第64話 それぞれの準備 ― タケルのミラモン探し ―
リヴァイアバーガー店を出たタケル・アキラ・サクラ・クレイン。
中央都市の風は少し冷たく、空を舞うフライキャリーの羽音が響いていた。
ビル群の間を抜ける風は、まるで“新章の始まり”を告げているようだった。
「推薦申請は一週間前までだ。焦らず、でも止まるな」
「同じ学院で君たちと通えることを、楽しみにしてるよ」
クレインはそう言い残し、軽く手を振って去っていった。
その言葉が、三人の背中を確かに押した。
⸻
広がる学院通り。
風に揺れる看板、ミラモン商会、訓練塔、食堂、学舎……。
“文明の中心”のスケールに、三人は胸を高鳴らせながら歩く。
「試験まで一か月。なんか、緊張してきた……」
「焦る必要はない。やるべきことをやるだけだ」
「俺も決めた。――模擬戦型で、派手に勝つ!」
タケルが拳を握ると、サクラがからかう。
「でもさ、タケルのモチってスライムだし、戦闘向きじゃなくない?」
「ぐっ……たしかに。けど、伸びしろは無限だぞ!」
アキラが笑いながら言う。
「ちなみに俺は、ララが仲間になって一足先にモンマスランク4になったぜ」
「マジか! 先こされた!」
タケルは頭を抱える。
「モンマスランクを上げるにも、模擬戦で活躍するにも、新しい仲間が必要だな。
モチの新スキルも覚えるかもしれないし」
「そうだね。試験までにレベル上げるのは必須よ」
「よし、決まりだ。俺はまず、仲間を増やす!」
「当面は近くの草原でレベル上げ、ギルド依頼もこなす。
学力試験の勉強も忘れるなよ」
「オー!」
タケルとサクラが声を合わせた。
⸻
その日の午後。
都市の喧騒を離れ、三人は広大な草原へ。
風がミラモンたちの鳴き声を運び、地面の結晶が陽光にちらちら光っていた。
「よし、仲間になれーっ!」
タケルはモチを飛ばし、次々に野生のミラモンへアタックを仕掛ける。
しかし――。
「またダメか……! モチのレベルは上がるけど、仲間が増えねぇ!」
そのとき、茂みの陰から、小さな**葉っぱ頭のミラモン《ポヨリーフ》**が顔を出した。
ひ弱そうで、目の縁に小さな露を浮かべている。
その目に、ほんの少しだけ“優しさ”が映った。
「お、きた! よし、ここは――」
タケルは深呼吸して、地面に正座。
「お願いしますっ! 仲間になってくださいっ!」
――ピコン。
モンマス画面に、淡い文字が浮かぶ。
《目の前のポヨリーフは笑っています。土下座はやめましょう》
「うるせぇぇぇ!!!」
タケルの叫びが草原に響きわたった。
アキラとサクラは腹を抱えて笑う。
「そんなんじゃダメよ。見てなさい」
サクラはしゃがみ、優しくポヨリーフの葉を撫でた。
ピコン。
《ポヨリーフはサクラに好感を示しています。仲間になりたがっています》
「ほら、こうやるの」
「うそ、すげぇ……!」
「でもね、私のモンマスはもう限度いっぱいなの。
もしよかったら、タケルの仲間にならない?」
「おおっ、その手があったか!」
タケルは急いでモンマスの画面を見た。
しかし――。
《ポヨリーフは首を横に振っています。無理やりはやめましょう》
「そんなぁぁぁ!!」
ポヨリーフはぴょんと跳ね、草の中へ消えていった。
「どんまい、タケル」
「焦るな。まだチャンスはあるさ」
――そのとき、ララの耳のリボンが、かすかに光った。
風に揺れるたび、青白い光が瞬いては消える。
アキラが空を見上げ、少し真剣な声で言う。
「……それより、ララの様子が少しおかしいんだ」
草原の風が止まり、静寂が広がる。
タケルは顔を上げ、ララの方を見る。
「ララが? どういうことだ?」
次の瞬間、誰も知らない“違和感”が、静かに始まっていた。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
この先も読んでみたいと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援いただけると励みになります。




