第89話 ロイドの告げる真実――波長異常の理由
翌朝。
タケルはほとんど眠れなかった。
目を閉じるたび、
ロイドのあの言葉が胸に重く沈む。
――“覚悟が必要になります”
布団の中で、小さく息を吐く。
「……ルー、大丈夫か……?」
モンマスを開くと、
ルーのアイコンは相変わらず“波の歪み”を示していた。
《波長:不安定(中+)》
タケルはそっと画面を閉じ、外へ出る。
すぐにサクラとアキラが姿を見せた。
顔を見るだけで、二人もよく眠れなかったことがわかる。
三人は、約束もしていないのに自然と早い時間に集まっていた。
サクラは小さく息を吐く。
「……緊張してるのは私たち全員だね」
アキラが肩をすくめる。
「昨日のロイドさん、いつもと空気ちげーしな」
タケルは胸の奥を押さえ、ゆっくりとうなずいた。
「……行こう。ロイドのおっちゃんのところへ」
✦✦✦
販売所の扉を押し開けた瞬間――
バッ!!
昨日とまったく同じ勢いで、ロイドが飛び出してきた。
「おやおやおやぁ〜!?
また来ましたね、ワンダフルな三人組!!」
販売所の奥。
ロイドに案内され、タケルたちは小さな応接室に通された。
普段の柔らかな笑みは消え、ロイドは研究者の表情をしていた。
「……伝説種に近いミラモンは、波長がズレやすいんですよ」
タケルは息をのむ。
「特に、フェンリル系統のような“月属性混合”の子は――
生まれつき波が不安定なことが多いんです」
「やっぱり……ルーって普通じゃないんだな……」
「悪い意味じゃありません」
ロイドはやさしく微笑む。
「“特別な器”を持つミラモンの宿命みたいなものです」
✦
ロイドは少し声を潜めた。
「……そういえば、ひとつ“噂”がありましてね」
三人の視線が集まる。
「この街からずっと南へ――
《南都セレノフラート》という港と交易で栄えた大都市があります。
さらにその先。
エルリア南部の渓谷を越えた奥地に──」
ロイドは言葉を区切った。
「“波層洞”と呼ばれる古代遺構があるそうです」
「波……層?」
アキラが眉をひそめる。
「不安定な波長が“ぴたり”と合う。
そんな現象がそこでは起こるらしいのです」
タケル(心の声)
「……ルーの波が合う場所……?」
タケルが勢いよく身を乗り出した。
「本当に!?」
「やったじゃんタケル!」
サクラがぱあっと顔を明るくする。
ロイドはしかし、肩をすくめた。
「……ただし」
嫌な予感とともに、タケルの背筋が伸びる。
「そこまで行くのに、通常は一年以上。
ベテラン冒険者でも半年。新人なら……まず無理です」
「一年……!?」
タケルの肩がガクンと落ちた。
✦
沈黙を破るように、サクラが声を上げる。
「な、なんとかならないの……?」
アキラも眉を寄せ、前に身を乗り出した。
「最短ルートとかは? なんかあるだろ?」
ロイドは苦い笑みを浮かべ、一本の指を立てる。
「……“ないこともない”のですが」
三人が一斉に前のめりになった。
「――大都市同士をつなぐ“転移門”があります。
正式名称は 《ゲートリンク》 といいます」
「ゲート……リンク?」
タケルが聞き返す。
「ミラリア大地は広大ですからね。
中央都市や主要都市には《ゲートタワー》と呼ばれる
特別な転移施設が設置されているのです」
ロイドは表情を引き締めた。
「ただし――」
「使えるのは、上級貴族・学院政府関係者・ギルド幹部など。
“限られた身分の者だけ” です」
「……つまり、俺たちには無理かもってことか」
タケルの声が沈む。
「人脈があれば別ですがね」
✦
その瞬間――
「――待って!」
サクラが勢いよく手を上げた。
アキラ「どうした?」
サクラ「私……つて、あるかもしれない!」
胸に手を当てながら続ける。
「あのね、個性入試で知り合ったんだよ。
金髪で……すごく貴族っぽい雰囲気の男の子」
「たしか名前は――
ルイ=フォン=レーヴェルト君」
その名が出た瞬間、
ロイドは本気で箸を落としそうになった。
目がこれでもかというほど見開かれる。
「ルイ……レーヴェルト……!?」
「それは……ビューティーフルですよ……!!」
サクラがぽかんとする。
「え、びゅー……?」
ロイドは身を乗り出し、言葉を重ねた。
「サクラさん……その子は……
ミラリア五大貴族《レーヴェルト家》の御子息です!」
アキラが椅子ごと跳ねる。
「マジかよ……!」
タケルも思わずサクラを見る。
「そんな大物と……サクラ、知り合ってたの?」
サクラは両手をぶんぶん振った。
「い、いやいやっ!ほんとにただ話しただけだってば!」
ロイドは深くうなずき、
“とんでもない希望が見えた”という顔をした。
「しかし“お願い”すれば、ゲートリンクは確実に使えます。
試す価値は十分にありますよ」
タケルは拳を握った。
「……よし。明日、ルイに会ってみよう!」
ロイドは静かに息をつく。
「タケルくん……覚悟しておいてください。
レーヴェルト家は、“ただの貴族じゃありません”。」
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
ルーの異変の理由が、少しずつ見えてきました。
この先、タケルたちがどう動いていくのか、見届けてもらえたら嬉しいです。
そして今日で、『モンマス』でなろうデビューしてから半年になりました。
日々読みに来てくださる皆さま、本当にありがとうございます。
皆さまの応援が、書き続ける力になっています。
ルーを助けたい、
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「わふっ!」




