第108話 ゲーム、始めよっか
――ピッ。
短く、低い音が鳴った。
タケルの端末が、一瞬だけ暗転する。
空中に、ぱっと花火のような光が弾けた。
どこか見覚えのある、ゲームのオープニングみたいな演出。
そして――
場違いなほどテンションの高い声が響く。
「勇者モドキ……タケルよ!
お前はこの世界に選ばれた勇者だ!」
サクラが、すぐに口を挟む。
「なんかそれっぽいの始まったわよ」
謎の声は気にしない。
「さあ、ミッションをクリアし、階級を上げ、我が城まで来るのだ!
一緒に魔王ボロボンを倒そうではないか!」
「勝手に設定進めてくるわね……」
タケルの目の前に、選択肢のウィンドウが表示された。
【参加しますか?】
YES / NO
「うわ、めんどくさ……」
タケルは即座に言った。
「とりあえず、NOだな」
ポチ。
「さあ、ミッションをクリアし、階級を上げ、我が城まで来るのだ!
一緒に魔王ボロボンを倒そうではないか!」
「……え?」
アキラが即ツッコむ。
「タケル、それ」
「YES押さないと、ずっと続くやつだぞ」
「マジで!?」
タケルはもう一度画面を見る。
……そして、なぜかもう一度。
NO。
「さあ、ミッションをクリアし――」
「ほらな」
アキラが肩をすくめる。
「早く終わらせたいから、YES押してよ」
サクラが半目で言った。
「……はいはい」
タケルは観念して、YESを押す。
「よく決断した!」
謎の声が、やけに満足そうに響く。
「では――ゲームを始めよう!」
光が一度、強く瞬いた。
⸻
【特殊ミッション】
【マスターからの挑戦状】
サクラが小さく首を傾げる。
「……“マスター”? なにそれ」
――この挑戦は
勇者モドキ・大和タケルにのみ提示されます
「え、俺だけ!?」
タケルは思わず声を上げた。
「なにそれ、完全に主人公イベントじゃん!」
次の表示が、軽いノリで浮かび上がる。
テーマ:
レベル5になれるかな?
「……なんかムカつくわ」
サクラが即座に言った。
「絶対、煽ってるでしょ」
「いや……」
アキラは画面を見つめたまま言う。
「これは、わりとアリだな」
タケルは、にやっと笑った。
「なんか、ワクワクしてきた」
さらに、注意書きが続く。
※本ミッションは
最終判断およびプレーを本人が行う必要があります
「要するに――」
タケルが言う。
「“自力でやれ”ってことだろ?」
「どんまい、タケル」
サクラがあっさり言った。
その直後。
三人の端末に、同時に通知が走る。
「なになに?」
アキラが画面を覗き込む。
⸻
【条件①】
同調率:50%以上に到達せよ
(単体戦闘に限る)
「単体……補助なし、か」
続けて、次の表示。
【条件②】
連携値:50%以上に到達せよ
(条件①で選択しなかったミラモンを使用すること)
「交互に使えってことか」
タケルは即理解した。
「いいじゃん!」
そして、最後。
【条件③】
連続勝利を達成せよ
・敗北時:その戦闘は即終了
・進捗は保持される
・再挑戦のたび、報酬減
「優しいのか、厳しいのか分からないわね」
サクラが声を上げる。
「うわ、燃える!」
タケルは笑った。
「こういうの、嫌いじゃない!」
「あれだな……」
アキラは端末を見ながら言う。
「早めにクリアすれば、特典が多いってことか」
――条件は示した
あとは、君次第だ
UIが、最後にもう一度だけ点灯した。
【特殊ミッション:進行条件】
・単体戦闘のみ
・ミラモンの連続使用不可
・敗北時:その戦闘は即終了
・進捗は保持される
・再挑戦のたび、報酬査定減
【目標】
同調率/連携値:各50%以上
連続勝利を達成せよ
※連続勝利数に応じて報酬査定上昇
――ピッ。
表示は、完全に消えた。
「……よし」
タケルは拳を握る。
「じゃあ、まず一勝だ」
サクラが、タケルの肩をぽんと叩く。
「タケル、頑張ってね」
アキラも頷く。
「俺は横から口は出すぞ。分析は任せろ」
「くそ……」
タケルはむっとした。
「いいな、お前ら。見てるだけで。ちくしょー」
その瞬間。
ミラッチが、にこにこしたまま言った。
「え? なんで二人とも傍観してるの?」
「……え?」
サクラが固まる。
ミラッチは、当たり前みたいに続けた。
「君たちもやるんだよ。これ、強制」
【参加者が追加されました】
【サクラ】
【アキラ】
「えっ……」
「マジ!?」
ミラッチは元気よく頷いた。
「うん!」
「ゲームは、みんなでやらないとね」
タケルは、口の端を上げる。
「……面白い展開じゃん」ニヤニヤ。
サクラ「面白くない!」
アキラ「俺ら、何するんだよ」
ミラッチは少し考えるフリをした。
「うーん……そうだなぁ」
それから、さらっと言う。
「僕さ。人間界の“クラフト実況”にハマってて。四角い世界で家作るやつ、あるじゃん?」
アキラ「……あるな」
サクラ「知ってるけど、今それ!?」
ミラッチは指を鳴らした。
ぱちん。
足元の草が、四角い光の粒になって、組み上がる。
【変形自在ブロック:生成】
「僕がお題を出すからさ」
「これで、何か作ってよ」
「良くできたら――特別に、ボーナスあげる」
「タケル君がプレー終わるまで、何度でも挑戦できるよ」
「どうかな?」
ミラッチは、にやにやと笑った。
タケル「ボーナス!?」
ミラッチ「うん。僕が“感動”したらね」
【条件外ボーナス:付与の可能性あり】
アキラのメガネの奥がキラっと光る。
「ボーナス条件は狙いたいな」
「ちなみに……その“感動”って何基準だよ」
ミラッチは、にこっと笑った。
「気分!」
その一言に、サクラが嫌な予感しかしない顔になる。
「あとね」
ミラッチは指を立てる。
「適当にやるなら、ペナルティもあるよ」
【注意】
【適当:判定対象】
「いやぁぁ……」
サクラが頭を抱える。
「最高かよ!」
タケルは即答だった。
ミラッチは少しだけ考える素振りをしてから、付け足す。
「そうだね。頑張ったら――」
「タケル君の条件達成に役立つアイテムも、ちゃんと支給するよ」
「どうかな?」
にやにや。
アキラの目が、すっと細くなる。
そして、隣のサクラを見た。
「サクラ、やろう」
「……うん」
サクラは小さく頷いた。
「私たちのために……!」
「おい!」
タケルがすぐ突っ込む。
「そこは嘘でも俺のためって言ってくれ!」
ミラッチは最後に、さらっと爆弾を落とした。
「ちなみに、作ってる途中にミラモン邪魔しにくるから倒してね」
「やっぱり嫌ぁぁ!!」
サクラの悲鳴が、草原に吸い込まれた。
ミラッチは最後に、さらっと言った。
「じゃ、始めよっか」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
ついに特殊ミッションの内容が公開されました。
現在の状況はこちらです。
【未達項目】
・同調率:47%(基準未満)
・連携値:40%(基準未満)
果たしてタケルは、この壁をどう乗り越えるのでしょうか。
ここから始まる新しい試練も、一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。
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