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焦ったようなお父様に、私は呆れた目を向けた。だって本当に呆れたのだもの。
「私は、今日助けて頂くまで、カイル殿下とはお話もした事ありませんわ。何なら失礼極まりないですが、お礼も言いそびれてしまってます」
「そ、そうか。そうなのか?じゃあ違うのか?」
お父様の口ごもる姿を見て、いつものお父様じゃないようで私は不審に思った。
何かがあるの?
「いや、昨日からあの件で動こうと思ったのだが、どうやら我が家の前に色々と探ってる人がいてだな。それがどうやら隣国の者の様で。おかしいと思い、それも序でに探ろうとしていたんだ。そうしたら⋯」
「今日ね、私も動くつもりでお茶会に行ってきて聞いたのよ」
お父様の話を、引き継ぐようにお母様が話し始めた。
お母様は一体何を聞いたのかしら?
「そもそもがね、おかしいと感じていたのよ」
そう切り出して、お茶会での話をお母様が教えてくれた。
お母様の話は、私からアーノルドとアルチェの件を聞いてから、違和感を持った所から始まった。
「あのね、レニファを疑うなんて微塵も思っていないのだけど、貴方があの馬鹿に蔑ろにされていたなら、それこそお茶会などで誰かが私に言ってきたと思うの。それ位は私にも人脈はあるはずなのよ。それなのに、誰からも何も聞いていないし、そんな事があれば嫌味な人などは言ってくるものでしょう?それもなくてね。だから何故私が知らなかったのか、それも含めて聞こうと思って、お茶会に急遽参加することにしたの」
私の母は、昔は叔母のせいで色々とあったけど、今はそれなりに社交を熟せている伯爵夫人だ。友人も沢山ではないけれど居ると自負していた。それなのに私の件を誰も教えてくれなかったのは何故なのだろうと不思議に思ったらしい。母の友人の子供が、弟と同じくらいの令息達ばかりという事が、関係しているのか?それとも他に理由があるのか、そんな事を考えて参加したお茶会で、皆に心配されて驚いたと言う。
「私が席に着いたら、皆さんがあなたの事を気の毒だと私に伝えに来たのよ。吃驚したわ」
それで判明したのは、どうやら私が学園で噂されたりしていたことや、アルチェのことなど、親世代は誰も知らなかったという。
そして、あの1日目の休みの時(カフェ事件の日)に、貴族家でアルチェの行いが、各家庭の団欒の話題に登ったのだとか。出処は王宮の文官、武官の方たちからだったそうだ。
それからたったの1日で、あっという間に広まったという。
「皆さんに謝罪されたわ。私が胸に秘めて誰にも相談できなかったのではないかと、気の毒がられてしまって。居たたまれなかったから、私も一昨日貴方に初めて聞いたと白状したの。その時にね、どうやらこの件は、オードン王国のカイル殿下が絡んでるらしいって聞いて、その話をトニーにしている時に、丁度貴方が帰ってきたのよ」
母の話で、今日の学園のヒソヒソがいつもと違う理由も、アルチェの退学の事など、私の疑問がすべて払拭していった。
あっ、でも一つだけ分からない事がある。
「どうしてカイル殿下は、動かれたのでしょう?隣国には全く関係ないと思うのですけど。でもありがたいですね、アルチェに絡まれていたのは私だけじゃなかったみたいですし、少なくとも殿下のおかげで私も含めて3人の令嬢が助かったのですものね」
「あらっ、カイル殿下の動機は皆さん教えてくださったわよ」
「えっ何だったのですか?」
「カイル殿下の留学の目的が花嫁探しなのですって。その候補が何人かいるらしくて、貴方も入っているんじゃないかって、皆さん仰ってたわ」
まさか⋯。
寝言は寝て言えですわ、お母様。
いえ、クルーズ伯爵夫妻!




