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**最強!? モンスター×マスターズ  【モンマス】 Gランク落ちこぼれから始まる、 世界最強の相棒育成譚**  作者: 心瑛タケハル


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第101話 試験合格発表編② ――発表

 中央アリーナの空気は、重かった。


 朝の澄んだ空気とは違う。

 人の息と、緊張と、期待と、不安が――折り重なっている。


 受験生たちは、皆、同じ方向を見ていた。


 前方の高い壇上。

 巨大なスクリーン。

そして、その下に設けられた――

《モンマス核・共鳴壇》。


 ――10時。


 時計がぴたりと揃った瞬間。


 会場の照明が一段落ち、

 白い光が、壇上だけを照らした。


 現れたのは、一人の女性。


 白銀の髪。

 静かな笑み。

 けれど、そこに“隙”はない。


 中央学院学長――

 イリス・グランディア。


「本日は、学長面談の合格発表にお集まりいただき、ありがとうございます」


 声は穏やかなのに、よく通る。

 アリーナ全体が、その声に吸い込まれていく。


「一か月前。あなた方には――ただの試験ではなく、“選別”が告げられました」


 わずかに、間。


「努力は、尊いものです。ですが……努力が“評価”に届くとは限りません」


 言葉が、胸に刺さる。


「ここにいる全員が、価値ある挑戦者です」


 その一言で、少しだけ空気がやわらいだ。


 ――けれど、次に来る言葉を、誰もが知っている。


「そして。今日ここで、結果が示されます」


 イリスは、静かに手を下ろした。


「――発表は、モンマス核を通じて行います」


 スクリーンの奥で、光が走る。


 その瞬間。


 ピリ……と、妙なノイズが走った。


 ほんの一瞬だけ、映像が揺れた気がした。

 気のせいかもしれない。

 誰かが咳払いをしただけかもしれない。


 けれど、タケルはなぜか――背中が冷えた。


(……今の、なんだ?)


 イリスは表情を変えない。


「では、進行を司会に引き継ぎます」


 そう言って、一歩下がる。


 次の瞬間。


「さあさあさあ! 皆さん! 息、してますかー!!」


 場違いなくらい明るい声が、アリーナを切り裂いた。


 派手なジャケットにサングラス。

 マイクを握った女性――DJフレア。


 だが、今日はいつもより“抑えている”。

 テンションは高いのに、空気を壊さない絶妙な温度。


「学長のありがたーいお言葉、胸に刺さった人もいるでしょう!

 でもね――今日だけは、前を向いていい!」


 フレアが、スクリーンを指す。


「ここは中央学院!

 合格発表は、泣いても笑っても――一回きり!」


 受験生たちが、息を呑む。


「そして本日の発表は、三段階で行います!」


 指を三本立てる。


「最優秀合格者!」

「優秀合格者!」

「推薦合格者!」


 ざわっ、と会場が揺れた。


 タケルは、拳を握りしめる。


(……頼む。呼ばれてくれ)


 隣のユウマは、祈るように手を組んでいる。

 アキラは無言で前を見つめ、

 サクラは口元をきゅっと結んでいた。


 少し離れた場所に、エリカとユズルがいる。

 ユズルは、ゴーグルを外したまま、俯いていた。


 ――そして、サトル。


 余裕の笑みを浮かべている。

 その隣の子分Aは、落ち着きなく拳を握ったり開いたりしていた。


「よし。いくよ!」


 DJフレアがマイクを掲げる。


「それでは――みんな。

 モンマスを、前に掲げて」


 その声に反応するように、

 受験生たちは一斉にモンマスを前へ差し出した。


 次の瞬間――


 モンマス核が共鳴し、

 光の粒となって中央スクリーン・共鳴壇へと飛び立つ。


「おお……!」


 周囲から、どよめきと歓声が上がった。


 フレアは、マイクを握り直す。


「――準備ができたようね」


 一拍。


「まずは――

 最優秀合格者!!」


 スクリーンに光が集まる。

 モンマス核が、淡く鳴った。


 次の瞬間、名前が大きく映し出される。


【最優秀合格者】

ルイ=フォン=レーヴェルト


 ――どよめきが爆発した。


「あのレーヴェルト家がいるのか!?」

「今年やばいぞ……!」

「同級生になりてえ……!」


 タケルも、思わず息を呑む。


(ルイ……!)


 壇上の端から、一人の青年が前に出た。


 静かな所作。

 気品が、にじみ出ている。


 ルイは軽く会釈し、短く言った。


「学びます。――皆さんと同じ場所で」


 それだけ。


 なのに、会場の空気が一段上がる。


「ルイ様ぁぁぁ!」

「見て! 今、こっち見た!」

「ファンクラブ作る! 絶対!」


 ざわめきが熱を帯びる。


 フレアが肩をすくめた。


「はいはい! ルイ様タイムは後で!

