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過労死OL、魔性のメロンに転生したので絶対働きません〜無口な狼執事が私の光合成生活を守りすぎます〜   作者: 月神世一


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7/11

EP 7

勃発! 第一回・誰が一番上質な肥料(お世話)を与えられるか選手権。〜私はどっちも美味しいから大歓迎よ〜

「すぅ……ぽか、ぽか……」

翌朝。

私、蒼井雫(完熟手前のメロロン)は、今日も最高の目覚めを迎えていた。

ふかふかの土、適度な湿度、そして顔を撫でる心地よい朝の風。

前世で満員電車に押し込まれていた時間帯に、私は悠々と光合成の準備運動(葉っぱを伸ばすだけ)をしていた。

「おはようございます、我がマスター

カツッ、とスマートな足音とともに現れたのは、私の専属お世話係(自称)である人狼執事のリバロンさんだった。

「本日の目覚めの一杯は、ポポロ村の地下水脈から汲み上げた天然水に、最高級のハニーかぼちゃの蜜を数滴垂らしたものです。もちろん、温度は貴女様の根に最も優しい38.5度に設定しております」

「わぁ……リバロン、ありがとう……♡」

さすが有能執事。前世なら一流ホテルのルームサービス並みの気配りだ。

私がちんまりとした口を開け、お水をいただこうとした、その時。

「――待て。そのような貧相な水を、彼女に飲ませるつもりか?」

甘く、スモーキーな葉巻の香りと共に、もう一人の男が花壇の前に姿を現した。

漆黒のコートを翻し、自信に満ちた(けれど目元には少し疲労の色が残る)顔立ち。

昨日、私の適当な相槌で完全に情緒を破壊されたアバロン魔皇国のエリート貴公子、ルーベンスさんだ。

「……おや。アバロン魔皇国の穏健派トップ、ルーベンス卿ではありませんか」

リバロンさんが、メガネの奥の瞳をスッと細める。

その瞬間、人狼族特有のピリッとした『殺気』が周囲の空気を凍らせた。

「休日の競馬帰りの魔族が、我が主の神聖な花壇に何の用でしょう。ここは貴方のような俗物が足を踏み入れていい場所ではありませんよ」

「ふっ、ただの執事が吠えるな。彼女は私の孤独な魂を救ってくれた、唯一の理解者(聖女)だ。……これを見ろ」

ルーベンスさんは、懐からクリスタルガラスでできた美しい小瓶を取り出した。

中には、星空のようにキラキラと輝く液体が詰まっている。

「アバロン城の地下宝物庫から持ち出した『超高純度・魔力濃縮液(※国家予算半年分)』だ。これを飲めば、彼女は世界で最も美しく、快適に光合成ができるはずだ」

(えっ!? 国家予算半年分!? この人、横領してきたの!?)

ドン引きする私をよそに、ルーベンスさんは得意げに小瓶を揺らす。

しかし、リバロンさんは鼻で笑った。

「愚かな。高価なら良いというものではありません。我が主のデリケートな体調(土壌湿度や日照条件)を一切考慮しない、ただの自己満足。……やはり、貴方には彼女をお世話する資格はない」

「なんだと? 貴様こそ、その程度の水で彼女の美しさを引き出せるとでも思っているのか?」

ゴゴゴゴゴ……ッ!!

私の頭上で、凄まじい火花が散り始めた。

冷徹な人狼執事の闘気と、エリート魔皇族の魔力がぶつかり合い、周囲の空間がビリビリと歪む。

前世で言うなら、トップ営業マン同士が「どちらが大型案件(私)を取るか」でバチバチにやり合っているような状態だ。

(あー……ヤバい。これ、私のお世話のせいでお互い殺し合うパターン?)

普通なら「私のために争わないで!」とヒロインが涙ながらに止める場面だろう。

だが、私は元・社畜OL。そして今は、究極の怠惰を求めるただの魔植物である。

(争いは良くないわ。……というか、どっちのお水も美味しそうだから、両方飲みたい)

私は短い根っこをふんす!と踏ん張り、二人の殺気の中心に向かって、とびきり甘い声を放った。

「おにいちゃんたち……けんか、めっ、だよ……?」

「「ッ!?」」

「のど……かーわいーたの……。ふたりとも……おみず、ちょうだい……?」

ふわぁん……♡

ベビーメロロン特有の『チャームの香り』が、二人の鼻腔をくすぐる。

その瞬間、バチバチに膨れ上がっていた殺気と魔力が、風船が割れたようにシュンッ! と消え去った。

「おっ、お待たせいたしました我が主! さあ、どうぞ!」

「すまない、待たせたな! さあ、私のも味わってくれ!」

二人は我先にと私に駆け寄り、右からリバロンさんが特製ハニーウォーターを、左からルーベンスさんが国家予算レベルの魔力液を差し出してきた。

(うんうん、素直でよろしい)

私はちゅぅ〜っ、と交互に二つのお水を吸い上げた。

リバロンさんのお水は、温度が完璧でじんわりと五臓六腑(?)に染み渡る優しさ。

ルーベンスさんの魔力液は、飲んだ瞬間に体がカァァッと熱くなり、エナジードリンクの100倍の活力が湧いてくる極上のコク。

「ぷはぁ〜っ……♡ どっちも……おいちい……♡」

私が幸せいっぱいに体をぽよんと揺らすと、二人はハッと息を呑んだ。

「リバロンのおみず……やさしい。ルーベンスのおみず……げんきでる」

私は二人の手(の前足)を短い根っこでポンポンと叩き、前世の営業スマイルを全開にした。

「ふたりとも……しずくのために、ありがとう……♡ えらい、えらいね……♡」

「「…………ッッッッ!!(致命傷)」」

二人の高スペック男は、同時に胸を強く押さえ、膝から崩れ落ちた。

「ああ……なんという慈悲。私の至らなさを咎めるどころか、この愚かな魔族の男の施しさえも平等に受け入れるなど……!」(リバロン)

「くっ……! 自分の持ち込んだものだけでなく、相手の長所すらも認めて褒め称える……やはり彼女は、私の魂の救済者だ……!」(ルーベンス)

(……なんか二人とも、ものすごく飛躍した勘違いをしてる気がするけど、まあいっか)

二人は立ち上がると、互いに鋭い視線を交わした。

だが、そこに先ほどまでの『殺気』はない。あるのは、健全かつ熱烈な『ライバル心』だった。

「ルーベンス卿。今回ばかりは引き分けとしておきましょう。……ですが、我が主を最も完璧に甘やかせるのは、この私だということをいずれ証明してみせます」

「ふっ、吠えるな執事。私の財力と権力をすべて注ぎ込み、彼女に極上の光合成ライフを捧げてみせる。……覚悟しておくんだな」

二人の間で『第一回・ヒロインお世話係チキンレース(冷戦)』のゴングが高らかに鳴り響いた。

「ふぁぁ……なんかお腹いっぱいになったら、ねむく、なってきた……」

私が欠伸をすると、二人は「「おやすみなさいませ(おやすみ)」」と極上の甘い声で囁き、太陽の光が遮られないよう、完璧な位置に日除けのパラソルをセットしてくれた。

(ふふっ。有能な男たちが競い合ってご奉仕してくれる生活……やっぱり、ここが天国ね)

私は二人のエリートが私に熱い視線を注いでいることなど気にせず、幸せな二度寝の世界へと旅立っていった。

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