第63話 リヴァイアバーガーと推薦試験 ― クレインの告げた選択 ―
中央都市グランディアの中心街。
香ばしい匂いが風に混じる。空を見上げれば、配達用のミラモン《フライキャリー》たちが羽のような結晶をきらめかせ、街中を忙しなく行き交っていた。
リヴァイアバーガー店は、昼時で満席だ。
店内は近未来的なカフェスタイル。
テーブルには浮遊モニターが並び、料理は自動搬送ベルトで次々と運ばれていく。
「わあ……お肉みたい!」
サクラが目を輝かせる。
「魚なのに、うまっ……! このジューシーさ反則!」
タケルは一口で感動していた。
「肉よりうまいんじゃね? いや、これもう肉だろ!」
肉厚のフィッシュパティの中で、発光ソースがとろりと光る。
リヴァイアフィッシュを使った中央都市名物。
「これでも学院生御用達だからね。頭脳も胃袋も満たす、グランディア流の栄養学だ」
クレインは涼しい顔でナイフとフォークを使っている。
「胃袋テストなら今すぐ満点だな!」
「そんな試験ねぇよ」アキラが呆れた。
笑い声が落ち着いたあと、クレインは表情を引き締める。
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「さて――推薦組は、筆記と面接を除いて、三つのコースから一つを選ぶ。
どれを選ぶかで、君たちの“未来の評価軸”が変わる」
クレインはタブレットを開き、ホログラムの試験表を映し出した。
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◇ ①依頼クリア型(冒険実務)
「実際の依頼を受けて課題をこなすタイプだ。
行方不明のミラモン捜索、護衛、復旧支援など。
評価されるのは地道な努力と実行力――“現場型”だ」
「つまり、冒険そのものって感じだな! 燃える!」
「でも危険も多そうね」
「成功率は五割。ランクの低い依頼では受からないことも多々ある。
だが最も“信頼される合格者”を生むコースだ」
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◇ ②模擬戦型(実技戦闘)
「訓練塔での模擬戦。観客の前で腕を競う。
戦闘技術・冷静さ・判断力が問われる。学院内では一番人気だ」
「的道バトル推薦の子も多そう。バトルっ子には持ってこいだ」
「へえ……潜在能力が明らかになるな」
「その通り。“花形型”だ。派手さの裏で“冷静な分析”を見られる。
実力がないと目立ちすぎて落ちる。
観客もスポンサーも多く、有力スカウトたちが試験前から“将来の逸材”に目を光らせている」
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◇ ③個性入試(自由課題)
「自分の特性を活かすコースだ。
独自のミラモン育成、発明、演技――なんでもあり。
ただし、失敗すれば印象は最悪。まさに“博打型”だね」
「ちょっと面白そうじゃない?」
「俺、ミラモンでコントとかできるかも」
「……やめておけ」
「奇想天外の実力を持つ天才が、ここから生まれることもある」
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◆ 全員必須:基礎知識型(学力試験)
「推薦生も一般生も全員受ける筆記試験だ。
ミラリアの基礎知識、一般常識、カードの正しい使用法。
点数が低いと、面接前に足切りされることもある」
「うっ……それ苦手かも」
「おいおい、そこが一番大事だぞ」
「落とすための試験じゃない。努力すれば誰でも通る」
「アキラ先生、ご指導お願いします!」
「私も!」
「……仕方ないな。覚悟しておけよ」
アキラの眼鏡がキラリと光った。
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◆ 推薦組必須:学長面接
「最後に、学院長自らが面接を行う。
成績だけでなく、“想い”と“心”が評価基準だ」
「試験満点でも、虚飾が見えれば落とされる。
逆に失敗しても“真心”があれば、合格することもある。
――学長は、“心のミラ”を見る人だ」
静かな間が落ちた。
「……なんか、試験ってより、心を覗かれてるみたいだな」
「その通り。グランディア中央学院は、“学ぶために戦う場所”じゃない。
“戦いの中で心を学ぶ場所”なんだ」
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「クレインさんは、どのコースで受かったんですか?」
「模擬戦型だ。……一度は落ちた」
「えっ?」
「自信があった。だが、慢心して負けたんだ。
“個の強さ”だけで勝てると思っていた」
「……」
「だが――学長面接で拾われた。
“地道に積み重ねる者こそ、真の強者になる”。
そう――学長に、そう言われたんだ」
クレインの瞳には、今もその言葉が刻まれているようだった。
「……かっけぇ」
タケルが小さく呟く。
「ふっ、恥ずかしい過去さ。だが、覚えておいてほしい。
この学院では、“点数”より“心の強さ”が未来を決める」
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「俺は絶対、模擬戦型だ! 派手に勝つ!」
「わたしは……個性入試にしようかな」
「俺は……依頼クリア型だ。地道にやるのが性に合ってる」
「それぞれの選択に、意味がある。
試験は一か月後――その日、君たちの真価が問われる。
推薦科目の選択は、一週間前までに事務局で申請しておくこと。
どのコースを選ぶかで、評価基準も変わるからな。
時間はあるようで、あっという間だ。
準備を怠る者は、夢の門をくぐれない」
外に出ると、風が流れ、グランディアの巨大な塔が光を放つ。
新しい試練の始まりを告げるように。
その光はまだ小さくとも、確かに――未来へと燃え始めていた。
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