↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
**最強!? モンスター×マスターズ  【モンマス】 Gランク落ちこぼれから始まる、 世界最強の相棒育成譚**  作者: 心瑛タケハル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
131/132

第130話 世界との差

準決勝は、終盤に入っていた。


雷堂ジンの雷牙狼が、

青白い雷をまとって走る。


空では、

サンダーファルコンが鋭く旋回していた。


二体の動きが、

一本の雷みたいにつながっていく。


ジンが、静かにカードを切る。


「カードセット――《雷王連鎖》」


雷牙狼とサンダーファルコンの身体から、

まばゆい雷があふれ出す。


その雷が空中で重なり、

巨大な一本の槍のようになった。


ブレイズが叫ぶ。


『来たァァァ!!』

『雷堂ジンの勝負手だァァァ!!』


観客席が揺れる。


「いけぇぇぇ!!」


「ジンーー!!」


タケルも、思わず身を乗り出した。


「いける……!」


雷の槍が、

エルシアへ向かって走る。


だが。


エルシアは、表情を変えなかった。


ただ、

細い指を静かに振る。


「カードセット――《白銀終奏》」


銀色の譜面が、

フィールドに広がった。


シルバードが羽ばたく。


ルナフォックスが、

一歩だけ前へ出る。


たった、それだけ。


けれど。


雷の槍は、

エルシアへ届く寸前で、すっと横へ流れた。


「え……?」


タケルの声が漏れる。


雷は空を裂き、

フィールドの端で爆ぜた。


その瞬間。


雷牙狼の足元から、

銀色の光が立ち上がる。


シルバードの羽音。


ルナフォックスの一歩。


二つの動きが、

ぴたりと重なった。


雷牙狼の体勢が崩れる。


空中のサンダーファルコンも、

銀の光に軌道を縛られた。


次の瞬間。


――ピコン。


【DOUBLE HIT】


【WINNER】

【エルシア・ルーベル】


一瞬、

会場が静まり返った。


次の瞬間。


歓声が爆発した。


『決まったァァァ!!』

『準決勝を制したのは、ルーベリア王国代表!』

『白銀の指揮者、エルシア・ルーベルだァァァ!!』


タケルは、言葉を失っていた。


「……勝った」

「あの速さを、止めた……」


アキラも、目を細める。


「速さを上回ったんじゃない」

「流れを先に読んでたんだ」


「流れを……?」


サクラが、ぽつりと言う。


「でも……」

「タケルたちの動き、少し似てなかった?」


タケルが振り返る。


「え?」


「ほら」

サクラは、少し考えながら続ける。

「モチが足場を作って、ルーが走るでしょ」

「どっちかだけが前に出るんじゃなくて、合わせて動いてた」


アキラが小さく頷いた。


「完成度は、全然違う」

「でも、考え方は近いかもしれない」


タケルは黙った。


遠い。


全然、届かない。


でも。


完全に違う道を歩いているわけじゃない。


そんな気がした。


その時だった。


――ジジッ。


勝利演出の光が、

一瞬だけ乱れた。


タケルの腕のモンマスも、

かすかに震える。


「……?」


画面の中で、

ルーとモチのアイコンが、

一瞬だけ小さく揺れた。


フレアが、眉をひそめる。


『……また?』


ブレイズは気づかない。


『いやぁ、すごかった!!』

『速さのジン! 指揮のエルシア!』

『世界の準決勝は、やっぱり熱いィィ!!』


観客も盛り上がったままだ。


けれど。


タケルの胸には、

また、あの嫌な感じが残っていた。


「さっきと同じだ」

「なんか、変だ……」


アキラが呟く。


「波、って言ってたな」

「何のことだ……?」


サクラも、不安そうにフィールドを見る。


けれど、

答えは出なかった。


会場の熱は、

そのまま決勝へ向かっていった。


⸻


それから。


時間が過ぎた。


準決勝を勝ち上がったエルシア。


そして、

絶対王者シルバ。


世界決勝の最後の戦いは、

タケルの想像をさらに超えていた。


速いとか。


うまいとか。


そういう言葉では追いつかなかった。


ただ、

最後に見えたのは。


雷をまとった三つ首の魔獣。


サンダー・ケルベロス。


エルシアは最後まで、

その動きを読んでいた。


進路も。

タイミングも。


けれど。

分かっていても、止められない。


その一撃が、

白銀の防御を打ち破る瞬間だった。


ブレイズの声が、

スタジアムを揺らす。


『決まったァァァ!!』

『サンダー・ケルベロスの一撃ィィ!!』


『勝者――』


一拍。


『絶対王者シルバァァァ!!』


会場が爆発した。


「シルバァァァ!!」


「五連覇だァァ!!」


「強すぎる!!」


タケルは、

何も言えなかった。


エルシアですら、

届かなかった。


あのジンを止めたエルシアが。


世界最高峰だと思ったその先に、

まだ王者がいた。


巨大スクリーンに、

シルバの姿が映る。


黒いコート。


冷たい目。


けれど、

その表情には、少しだけ熱があった。


フレアがマイクを向ける。


『シルバ選手』

『五連覇達成です』

『今、何を思いますか?』


シルバは、少しだけ目を伏せた。


『五年前』


会場が静かになる。


『小さな東洋の国で』

『俺は、初めて敗北を知った』


タケルの胸が跳ねた。


「……ガイアス?」


シルバは続ける。


『相手は、ガイアス』

『俺に、本当の強さを教えた男だ』


ざわめきが広がる。


タケルは、

拳を握っていた。


シルバの声が、

会場に響く。


『あの敗北で、自分の弱さを知った』

『だから俺は、ここまで戻ってきた』


一拍。


『俺を超えてみろ』


そして、

真正面を見据える。


『挑戦者を待っている』


歓声が、

再び爆発した。


タケルは、

その声の中で立ち尽くしていた。


ガイアス。


シルバ。


世界。


全部が、

今までよりずっと大きく見えた。


⸻


会場を出た頃には、

タケルたちはしばらく無言だった。


外の空気は涼しい。


けれど、

耳の奥にはまだ、

あの歓声が残っていた。


サクラが、小さく息を吐く。


「すごかったね……」


アキラも、

パンフレットを握ったまま呟く。


「あれが、世界か」


タケルは黙っていた。


ふと、

腕のモンマスへ視線を落とす。


画面の中には、

ルーとモチのアイコンが並んでいた。


「……俺」


タケルは、ようやく口を開いた。


「ちょっと強くなったと思ってた」


誰も笑わなかった。


タケルは続ける。


「でも」

「全然だった」


拳を握る。


悔しい。


けれど、

嫌じゃなかった。


見なければ、

分からなかった。


世界がどれだけ広いのか。


自分が、

どこに立っているのか。


「でも、見れてよかった」


タケルは顔を上げる。


「俺、もっと強くなりたい」


サクラが、少しだけ笑う。


「ガイアスさんみたいなバトルマスターになるのは……」

「まだまだ先になりそうだね」


タケルを見る。


「でも、諦める気ないんでしょ?」


「当たり前だろ!」


一拍。


「遠いって分かっただけだ」

「行けないって決まったわけじゃない」


タケルは、

ぎゅっと拳を握る。


「俺、絶対なる」


夜空を見上げる。


「ガイアスみたいなバトルマスターに!」


世界は、

思っていたよりずっと広かった。


そしてタケルは初めて、

自分がまだ入口に立ったばかりだと知った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。