11
馬車の中では、ユリアが私の足に負担がかからないようにと、床にクッションを置き、その上に靴を脱いだままの足を置いてくれた。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
いつもクールなユリアも、脹脛から足首までをしっかりと巻かれた包帯を見て、流石に眉尻を下げ心配してくれる。
「少しね、痛いわ」
弱音を吐く私の顔を見て、ユリアはボソリと呟きました。
「相手は、令嬢の侍女だったそうです」
その呟きが唐突で直ぐには理解できなくて、首を傾げた私。そんな私にユリアは昼休憩の事だと告げる。
「あぁあの時ね、にしてもよくわかったわね」
「本人が言いました」
「えっ?アルチェの侍女とも仲が良いの?」
まさかユリアが、アルチェの侍女とも交流があったとは思わなかった。
「一人だけですね、他の者は令嬢に忖度していますので、あまり話さないようにはしていますが。一人は真面な侍女です。彼女は侯爵家から仕わされているようですから」
淡々と話すユリアだったが、声音は少し厳しく感じた。何かを話したい、と言ってる気がした。「あ、うん」の呼吸が出来ない私達だったけど、今は彼女の言いたいことが私にはわかった。これって成長?
「それで、詳しい事は分かったのかしら?」
昼休憩の東屋の近く。
アルチェは相手に、文句とも詰問とも言える様な話し方をしていたけれど、目の前の人物に言っているようには思えなかった。それに話す内容がいつの事かなどの詳細は、私には分からなかったのだ。わかったのは、アルチェが横槍を入れていた婚約が、私のだけではないようだという事、それを学園側に指摘され、自主退学か編入を求められた事。編入の際はありのままを編入の書類に記載することを言われた事。
その3つだった。
「どうやら、狙っていた令息は3名だったようです。お相手は皆様伯爵家。侯爵家以上は、家から警戒するようにとか言われていたのではないでしょうか?相手にしてもらえてなかったようです」
ユリアの言葉に私は呆れてしまった。
アルチェの見境ない男漁り。
学園で親しい人がいない私は、噂は自分に関してだけは分かったけれど、他の事は知らなかった。
普通、噂って本人が一番最後に聞くはずなのにね。どれだけヒソヒソされていたのか、侮られていたのか。
「それで?」
続きを促す私に、ユリアは水を得た魚のように話し始めた。ユリアは一見すると、クールで真面目な堅物と思われる。だがその実態は、私の前だけだが、噂が大好きでお喋り好きな女性なのだ。
そして彼女の話を纏めると、私がアルチェに渾名を付けられたように、他の方にも同じことをしていた。私に対しては、酷いだの睨まないでだの呪いがなど、周りを扇動して言うだけだったが、他の方には怪我をさせられたなどの冤罪も着せていたようだ。
それが証拠付きで、学園長に直接送られてきたらしい。
「えっ?それっていつの話なの?」
「学園長に送られたのは、どうやら少し前だったようですね」
「じゃあ、カフェで二人に会ったときは⋯」
「もう、あのご令嬢は詰んでいたのでは?」
私の両親が何かをする前に、アルチェの処遇は決まっていたようだ。
私は何だか気が抜けてしまった。




