表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
89/99

第88話 波長の揺らぎ――導かれた先の名前

 タケルの家に戻った頃には、夕暮れがすっかり夜へと溶けていた。

 玄関を開けると――ふわりと優しい匂いが迎えてくれる。


「いらっしゃい。三人とも、面談お疲れさま!」


 笑顔で出迎えるタケルの母。

 奥から「おー、みんなよく来たな!」と父の声。

 その隣で妹のサトがぴょこっと顔を出す。


「にぃに! アキラくん! サクラねえちゃん!」


 サトは跳ねるように駆け寄り、三人をぎゅっと抱きしめた。


「ははっ……サト、押すな押すな!」


にぎやかになったな……」とタケルの父がテーブルへ案内する。


 食卓には湯気の立つ料理がずらりと並んでいた。

 唐揚げ、煮物、サラダ、味噌汁……どれも家庭の温かさがあふれている。



「みんな、試験本当にお疲れさま。

 結果がどうであれ、よく頑張った。父さんはそれだけで誇らしいぞ」


「何言ってるの。あれだけ毎日頑張ってるんだから、きっと大丈夫よ」

 母が優しく笑う。


「サクラちゃん、この煮込みどう? 子供たちに人気でね」


「すごい……本当においしいです。

 うちは両親忙しくて、いつも一人で食べてるから……こういうの、嬉しいです」


「まあ……サクラちゃん、いい子だわぁ。タケルのお嫁さんに欲しいぐらい!」


「か、母ちゃんっ!?」


「タケル、結婚する?」

 サクラがわざと真顔で言う。


「えっ……あ、いやっ、その……!」


 みんなが吹き出し、笑いの波が広がった。



 食事が落ち着いた頃、父がふと尋ねた。


「ところで、肝心の合格発表はいつなんだ?」


アキラが端末を確認する。

「今日中に、発表の日程が通知で届くみたいです」


「そうか……ドキドキだな」


 その時だった。


 ピコン――!


タケルのモンマスが震え、画面が光る。


《本日の学長面談の合格発表は、

 1か月後、中央アリーナにて行います。

 開始時刻:10時》


「1か月後かぁ……」

 タケルは天井を見上げ、長く息をついた。


「長いな……気が休まらない一ヶ月になりそうだ」

 アキラが苦笑する。


「でも、その間にできることもあるよね」

 サクラがタケルの肩に手を置く。



 夕食後、三人はタケルの部屋に集まった。


「合格発表まで1か月……どうする?」

 アキラがベッドに腰かけながら言う。


 タケルはモンマスを開いた。

 ルーのアイコンが、また“歪んだ波”を示していた。


《波長:不安定(中) →(中+)》


「……また悪くなってる」


サクラも覗き込み、眉を寄せた。

「ルー……こんな状態でずっとはかわいそうだわ」


アキラ「何とか手を打たないとな」


タケルは唇を噛む。


「……みんな、俺……ルーを助けたい。

 このままじゃ、合格発表どころじゃない。

 どうしたら……ルーの波長を安定させてあげられるんだろう」


胸の奥がきゅっと縮む。

 焦れば焦るほど、答えが遠ざかっていく気がした。


アキラがそっと言う。

「タケル、一人で抱え込むなって。三人で考えようぜ」


サクラも静かに頷く。

「うん。絶対、何か方法があるよ」


「……方法……」


 タケルは視線を落とし、握った手に力を込める。

 思考が空回りして、胸が苦しかった。


「……分からない。どうしたらいいんだ……?」


 その弱い呟きに、アキラが腕を組んで考える仕草を見せた。


「……ルーを買った店。

 つまり、ロイドさんのところで聞いてみるのはどうだ?」


 タケルは顔を上げた。


「ロイドの……おっちゃん」


 サクラの目がぱっと輝く。


「それだ! ロイドさんなら、何か知ってるかもしれない!」


「よし、決まりだな。明日にでも行ってみよう」


 その瞬間、タケルの表情にふっと光が差した。


「……うん! 行こう。ルーのために」



店の扉を開けた瞬間――


バッ!!

と、まるで待ち構えていたかのようにロイドが飛び出してきた。


「おやおやおやぁ〜!?

 また来ましたね、ワンダフルな三人組!!」


 ロイドは腕を大きく広げ、まるで舞台俳優のように一礼した。


「タケルくん! お嬢ちゃん! そしてアキラくん!

 いやぁ〜今日も波長がキラキラしてますよ!

 商売人冥利に尽きるとはこのことです!!」


 タケルは思わず苦笑した。


「ロイドのおっちゃん……相変わらずテンション高いな」


「もちろんですとも! ミラリアに陰気は似合いませんからね!!

 で?今日はどんな素敵なご用件で!?」


 ロイドの目がきらりと光る。


 タケルは思わず前に出る。


「ロイドのおっちゃん、相談があるんだ!」


「ほう……相談、ですか。タケルくんがそんな顔をして来るのは珍しい。」


 さっきまでの大げさな笑みがすっと消え、

ロイドは三人の表情とモンマスを交互に見つめた。


「……なるほど。ルーくんの波長が不安定、ですか」


 ロイドは声を落とし、静かにモンマスへ手を伸ばす。


 覗き込んだ瞬間、表情がわずかに引き締まった。


「……ふむ。やはり、そうきましたか」


「な、何か知ってるの!?」

タケルがぐっと身を乗り出す。


ロイドは軽く片手を上げ、三人を静止した。

先ほどまでのハイテンションとは対照的に、声が低く落ちる。


「ええ。“普通”のミラモンとは違う反応ですね。さて……どこから話しましょうか」


 言葉の続きを――ロイドは口にしなかった。


店内に、ひやりとした空気が落ちる。


「ロイドのおっちゃん……?」

タケルが不安げに呼ぶ。


ロイドは三人の顔を順に見つめ、ゆっくりと目を細めた。


「……タケルくん。

 本気でルーくんを救いたいのなら――

 あなたたちにも“覚悟”が必要になります」


アキラが眉をひそめる。

「覚悟って……どういう意味だよ」


「簡単に済む話ではありません」

ロイドは静かに言った。


「情報を扱うには、こちらにも準備が必要なんです。

 あなたたちが聞いていい話なのかどうか……その確認も」


サクラが息を呑む。

「そんなに……深刻なことなの?」


ロイドは微笑み、しかしその笑みに“重さ”が混ざっていた。


「三人とも、今日はひとまず帰りなさい。

 頭を冷やして――明日、もう一度来てください」


「ロイドのおっちゃん……」

タケルの声は少し震えた。


ロイドは静かに頷くだけだった。


「大切な相棒のためでしょう?

 なら、急がずに。

 急ぐべき時は――こちらから呼びますよ」


三人の胸に、不安とも期待ともつかぬ熱が広がる。


――つづく。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!


ルーのこれから、気になりますよね。

タケルとルーのこれからを応援したいと少しでも思っていただけたら、

いいね、ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


「くぅん……わふっ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