第112話 正解っぽい失敗
――ピッ。
画面の端で、クラフト用フィールドが展開された。
一方その頃、タケルは次のバトル開始を待っている。
「……あれ?」
視界の隅で、床ブロックが組み上がるのが見える。
「サクラたち、始めたのか」
タケルはそれ以上、気に留めなかった。
⸻
「そろそろ、私たちも“モンクラ”しよっか」
サクラが軽く手を叩く。
「ああ」
アキラが頷く。
「タケルは……少し心配だが」
「今は、俺たちにできることをやろう」
「大丈夫大丈夫」
サクラが笑う。
「本当にヤバそうなら、どっちかが口出しに行きましょ」
――ピッ。
【クラフトフィールド:展開】
⸻
作業は、驚くほどスムーズだった。
床。
壁。
屋根。
ブロックは無駄なく配置され、
構造的にも、視覚的にも整っていく。
「耐久は十分だ」
アキラが確認する。
「じゃあ、窓つけよ」
サクラが言う。
「明るい方がいいでしょ」
窓が開く。
光が差し込む。
「ドア、ちょっと寂しくない?」
サクラが首を傾げた。
「効果ブロック、使ってみたいな」
「任せろ」
アキラが指を滑らせる。
――ピッ。
自動ドア。
「……すご」
サクラが目を丸くする。
「だろ」
少しだけ、アキラは得意げだった。
「じゃあさ」
サクラが階段の前で、両手を広げる。
「エスカレーター」
――ピッ。
階段が、静かに動き出した。
「やるな」
アキラが素直に言う。
「分かってきたかも」
サクラも笑う。
普通に、いい家だった。
⸻
だが。
草を踏み荒らす音がした。
「……来た」
アキラが、顔を上げる。
――ピッ。
【危険接近:中央】
【対象:群体反応】
【ミラモン:リーフラット】
【タイプ:群体】
「やば……」
サクラが息を呑む。
「あのリーフラットだわ……!」
「アクセス! クロウルガー!」
「アクセス! リリーフェア!」
二人は同時に動いた。
「前と同じね」
サクラが言う。
「まずはリーダー――」
「……どれ?」
サクラが止まる。
「全部、同じに見えるんだけど」
次の瞬間。
――ガシャッ!
壁が崩れた。
「ちょ、ちょっと!?」
二人で必死にリーフラットを追い返す。
だが――
効果ブロックが展開されるたび、
どこからともなく、リーフラットの群れが現れて突進してくる。
壊される。
また壊される。
「……もう、無理だな」
アキラが息を吐いた。
「構造ブロックだけで行きましょ!」
サクラが即断した。
⸻
再構築。
今度は、堅実に。
派手さを削って。
完成した家は――
整っていた。
無駄がない。
便利そう。
誰が見ても「悪くない」。
ミラッチは、少し離れた場所で、
腕を組んで眺めている。
無言。
口笛を吹いたり、
視線を泳がせたり。
サクラの胸に、嫌な予感がよぎる。
「……ねえ」
小さく言う。
「これで、大丈夫かな」
「問題ない」
アキラは即答した。
「機能的だ」
少し間。
「普通に、シンプルな家だね」
サクラが言う。
「なら、ワンポイントだな」
アキラが考える。
「屋根に……ギザギザつけよう」
「えー……」
サクラが渋る。
「それ、必要?」
「普通じゃ、点は取れない」
アキラは言った。
「……それも、そうね」
――ピッ。
屋根に、ギザギザ。
⸻
完成。
ミラッチが、パンパンと手を叩いた。
【査定中】
数秒。
【結果:72点】
表示が、静かに並ぶ。
・発想:+20
・完成度:+15
・好み:-10
・先端のギザギザ:-13
・総合印象:ミラッチ感性
「……」
サクラが、言葉を失う。
「ギザギザ、マイナス十三!?」
「やっちまったな」
アキラが呟く。
ミラッチは、あっさり言った。
「うん。悪くないよ」
一拍。
「でもね」
――ピッ。
【減点理由】
・想定通り
・驚きなし
・作り手の顔が見えない
ミラッチは肩をすくめる。
「“誰が住む家か”は分かる」
「でも、“僕が住みたい理由”は感じなかった」
少し間を置いて。
「あと、僕」
「ギザギザ、ちょっと苦手」
沈黙。
「……感性、独特ね」
サクラが苦笑する。
「一筋縄じゃいかないな」
アキラも認めた。
⸻
その頃。
タケルは、三戦目の真っ最中だった。
気づかないまま、
ズレは、別の場所でも進んでいた。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
タケルだけでなく、アキラとサクラも頑張っています。
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