06
メテルは朝に弱い
起きている間はほぼずっと魔法の構築について考えているせいか、起き抜けは全く頭が働かないのだ
ぼんやりとする頭で彼女はベッドから這い出る
床に足をつけて立ち上がろうとし、べしゃりと床に座り込んだ
何故足に力が入らないのか考えてから、昨日の夜何があったのか頭を巡らせた
酒が美味しかったので飲み過ぎた気がする
頭がズキズキと痛むのは間違いなくそのせいだ
酒には強いほうだがついつい美味しくて飲み過ぎた、あとは恐らく身体との相性も良くなかったのだろう
それにしても床に触れている脚が冷えると思えば最低限しか衣服を身に着けていない
いつもならばちゃんと寝衣のワンピースを着ているのに、と考えてから彼女はピシリと固まった
それからぎこちない動作でベッドを振り向く
「やらかした……っ!!!!」
人生初の酒による大失敗だ、と彼女は唇を噛み締める
飲んでも飲まれるべきではないのは重々承知のはずだったのに
彼女の声にベッドの上の人物が唸る
メテルはベッドに顎を乗せ彼の姿を確認した
寝顔すら整っているのも腹が立つ
「うぅ……ん…………?」
彼はうっすらと目を開けた
ここがどこだか分かっていないようだ
メテルは慌てて立ち上がり、床に落ちていたワンピースを拾い身に着けた
それからベッドの側に行き、そこに眠る男を見下す
彼は柔らかく笑ってメテルを見上げた
「おはよう」
「最初からこうするのが目的だったってことかい」
「まさか……身体目的なら最初の夜に手を出してる、君をもっと知りたくなって……」
そんなこと言ってちゃっかり避妊具を持ち歩いている男だ、相当遊んでいるのだろう
彼は心外だ、という声色をしているがメテルからすれば一層嘘臭い
「……それに、家に招き入れたのは君だろ?」
「はぁ……一応聞くけど、アタシと付き合うつもりってこと?」
そうは言っても、昨晩のこの男のメテルに対する態度は好意があるともとれるものだった
メテルが問うと、彼はニッコリと笑う
「それは君の好きなように捉えると良い」
なるほど、都合の良い女が欲しかったというわけだ
メテルは頭を抱えた
しかしまぁ、悪くは無いかもしれない
自分が誰かと付き合って、結婚して、子どもを産んで、なんていう普通の幸せは掴みとれそうにない
どうせ一人で生きていくのだと決めているのだから、顔の良い男と遊べるならこっちとしても不都合は無いのだろう
孤独に苛まれた時に魔法の創造に没頭する以外で気分転換ができるかもしれないなら、メテルにとっても都合が良い
遊び相手上等、こっちも利用するだけしてやる、と彼女はその瞬間決意した




