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「旦那様、よろしいでしょうか?」
3人で話していると、壁の方へ控えていた家令が、片手を胸元付近に上げて、お父様に発言の許しを求めた。あまりそのようなことのない家令に、私は珍しいなとそちらを見つめた。
「何だ?」
お父様がそれに応えると、家令はユリアに向けて頷いたので、私はその事に驚いた。発言したかったのはユリアだったらしい。
「発言をお許し頂きありがとうございます」
「どうしたの?」
ユリアがお父様にお礼を述べると、ユリアにお母様が聞いた。
私もユリアが何を言いたいのか、耳を傾ける。
「先程お話していた事で、実は侍女待機室で耳にしたお話をするべきと思いましたので、手を上げさせて頂きました」
「聞こうか」
お父様がユリアの言葉に食い気味で居住まいを正した。
「お嬢様の今回のお話しと、隣国の第二王子殿下のお話を、結びつけて居なかったものですからお話しするのが遅くなって申し訳ありません。実は殿下がこの国に来られてから、婚約者探しをされているという話は、侍女達の間では有名な話でした。侯爵家以上の家には事前に通達されていたようです」
「まぁ!そんな事を待機室で話すなんて迂闊な」
「はい、まぁその侍女は普段あまり相手にはされていないので、その話をしたとき、皆が食いついたものですから、ここぞとばかりにべらべらと。その方の家のご令嬢が、候補になったかは事実かどうかは知りませんが、ご自慢だったようです」
ユリアの言葉で、その侍女は前に彼女が言っていたアホな侍女の部類だと私は気付いたのだけど、ユリアがけちょんけちょんに貶していて、ちょっと想像してしまった私は、笑わないようにするのに腕を抓みながら必死に耐えた。
「それで?」
「はい、その時に彼女が言っていたのですが、殿下の側近候補の方の婚約者も同時に探しているとの事でした」
「なるほどな」
お父様が、ユリアの話を聞いて、なるほどなるほどと頷いている。
私は、なるほどが何かはわからなかったけれど、側近候補の方もこの国で婚約者を探そうとしているのだと聞いて、胸がドキリとした。
─エルマール様が婚約者を探している
殿下の側近候補の方で、一緒に留学してきたのは二人。私より一つ年上の殿下と、同じ学年のケビン様と私の隣の席のエルマール様。
私はお父様が何かを仰っていたらしいけれど、それは耳に入らず、明日からどんな顔をしてエルマール様とご挨拶しようかなどと、なんにも関係もないし、何かを示唆されたわけでもないのに、勝手に浮かれて胸を高鳴らせていた。




