第126話 橋がつながる
倉庫街を出る頃には、
空は少し赤くなっていた。
風が吹く。
長かった騒ぎも、
ようやく落ち着いた。
ルーが先を歩く。
「ワフ!」
その後ろを、
モチがぷるんと跳ねていた。
サクラが、その様子を見て笑う。
「なんか、普通に並んでるわね」
「ワフ」
「ぷるん」
ルーとモチが、
なぜか少し得意げに揺れた。
タケルも、
思わず笑いそうになる。
その時だった。
サクラが、ふと首を傾げる。
「ていうか」
「なんでレベル5じゃないのに」
「モチとルー、同時に召喚してるの?」
タケルの動きが止まった。
「……あ」
サクラが腕を組む。
「“あ”じゃないわよ」
「いや、その……」
タケルは視線をそらす。
「まあ」
「細かいこと気にするなよ」
「絶対ダメなやつでしょ、それ」
アキラが静かに口を開く。
「いや」
一拍。
「たぶん、条件が違う」
タケルが振り返る。
「条件?」
アキラは、モチを見る。
「普通の同時召喚じゃないんだろ」
モチが、
ぷるんと揺れた。
その瞬間。
――ピコン。
タケルのモンマスが、光る。
「うわっ!?」
画面が自動で開いた。
【契約安定化】
【再同期中】
「再同期……?」
タケルが読み上げた瞬間。
足元に、
光が広がった。
「また!?」
サクラが目を丸くする。
地面が消える。
景色が白く塗り替わる。
見覚えのある空間。
“マスターからの挑戦状”で見た、
あの特殊フィールドだった。
アキラが目を細める。
「この反応……」
その中央。
ふわりと光が集まる。
「やっほー」
ミラッチだった。
いつものように、
ふわふわ浮いている。
「ミラッチ!」
タケルが声を上げる。
ミラッチは、
にこっと笑った。
「ようやく」
一拍。
「橋、つながったね」
タケルが、目を瞬かせる。
「橋……?」
その言葉と同時に。
頭の中へ、
光景が浮かぶ。
両側から歩かないと、
光らなかった橋。
一人だけじゃ、
意味がなかった橋。
歩きたくなる橋。
繋がる橋。
そして。
モチが、
ずっと見ていた背中。
タケルは、
ゆっくりモチを見る。
モチも、
静かにこちらを見返していた。
「……そうか」
小さく呟く。
「勝つことじゃなかった」
サクラとアキラが、
静かに聞いている。
タケルは、少し笑った。
「一緒に進むことだったんだ」
モチが、
ぷるんと揺れた。
その瞬間。
――ピコン。
空中に、
大きな表示が現れる。
【条件①】
【同調率50%達成】
【条件②】
【連携値50%達成】
【条件③】
【再挑戦完了】
サクラが目を丸くする。
「再挑戦……?」
アキラが、小さく頷いた。
「戦闘じゃない」
一拍。
「モチとの方だ」
タケルの胸が、
少し熱くなる。
ミラッチが笑う。
「マスターはね」
くるりと回る。
「ずっと、それを見てたんだよ」
タケルは、
モチを見る。
モチも、
ぷるんと返した。
その瞬間。
モンマスが、
強く光り始めた。
「うわっ!?」
タケルが思わず目を細める。
光が、
腕を包み込む。
画面が変化していく。
今までより、
少し広く。
少し深く。
表示が増えていく。
――ピコン。
【モンマスレベル5】
【解放】
「おおー!」
サクラが声を上げる。
アキラも、
少し驚いたように見る。
「本当に解放されたな」
ルーが嬉しそうに吠えた。
「ワフ!」
モチも跳ねる。
「ぷるん!」
タケルは、
光るモンマスを見つめた。
ミラッチが、
ふわりと近づく。
「最初から」
一拍。
「勝つだけの試験じゃなかったんだよ」
タケルは、
静かに聞いていた。
ミラッチは、
モチを見る。
「橋はね」
笑う。
「片方だけじゃ、つながらないから」
白い空間に、
やさしい風が吹いた。
タケルは、
モチへ手を伸ばす。
モチは逃げない。
そのまま、
ぽすん、と手の上へ乗った。
ぷるん。
いつもの、
安心した返事。
タケルは、
少しだけ笑った。
「……行こう」
ルーが元気よく吠える。
「ワフ!」
モチも跳ねる。
「ぷるん!」
サクラが笑う。
「なんか、やっと元に戻った感じね」
アキラも、小さく頷いた。
「いや」
モチを見る。
「前より、少し進んだんだろ」
タケルは、
もう一度モンマスを見る。
光る画面。
そこには、はっきり表示されていた。
【モンマスレベル5】
【解放完了】
タケルは、モチとルーを見る。
一匹は、ぷるんと跳ねる。
一匹は、ワフ、と吠える。
どっちかじゃない。
どっちも、
一緒に進む相棒だ。
タケルは、小さく拳を握った。
「よし」
「次へ行こう」
夕焼けの中、
歩き出す。
つながった橋の先へ。




