第109話 ぷるぷるとぷにぷにの闘い(1戦目)
フィールドが、静かに切り替わった。
草原の一角が、円を描くように区切られ、地面に淡い光のラインが走る。
【対戦フィールド:展開】
【対象ランク:E】
「よし」
タケルは、軽く肩を回した。
「じゃあ――まずは肩慣らしだな」
その正面。
ぷるり、と地面が盛り上がった。
次の瞬間、
丸っこい影が、ぬるりと形を取る。
ゼリーみたいな体。
鈍そうな動き。
「……弱そうじゃない?」
サクラが、率直に言った。
「なに、あれ?」
タケルが首を傾げる。
「ゼリースライム?」
タケルは、モンマスを本型に展開させる。
「リード。解析」
光が走り、情報が表示された。
【ミラモン:ぷるぷるゼリー】
【ランク:E】
【特徴:食用/おやつの時間に良く食べられている】
【備考:スライム系。甘い】
「……食用?」
タケルの腹が、
ぐぅ、と鳴った。
「ちょっと!」
サクラが即座に突っ込む。
「いくら何でも、食べたらダメでしょ!」
「わかってるよ!」
タケルは慌てて言い返す。
その横で、アキラが冷静に頷く。
「Eランクだな」
「数値通りだ」
ぷるん、と。
モチが前に出た。
――ピッ。
【BATTLE START】
空気が、切り替わる。
モチが跳ねる。
「行け、モチ!」
体当たり。
どんっ!
モチの体が、敵にぶつかる。
ぐにゃり、と弾かれた。
ぷるぷるゼリーは、形を崩しながらも、
何事もなかったように元に戻る。
「……あ、効いてない?」
サクラが目を丸くする。
アキラが、すぐに言った。
「衝撃吸収型だな」
「力押しは、向いてない」
タケルは、ニヤっと笑った。
「なるほど」
「ゲームっぽくなってきたじゃん」
⸻
しばらくの間、
ぷるぷると、ぷにぷにがぶつかり合う。
倒れない。
けれど、派手な反撃もない。
ぺち。
ぐにゃ。
ぺち。
地味な攻防が、延々と続いた。
「……なんとか勝ってはいるけど」
アキラが眉をひそめる。
「テンポは、あんまり良くないな」
サクラも腕を組む。
「見た目も地味すぎるわね……」
タケルは画面を見つめたまま、考え込む。
「なるほどな」
タケルは呟く。
「ただ殴るだけじゃ、ダメか」
(ルーなら――)
一瞬だけ、脳裏をよぎる。
(もっと、早いよな)
だが、すぐに首を振った。
「……いや」
「モチは、モチだ」
その瞬間。
モチが、ぐっと体を膨らませる。
ぷるぷるゼリーも、負けじと体を膨らませた。
どすん。
ぶつかり合った衝撃は、拍子抜けするほど軽く――
ぷるぷるゼリーは、音もなく崩れた。
【勝利】
「なにこれ」
サクラが肩をすくめる。
「とりあえず、モチの勝ちね」
「モチ、ナイス」
タケルも軽く返す。
その直後。
端末に、小さな表示が浮かんだ。
同調率:47% → 48%
「……上がってるな」
タケルは言ったが、
すぐに続けて気づく。
「……でも、50じゃない」
アキラが静かに頷く。
「勝ったのに」
「伸び方は、鈍いな」
否定も、肯定もない。
数字は、ただ事実を示すだけだった。
さらに、もう一つ。
一瞬だけ、別の表示が浮かぶ。
連続勝利:1
すぐに、消える。
「今の……なに?」
サクラが首を傾げる。
「条件③だ」
アキラが答える。
タケルは、深く考えなかった。
「まあ、連勝すりゃいいんだろ?」
モチを見下ろす。
「ありがとな、モチ」
ぷるん、と返事。
タケルは、視線を前に戻す。
「よし」
拳を軽く握った。
「次、行こう」
その胸の奥で、
ほんの一瞬だけ、別の名前がよぎる。
(次は……ルーだな)
フィールドの光が、再び動き出した。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
まずは一勝。
順調に見えても、数字は思ったようには伸びません。
タケルがこの試練の本当の意味に気づけるのか、これからも一緒に見守っていただけたら嬉しいです。
ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。




