬢を守らなければならない婚約者が、その行為を見てみぬふりや蔑ろにしている。


 助けてあげてほしいと、エルマール様に懇願されてカイル殿下が動いたのだと、お父様は()()()殿()()()()()()()()()()()そうだ。


 偶然にもお父様が友人と話している所へ、カイル殿下が訪ってそれを聞かされた。


 直接カイル殿下に聞かされた事で、お父様は、エルマール様が好ましいと思っているのが私ではないかと、昨夜、自身の見解だがという言葉付きで話してくれた。


 でもここでお父様から注意が入った。


 エルマール様の思う相手が私だと思ったお父様が、私に注意を促す為にその話をしたようだった。


 驚いたことに、私はまだアーノルドと婚約破棄に至っていない事を知らされる。


 セコズ伯爵家、特にアーノルドが認めないそうだ。

 アルチェの事を知る前に、婚約破棄の書状は送ったけれど、その書類が整う前にアルチェの所業が露見されてしまった。


 それからは頑なに、考え直して欲しいと懇願されてばかりで、なかなかサインをしてくれないそうだ。


 あんなにもアルチェを優先していたくせに、往生際の悪いアーノルドに唖然とする私に、お父様は内情は破綻していても、まだ私には婚約者がいるのだから、それは胸に留めておけと言われた。


 そんな昨夜の話を授業中に思い出しては考える。


 そんな危惧など全く無意味だった。


 自惚れの過ぎた私は、その事が恥ずかしくて、こんな事なら知らなければ良かったと、自分の事は棚に上げて、お父様と恩人のはずのカイル殿下にお門違いの怒りを向けていた。





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