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**最強!? モンスター×マスターズ  【モンマス】 Gランク落ちこぼれから始まる、 世界最強の相棒育成譚**  作者: 心瑛タケハル


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第123話 すれ違ったまま

薄暗い路地を、三つの影が進んでいた。


その真ん中で、

ゴロウが両手に抱えているのは、小さな透明ケース。


中には――


ぷるん。


モチがいた。


網ごとケースに入れられ、

小さく揺れている。


「ふふ」

マリナが満足そうに笑う。

「幻ランクのスライム、確保完了ね」


「これでボスに顔向けできるモン」

ピッコルも胸を張る。


マリナは、ケースの中のモチを見た。


「地図Sはまだでも」

「幻ランクだけで十分すぎる手土産よ」


ゴロウがごくりと喉を鳴らす。


「姐さん……」

「これ、出世できるやつっすか?」


「当然でしょ」

マリナは口元を吊り上げる。

「今までの失敗、全部ひっくり返すわよ」


ゴロウは、ケースの中をちらりと見た。


「……姐さん」

「なんか、元気ないっすね」


モチは、ぷるん、とも返事をしない。


ただ、

小さく丸くなっている。


マリナは冷たく言った。


「捕まえたミラモンに情が移ると、あとで困るわよ」


「べ、別に情ってわけじゃ……」


「当たり前でしょ」

マリナは前を向く。

「今は、この幻ランクだけで十分」

「地図Sまで欲張るのは、そのあとよ」


「で、でも」

ゴロウがケースを抱え直す。

「このケース、ちょっと滑るっす」


「絶対落とさないでよ」


「大丈夫っす!」

ゴロウは力強く頷いた。


その直後。


――ごん。


「ぐえっ」


ゴロウの足が、道の石につまずいた。


「ちょっと!」


ケースが大きく揺れる。


中のモチが、ぷるっと跳ねた。


「ぷるっ!?」


「ゴロウ!」

マリナが叫ぶ。

「落としたら、ご飯抜きどころじゃ済まないわよ!」


「ひぃぃ! すみません!」


ゴロウは慌てて体勢を立て直す。


だが、その勢いで。


――ガタン!


近くの屋台にぶつかった。


「おいおいおい!」

屋台のおじさんが声を上げる。

「何してくれてんだ!」


串焼きが数本、ころころと台の上を転がる。


ピッコルが、さっと横へ逃げた。


「ピッコルは無関係だモン」


「お前、逃げるなっす!」


ゴロウが慌てて頭を下げる。


「す、すみませんっす!」

「ちょっと急いでて!」


屋台のおじさんは、じろりとケースを見る。


「なんだ、そのスライム」

「網に入れて……ずいぶん嫌そうじゃねぇか」


ケースの中で、

モチが小さく震える。


ぷる……。


ゴロウが、ぎくっとする。


「た、ただのスライムっす!」

「通りすがりの、普通の、どこにでもいるやつっす!」


「普通のやつをケースに入れるかよ」


「ふ、普通のスライムも」

ゴロウは焦ったまま言った。

「地図Sと一緒なら、きっと輝くっす!」


屋台のおじさんが眉をひそめる。


「普通のスライム? 地図S?」


「ゴロウ!」


マリナが、にっこり笑った。


「おじさん、ごめんね」

「この子、図体は大きいけど、たまにわけ分からないこと言うのよ」

「気にしないで」


「あ、ああ……」


「姐さん、ひどいっす!」


「うるさいわね」

マリナがゴロウの背を押す。

「行くわよ!」


三人は、慌ててその場を離れる。


その時。


ゴロウの腰につけていた紙切れが、

ひらりと落ちた。


屋台の足元。


【コミック団 搬送メモ】

南区旧倉庫街・七番倉庫


誰も、それに気づかなかった。


⸻


その頃。


タケルたちは、まだモチを探していた。


「モチー!」


サクラの声が、通りに響く。


アキラは、地面を見ながら歩く。


「足跡はないな」

「スライムだから当然だが」


「そういう冷静なこと言うなよ……」


タケルは肩を落とす。


それでも、

目はずっと周囲を探していた。


「モチ、甘い匂い好きだから」

「屋台の方に行ってるかも」


サクラが少し驚いたように見る。


「ちゃんと覚えてるんだ」


「……最近」

タケルは小さく言った。

「見れてなかっただけだ」


その声は、少しだけ苦かった。


三人は屋台通りへ入る。


焼けた肉の匂い。

甘い果実の匂い。

にぎやかな声。


でも、モチの姿はない。


タケルは近くの屋台に駆け寄った。


「すみません!」

「小さいスライム、見ませんでしたか?」


屋台のおじさんは、眉を上げた。


「スライム?」


「ぷるぷるしてて」

「ちょっと丸くて」

「……俺の相棒なんです」


おじさんは、少し考える。


「変な三人組が、ケースに入れたスライムを運んでたな」


タケルの顔が変わる。


「ケース……?」


「網にも入ってた」

「ずいぶん嫌そうに、ぷるぷる震えてたぞ」


タケルの胸が、どくんと鳴った。


「……モチだ」


サクラも息を呑む。


アキラが一歩前に出る。


「その三人組、どんな奴でした?」


「でっかい男と、気の強そうな女と、小さい変なやつ」

「あと、地図Sがどうとか、わけ分からないこと言ってたな」


サクラが、はっとする。


「タケル!」

「地図Sって、カードショップで奪われかけたやつじゃない?」

「ミラリア体操の……」


「それ以上言うな!」

タケルが顔を赤くする。

「俺の黒歴史だ!」


アキラの目が細くなる。


「あの時の三人組か」

「変な帽子のミラモンもいたな」


タケルの目が鋭くなった。


「……ゴロウ」

「マリナ」

「ピッコル」


「あの三人組か」

アキラが低く言う。

「まだ諦めてなかったんだな」


その時、サクラが足元を見た。


「待って」

「これ……」


屋台の足元に落ちていた紙切れを拾う。


【コミック団 搬送メモ】

南区旧倉庫街・七番倉庫


「コミック団……」

タケルの顔が変わる。


アキラも紙を見る。


「まずいな」

「ただの通りすがりじゃない」

「ちゃんと運ぶ先まで決めてる」


一拍。


「こういう連中は」

「捕まえた後の動きも慣れてる」


サクラの表情が曇る。


「……モチ、大丈夫かな」


「南区旧倉庫街」

アキラが低く言う。

「隠れるには、ありそうな場所だ」


タケルは、紙を握りしめた。


「行く」


「タケル」

サクラが呼ぶ。


タケルは振り返らない。


「今度は」

「ちゃんと、俺から迎えに行く」


そう言って、走り出した。


⸻


南区旧倉庫街。


古い倉庫が並ぶ一角。


その奥。


七番倉庫の中で、

モチは透明ケースの中にいた。


ぷる……。


元気のない小さな声。


その前で、

マリナがにやりと笑う。


「さて」

「幻ランクちゃん」


ケースの向こうで、

モチが小さく揺れた。


その頃。


倉庫街の入口に、

タケルたちの足音が近づいていた。

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