第60話 重要な決断 ―ログアウト不可区域 PART12―
「ララちゃんを、誰のミラモンにするかが重要よ」
「重要って……そんなこと?」
タケルが呆れ顔で返す。
「何よ、“そんなこと”って」
サクラがムッとして腕を組んだ。
「別にこのままノラ型でもいいんじゃない? なあ、アキラ」
「うーん……今後も一緒に行動するなら、ノラでは限界あるかもな」
「ほら見なさい! みんな、さては“モンマス公式ブック”読んでないな」
サクラがどや顔で指を立てた。
「公式ルール第37条。
“相手の所有ミラモンは、持ち主の同意・ミラモンの意志・特別な道具なしに契約を塗り替えることはできない”。」
「それがどう、ララと関係あるの?」
タケルが首をかしげる。
サクラは指をチッチッと振って笑った。
「まだ分からないか。黒影盗団のリーダーは、ララがノラだと分かったから“奴隷契約”を結ぼうとしたのよ」
「つまり、どういうこと?」
「もう、まだ分からないの?」
「サクラ先生、分かりやすく教えてください」
「仕方ないなぁ。
要するに――ララをタケルかアキラのミラモンにしてしまえば、勝手に奴隷契約は出来ないってこと。
次に会ったら、ララを“奪う”つもりよ、あのリーダー」
⸻
「……ララの気持ちが大事だな」
アキラが真面目な声で言う。
「ララはどうしたい?」
「うーん、三人の中の誰かのミラモンになれるなら面白そうだし、
サクラの言うことが本当なら、私にもメリットあるわね」
「ってことは……やった! ミラモンが増える!」
タケルが喜ぶ。
「待て、まだお前のじゃない。
あのスピードは“ミラリンピック”を目指す俺にこそ相応しい」
「ミラリンピック!?」
ララの青リボン付きの耳がピンと立つ。
「だったらバトルだ! スピードはバトルでも活かせる! ここは譲れない!」
「私はチヨが仲間になって保有限度MAXだから、今は無理ね」
サクラが両手を上げる。
「よし、ララに決めてもらおう!」
「おう、それでいい」
「だな!」
「ララちゃん、タケルとアキラ――どっちのミラモンになる?」
ララは少し考え込んでから、にこっと笑った。
「うーん……悩むけど、アキラかな」
「よっしゃああ!」
アキラがガッツポーズ。
タケルは肩をがっくり落とす。
「な、なんでアキラなんだよ!?」
「噂で聞いたの。ミラリンピックは“速さ”を競う大会なんでしょ?
私、それに出て本気のスピードを競いたいの!」
「あと……言いにくいんだけど」
「この際、はっきり言おう」
サクラが真顔でうなずく。
「傷ついても、今言うべきよ」
「風の塔で気を失ってから、風の匂いにすごく敏感になったの。
……タケルの足、臭いの。だから、無理かも」
「そ、そんなに!?」
タケルがショックで固まる。
「分かるわー。私も言いにくいって思ってた」
サクラが同情したように言う。
タケルは見るからに元気をなくし、肩を落とした。
「まあ、タケル。そういうことだ」
アキラが笑う。
「今回は諦めろ」
「ごめんね、タケル」
「もう何も言わないでくれ……」
タケルの声が震える。
そのとき、アキラのモンマスが光った。
《目の前のスプリントラビット・ララがあなたの仲間になりたがっています》
《仲間にしますか?》
「もちろん!」
アキラが笑って答える。
「やった、ララよろしくな!」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
ララがぴょんと跳ねた。
「よかったわね」
サクラが微笑む。
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こうして三人とララは、無事に中央都市にたどり着いた。
「よし! ララ加入記念に、モンマス★5の最高級ニンジンシチューを食べに行くぞ!」
アキラが勢いよく叫ぶ。
「わーい! 楽しみ!」
ララが耳を揺らして笑う。
「タケル、どうしたの?」
サクラが覗き込む。
「やることある。一旦、現実に帰るね」
「ご飯は?」
「大丈夫。すぐ戻るから、先に食べてて」
タケルはモンマスを掲げ、呟いた。
「――ミラリア・リターン」
その瞬間、タケルの身体が光に包まれ、消えた。
⸻
現実の世界、タケルの家。
「どうしたの? 何日ぶりに帰ってきたと思ったら、急にお風呂にダッシュして」
母の声が飛ぶ。
「いや、ちょっと……足、洗いたいなって」
「さては、サクラちゃんに“足くさい”とか言われたわね?」
「ち、ちがっ……!」
「やっと気づいたのね。昔から臭かったもんね」
妹のサトが現れる。
「にいにぃ、クチャイ足洗ってる~」
「それ以上は言わんでくれーー!」
タケルの叫びが風呂場に響いたのだった。
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《ログアウト不可区域 完》
「推薦申込書の提出まで、残り二日!」
――次章、中央都市。
グランディア中央学院《推薦入試編》、開幕。
ここまでで第1章となります。
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ここから先は、中央学院・入試編に入り、タケルたちの世界ももっと広がっていきます。
個人的にも、このあたりからの展開はかなり好きです。
これからも一話ずつ、楽しんでもらえるように頑張りますので、
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