 次いくよ、次!」


 マイクを掲げる。


「続いて――優秀合格者!!」


 スクリーンの光が増す。

 名前が、次々と表示されていく。


【優秀合格者】

神谷アキラ

桃坂サクラ

遠藤ユズル


 その瞬間。


「……っ!」


 アキラが、珍しく小さく拳を握った。


「やった……!」


 サクラの目が潤む。


「……嬉しい。ほんとに……!」


 タケルは息を吐いた。


(やっぱ二人すげぇ……!)


 そして、ユズル。


 表示された瞬間、エリカが振り向く。


 ユズルは――反応が遅い。

 気づいて、目を見開いて、

 それでも何も言えずに立ち尽くした。


 エリカは笑って、泣いた。


 よかった。

 でも――よかっただけじゃない。


 その表情に、タケルは胸がざわついた。


(……ユズル、受かったのに、喜べてない?)


 フレアが続ける。


「他、優秀合格者は――二十名!!」


 さらに名前が流れる。

 歓声と、拍手と、すすり泣き。


 ここまで来ると、会場の空気は“勝者”の熱で満ちていった。


 タケルは、必死に思う。


(次だ。次で呼ばれる。頼む……!)


 喉が乾く。

 指先が冷たい。


 フレアがマイクを握りしめた。


「――最後! 推薦合格者!!」


 スクリーンが光る。


【推薦合格者】

サトル

子分A

ユウマ


「……っ!」


 ユウマが、両手で口元を押さえた。


「うそ……僕が……?

 僕が、グランディアに……?」


 震える声。

 目に涙が溜まっていく。


「夢みたいだ……」


 タケルの胸が、ぎゅっとなる。


(ユウマ……よかった……!)


 サトルは、顎を上げた。


「当然だよ」


 その隣で子分Aが、顔を真っ赤にして叫ぶ。


「やりましたね! サトルさん!」


「うるさい。……でも、悪くない」


 サトルは小さく笑った。


 ――そして。


 スクリーンの表示が、止まった。


 フレアが一拍置く。


「……以上!」


 その一言が、会場を冷やした。


 ざわ……ざわざわ。


「え……?」

「もう終わり……?」

「嘘だろ……まだ呼ばれてない……」


 次の瞬間。


 あちらこちらで、嗚咽が弾けた。


 泣き声が、滝のように溢れ出す。


 タケルは、スクリーンを見上げたまま固まっていた。


(……ない)


(俺の名前が、ない)


 喉の奥が、痛い。

 息が、うまく吸えない。


 隣で、サクラが言葉を失う。


「タケル……」


 アキラが、低い声で言った。


「……お前は、よくやったよ」


 タケルは、やっと口を動かす。


「ごめん」


 小さすぎる声。


「……いけなかった」


 そのとき。


 少し離れた場所で、エリカが泣きながら笑った。


「ユズル……」


 声が震える。


「わたし、がんばったの。

 でも……とどかなかった」


 ユズルが、目を見開く。


「エリちゃん……」


「あなたは、わたしなんていなくても大丈夫よ」


 エリカは涙を拭って、無理に笑う。


「だから、自信もってね」


 ユズルは一歩踏み出しかけて、止まった。

 言葉が出ない。


 別の場所では、子分Bが膝をついていた。


「サトルさん……すみません。力及ばずでした」


 サトルは、目を伏せたまま言う。


「ああ。……わかってる。何も言うな」


 子分Bは、子分Aを見た。


「……任せたよ」


 子分Aが、ぐっと胸を叩く。


「我がサトルさんを支える。心配するな!」


 会場は、拍手と歓声ではない音に満ちていた。


 泣き声。

 すすり泣き。

 言葉にならない声。


 フレアの表情が、ほんの少しだけ曇る。


 マイクを握ったまま、言葉を探している。


 壇上の奥で、学長イリスが静かに見下ろしていた。


 ――そして、スクリーンの光が、また一瞬だけ揺れた。


 ピリ、と。


 今度は確かに、音がした気がした。


 誰も気づかない。

 気づける空気じゃない。


 けれどタケルだけが、背中の冷たさを覚えていた。


(……まだ、終わってない?)


 こうして。


 推薦入試合格発表は――

 終わるように思われた。


ここまで読んでくださってありがとうございます。


喜ぶ人もいれば、涙を流す人もいる。

合格発表は、どうしても嬉しさだけでは終われない時間ですね。


そして、まだ少しだけ違和感が残っています。

次回、推薦入試編が完結します。


ここまで一緒に読んでくださって、本当にありがとうございます。

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