第106話 ミラッチ再登場
不意に、ぱちん、と軽い音が鳴った。
空間の端。
風景の“境目”が、少しだけ歪む。
目の前には――
ミラリア接続時に会った、“狭間の間”の案内人。
ミラッチが立っていた。
「やあ。久しぶりだね」
どこか間の抜けた声。
現れたのは――
小柄な影だった。
どこか見覚えのある、
ゆるいシルエット。
タケルは、一瞬だけ首をかしげる。
(……誰だ?)
だが、アキラとサクラは違った。
「……懐かしい感じ、する」
アキラがぽつりと呟く。
「うん」
サクラも、すぐに頷いた。
「なんか嬉しい」
タケルだけが、完全に取り残されている。
(え? ちょっと待って)
(二人とも知ってる子なの?)
サクラは、ぱっと表情を明るくした。
「あの時は、プレゼントありがとうございました!」
*リリーフェアのこと
影――ミラッチは、にこりと笑う。
「どういたしまして」
「ちゃんと役に立ってるみたいで、よかったよ」
(……プレゼント?)
タケルの頭が、一瞬でフル回転する。
(やばい)
(サンタさんとか⁉︎)
(小さい頃、会ったことあるし)
(でも今ここで知らないって言うの、めっちゃ恥ずい)
タケルは、咳払いを一つ。
「ああ、あのプレゼントな!」
「めっちゃ良かったよな。うん。うん。間違いない」
サクラの視線が、すっと横に滑る。
――疑っている。
(えっサンタじゃないの⁉︎)
タケルが内心で固まった、そのとき。
ミラッチが、楽しそうに目を細めた。
「タケル君じゃん」
「頑張ってるみたいだね」
(え、俺?)
「……あ、どうも」
「うんうん」
「“あんな手段“普通思いつかないよ」
「ちゃんと“ゲット”したみたいだし」
*モチのこと
(あんな手段?)
(何の話だ?)
タケルの背中を、嫌な汗が伝う。
(まさか……)
(ユウマに聞いた、あの学科試験のこと?)
(え、あれ……やっぱズル扱い?)
(うわ、今さら合格取り消しとか、マジで嫌なんだけど)
(ちゃんと謝ろう)
(ここは、土下座だな)
次の瞬間。
「申し訳ありませんでした!」
――勢いよく、頭を下げた。
「その件でしたら、深く反省しておりまして!」
「合格取り消しだけは、どうか――!」
一拍。
ミラッチが、声を出して笑った。
「あはは」
「それだよ、それ」
タケルは、顔を上げる。
「……え?」
「いやぁ」
「本物を直接見られて、嬉しくてさ」
*土下座のこと
完全に意味が分からない。
サクラが、ため息混じりに言った。
「タケル」
「この子、覚えてないでしょ」
「……ごめんなさい」
タケルは、もう一度だけ小さく頭を下げた。
ミラッチは、肩をすくめる。
「まあ、いいよ」
「だいたい想像どおりだし」
その視線が、三人を順に見渡す。
軽い。
でも――軽さの奥が、まるで見えない。
「改めて」
「ようこそ、特別展開のイメージ・アリーナへ」
ここまで読んでくださってありがとうございます。
久しぶりにミラッチが登場しました。
相変わらず何を考えているのか分からない案内人です....
この先も一緒に、タケルたちの挑戦を見守っていただけたら嬉しいです。
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