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第84話 知識の挑戦――学科試験、開幕

 大講堂に足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。


 さっきまでのアリーナとはまるで別世界だ。

 広い空間に並ぶ長机。

 緊張でカチカチに固まった受験生たち。

 監督教師たちが、ゆっくりと視線だけを動かして全体を見回している。


 試験前の独特の“重い静けさ”。


(……うわ。

 これ、完全に“学校の試験”じゃん……)


 タケルは机の上にモンマスを置き、そっと深呼吸した。


「タケル、落ち着いていこう」


 隣の席に座ったユウマが、小声で言う。


「さっき教えたところは全部出る。

 慌てなければ大丈夫」


「……あい!」


 声が上擦った。

 深呼吸をもう一回――いや二回した。



 壇上の監督官が立ち上がる。


「――静粛に」  


 その一言で、大講堂の空気がピタリと止まる。


「本日の学科試験は、三部構成です」


 黒板横のパネルに、ぱちん、と光が走る。


【知識 試験構成】

①筆記試験

(ミラモン/モンマス基礎・波長理論・適道知識他)


②状況判断テスト

(動画シミュレーションによる行動選択)


③危険察知テスト

(疑似音・揺動反応)


「以上です。

 筆記試験の時間は四十分。

 各自、解答用紙をめくってください」


(……やばい。

 緊張で、頭が真っ白になりそうだ)


 タケルは心の中で叫んだ。



■1:筆記試験 開始


 紙をめくると――


(えっ……文字多っ!!)


 波長理論の専門用語。

 ミラモンの分類表。

 危険地域の地図。


 読んだ瞬間に脳が止まりかけた。


(だめだ……覚えてねぇ……!

 いや、覚えたけど形が思い出せねぇ……!)


 最初の五問、まるで暗号。


 だが。


六問目の設問を見た瞬間、

タケルの目がカッと開いた。


【問6】

洞窟に入る際、最初に行うべき波長確認は?

 ①光波長の明度

 ②空気振動の偏差

 ③地脈波長のゆらぎ

 ④自身の波長の安定


(これは……ユウマとさっき勉強したやつだ!

 洞窟は“地脈の揺れ”が最初だ!!)


 迷わず③に丸をつける。


 その後も、ユウマと確認した場所だけは迷わず書けた。


(よし、いける……!)


 そして次の設問。


【問32】

モンマスのレベル3→4の条件として正しいものは以下のうちどれか。


①所有ミラモンの平均レベルが10になる

②訪れた町や村が7ヶ所以上

③ミラモンを2体仲間にする


(これは絶対③だ!

 ルーが仲間になってレベル4になった時の条件そのまんま!)


 自信を持って書き込む。


 まるで“自分の旅を答えている”ような感覚でペンが進む。


(……俺、思ったより書けてる……!)



■2:状況判断テスト


 筆記が終わると、机の上に小型ホログラムが起動した。


「引き続き、状況判断テストに入ります」


 監督官の声とともに、目の前に映像が浮かぶ。


【動画シミュレーション開始】


 はじまりの町の畑。

 穏やかな風景だ。


「――リーフラットの群れが接近中。

 適切な行動を選択せよ」


(これ……俺、実際にやったやつだぞ!?)


 あの冒険の日。

 モチと一緒に、畑を守った記憶。


(リーフラット相手は、まず群れのリーダーを――)


迷いなく“リーダー識別 → 初手制圧”を選択。


 周りの受験生がバタバタしているのが見える。

 焦ってボタンを押し間違える人もいる中で、タケルだけは落ち着いていた。


(経験が……役に立ってる……!)



■3:危険察知テスト


 講堂が暗転し、わずかな振動が走る。


「それでは、危険察知テストを開始します」


 微かな揺れ――

 音――

 気配の変化――


 受験者の波長を感知する装置が作動する。


“ピッ――!”


 タケルの席のランプが、他の席より明らかに早く光った。


(……え?)


 監督官がタブレットを見て眉を上げる。


「反応速度……受験生の中で上位10%。

 優秀ですね」


「っ……ま、マジで?」


 思わず声が漏れる。


(だから言ったでしょ。タケルは感覚が強いって)


 隣のユウマが微笑むのが見えた気がした。


(……よし!)


 胸の奥で、小さくガッツポーズした。



すると、机上のモンマスが、小さく揺れた


(……ん?)


 タケルが視線を落とすと、机の上のモンマスが

“かすかに”揺れていた。


(ルー……?)


 画面には、まだ点滅している文字。


《波長:不安定》


(……終わったら、絶対にまた様子見よう)


 胸が再び、強く締め付けられる。



■4:試験終了


「――これにて学科試験、全工程終了です」


 監督官の声とともに照明が戻る。


「次の“学長面談”に進める受験生は、

 三日目の22時までにモンマスへ通知が届きます」


「通知がなかった者は、不合格となります」


 講堂が一斉にざわつく。


「頼む……」「受かっててくれ……」


ユウマがタケルの肩を叩いた。


「どうだった?」


「……わからねぇ。

 でも――全力は出した!」


「なら、大丈夫。

 あとは待とう」



――こうしてタケルの“知識の挑戦”は幕を下ろし、

ドキドキの学長面談通知を待つ時間が始まる。


つづく


ここまで読んでくださってありがとうございます。

バトルだけじゃなく、タケルの経験や積み重ねがちゃんと力になっていく回でした。


「タケル、頑張れ」と少しでも思っていただけたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。

この試験の結果が、次の大きな動きにつながっていきます。

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