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第86話 学長面談の前夜――それぞれの決意

 タケルの胸の奥には、まだ微かな震えが残っていた。

 それでも――三人で面談へ進める。それだけで心が温かくなる。


「タケル、ほんとよかったね!」

「よし、ここからが勝負だ!」


 アキラは拳を突き上げ、サクラは目を潤ませて笑った。


 タケルも笑い返しながら思う。


(……三人で進める。

 その事実だけで、こんなに心って強くなるんだな)


 夜はそのまま、静かに更けていった。



 翌朝。

 三人の端末に、同時に資料が届いた。


《学長面談は推薦入試の最終審査です》

《合格者は全受験者の約4%》

《学長の“洞察”によって総合的に判断されます》


「よ、よんパーセント……!?」

 タケルの声が裏返った。


「つまり落ちるほうが普通ってことだな」


 アキラが腕を組む。


「でも落とせない理由を作ればいいんだよ」


 サクラが軽く微笑む。


(頼もしい……サクラもアキラも……)


 三人の覚悟は、昨日よりずっと強くなっていた。



 面談控室には、受験生たちの不安げな声が漂っていた。


「去年、“波長測定”の追加試験があったらしいぞ」

「いや、圧迫質問で泣かされたって聞いた」

「学長が“目の奥”を見るらしい」

「人によって内容が違うらしいぞ」


(……“目の奥を見る”?

 なんだよ、それ……怖すぎだろ……!)


 タケルの喉が、少しだけ乾いた。



 控室の隅で、タケルはそっとモンマスを開いた。


《波長:不安定(小) → (中)》

 点滅している。


「……また上がってるのか?」


「ルー、大丈夫……?」

 サクラも覗き込む。


「昨日より……アイコンの顔色悪い気がするぞ」

 アキラが眉をひそめる。


「……ルー。無理するなよ」


 画面の奥で、弱く“くぅん”と鳴いた気がした。


(このままじゃ……戦えないどころか、

 面談にだって影響が出るかもしれない)


 胸がざわつく。それでも――逃げる選択肢はない。



 アキラがタケルの肩を軽く叩いた。


「タケル。もし途中で折れそうになったら……

 俺のこと思い出せ。

 あの日、お前に助けられた時の気迫。あれで全部勝てる」


「アキラ……」


 サクラもそっと言葉を添える。


「タケル。ひとりで頑張らなくていいよ。

 試験も冒険も、これからも……全部一緒にいくから」


 その声は優しくて、強くて――胸に沁みた。


(……二人がいる。

 それだけで波が、少し落ち着く気がする)


 タケルは静かに息を整えた。



 一方その頃。

 グランディア中央学院の最上階では、窓から差し込む白い光に、女性の銀髪が揺れた。


 現学長――イリス・グランディア。


「……あの子たち、どんな“目”をしてくるのかしら」


 副官が資料を持って尋ねる。


「学長、質問内容はいかがいたしますか?

 昨年同様、“意思・波長・適正”の三指標で?」


「ええ、形式は同じで構わないわ」


 イリスは微笑を浮かべ、だが瞳の奥は静かに光る。


「ただし――この三人には、“彼女”のような目をしてほしいの」


 副官が息をのむ。


「前学長……セレナ様のことですか?」


「ふふ……秘密よ」


 イリスは窓へ視線を移した。


(あの人は……未来を“見通す目”を持っていた)


(さて、三人は――

 どんな波を、どんな光を、見せてくれるのかしら)


 彼女の青い瞳が、淡く光を宿す。



 面談室の前。

 タケル、アキラ、サクラは静かに順番を待って座っていた。

 

 沈黙の中、鼓動だけが響く。


 ぴ、と音が鳴る。


《大和タケル様。入室してください》


「……行ってくる」


タケルが立ち上がると、

モンマスの光がふ、と揺れた。


胸の奥に、

“ワフ……”と小さな波が触れた気がする。


(ルー……見ててくれ)


「大丈夫だタケル。胸張っていけ!」

「タケルなら絶対に大丈夫だよ!」


 二人の声が背中を押す。


(俺は――

 ここまで一緒に来た仲間のためにも……

 絶対に負けられない)


 扉が、ゆっくりと開いた。


――次回、学長面談。


つづく


ここまで読んでくださってありがとうございます。

三人それぞれの決意がそろい、いよいよ最終審査へ向かいます。


ここまで読んで「続きが気になる」「三人を応援したい」と思っていただけたら、ブックマークや評価をいただけるととても励みになります。

次回、学長面談が始まります。

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