第128話 世界決勝へ
次の瞬間。
カランカランカラン!!
おじさんが鐘を鳴らした。
「特賞ォォォ!!」
「バトルマスター世界決勝戦チケット、出ましたぁぁぁ!!」
「ええええええええ!?」
タケルの声が、商店街に響いた。
さとが飛び跳ねる。
「にいに、すごーい!」
母も目を丸くしている。
「あんた……」
「本当に最近、運向いてきたわね」
タケルは、金色の玉とチケットを交互に見る。
「いや……」
「まじで?」
おじさんが、封筒を手渡した。
黒い封筒。
中央には、
金色のエンブレム。
【バトルマスター世界決勝戦】
【日本特設会場】
【特別観覧チケット】
タケルの手が、
小さく震える。
「世界……決勝……」
その夜。
タケルはすぐにアキラとサクラへ連絡した。
画面越しに、サクラが叫ぶ。
「えええ!?」
「世界決勝のチケット!?」
アキラは固まっていた。
「……本物か?」
「本物だって!」
タケルは封筒を見せる。
アキラの眼鏡が、きらりと光る。
「世界決勝……」
「世界トップの、一流の戦い方……」
「アキラ?」
サクラが呼ぶ。
「……行くぞ」
アキラが静かに言った。
「これは、絶対に行く」
「目が怖い!」
タケルは笑った。
「よし」
「三人で行こうぜ!」
「人数制限あるんじゃないの?」
サクラが聞く。
タケルは固まった。
「……あ」
沈黙。
そこへ、母が横から封筒を覗き込む。
「あら」
「家族招待枠つきって書いてあるわよ」
「ご友人二名まで同伴可、だって」
タケル、サクラ、アキラ。
三人の顔が、同時に明るくなる。
「行ける!!」
さとが、ぴしっと手を上げた。
「さともー!」
母が笑う。
「はいはい」
「みんなで行きましょうね」
「やったー!」
タケルは封筒を握りしめた。
胸が、どんどん高鳴っていく。
あの日。
父の肩車で見た、
夢の舞台。
ガイアスが勝った、
あの世界決勝。
あの頃は、
ただ憧れていただけだった。
でも今は。
少しだけ、
見えるものが違う気がした。
⸻
そして、当日。
巨大スタジアムの前に、
タケルたちは立っていた。
「……でか」
タケルが、ぽつりと呟く。
ミラリンピック日本決勝の会場も、
十分すごかった。
けれど、
今回は桁が違った。
空へ伸びる光の柱。
会場を包む巨大な結界ドーム。
世界中の国旗だけじゃなく、
見たことのない紋章が、いくつも並んでいる。
日本。
ルーベリア王国。
セレスティア合衆国。
ノルディア共和国。
ファルマニア連邦。
アルバニグロリア帝国。
世界各国の名前が、
巨大スクリーンに映し出されていた。
その下には、
小さく別の表示。
【アルセリア大地】
【ルーベリア大地】
【ノルディア大地】
タケルは首を傾げる。
「……なんだこれ?」
現実世界と、
ミラリア。
二つの世界が、
どこかで繋がっているようだった。
サクラが息を呑む。
「すごい……」
「本当に世界大会なんだ……」
アキラはパンフレットを握りしめている。
「登録ミラモン」
「使用カード」
「戦闘傾向……分析するだけで時間が足りない」
タケルは会場を見上げた。
その時。
スタジアムの中から、
地響きのような歓声が響いた。
そして――
聞き覚えのある声。
『イェェェェイ!!』
『世界最強を決める戦いへ、ようこそォォォ!!』
タケルの目が輝く。
「この声……!」
『実況はもちろん、この俺!』
『DJブレイズだァァァ!!』
歓声が爆発する。
『バトルマスター世界決勝戦!!』
『世界最高峰のモンマスたちが!』
『最強の称号をかけて激突するぞォォォ!!』
巨大スタジアムが、
歓声で揺れる。
タケルは、拳を握った。
カード。
二体召喚。
見たこともない連携。
巨大スクリーンに映る、
世界最強のモンマスたち。
その全部が、
今から目の前で始まる。
小さい頃、
父の肩車から見上げていた夢の舞台。
今度は、
自分の足で、
その場所へ来ていた。
胸が熱い。
でも同時に。
少しだけ、怖い。
自分が少し強くなったと思った、その先に。
どれだけ広い世界があるのか。
まだ、知らない。
タケルは、小さく呟いた。
「……見てやる」
サクラとアキラが、横に並ぶ。
「うん」
サクラが頷く。
「ああ」
アキラも頷いた。
そして。
巨大な扉が、ゆっくり開く。
光と歓声が、
三人を飲み込んだ。
――世界の頂点を決める戦いが、
今、始まろうとしていた。




