第99話 試験合格発表前のある日② ――選ばれる者たち
夕方の境内。
提灯に火が入り、縁日の熱気は最高潮に達していた。
「さあさあさあ!!
本日最大の目玉イベント――!」
拡声器越しに、よく通る声が響く。
派手なジャケットにサングラス。
マイクを握っているのは、この縁日の司会者――DJフレアだ。
「チーム対抗・謎解きタッグバトル!
参加条件は簡単! 二人一組で頭を使え!」
観客席がどっと沸く。
「問題は全部で三段階!
途中脱落――容赦なし!」
フレアは指を三本立てた。
「最後まで残ったチームだけが――
最終問題に挑戦できる!」
一拍。
「ただし――」
声を落とす。
「一度行動したら、やり直しはナシ!
触るのも、選ぶのも……全部、自己責任だ!」
ざわり、と会場が揺れた。
「ひらめき勝負!
考えすぎてもダメ!
ノリだけでもダメ!」
マイクを掲げる。
「――さあ!
考える準備はいいか!?」
「おおおおーー!!」
⸻
第1問、第2問と難問が続き、
参加チームは次々と脱落していった。
そして――。
境内の奥。
灯りが少なく、人の気配も薄い一角に、四組のチームが集められる。
DJフレアが、ゆっくりとマイクを持ち上げた。
「……ここで、一度整理しようか」
間を置く。
「最初に参加したのは――
100チーム!」
観客がざわめく。
「だが、ここまで辿り着いたのは――」
フレアは、指を折る。
「――たったの、4チーム!」
どよめきが広がった。
「しかも、共通点がある」
一拍。
「この4チーム、全員――
今開催中のグランディア中央学院・推薦試験の受験生だ!」
ざわり、と空気が変わった。
「……これは、すごいことになったな」
「一握りしか合格しない推薦入試だろ……」
「答えの出し方も、やっぱり違うってことか」
⸻
簡易な木柵で囲われた広場。
中央には、五つの石灯籠が円形に並んでいる。
最終関門 ――灯籠
その前に立つ、四組。
•Aチーム:タケル・ユウマ
•Bチーム:サトル・子分A
•Cチーム:アキラ・サクラ
•Dチーム:ユズル・エリカ
灯籠には、それぞれ札が貼られていた。
――① 真実
――② 虚偽
――③ 運命
――④ 知恵
――⑤ 迷い
そして、看板。
『この中から
正しい灯籠を一つ選べ』
「……シンプルだな」
タケルが腕を組む。
「こういうのほど怪しいのよね」
サクラは配置を見回した。
「制限時間は十分。
一度選んだら、やり直し不可です」
係員の説明は、それだけだった。
⸻
◆ タケル&ユウマ
「“真実”って書いてあるし、①じゃない?」
タケルが即答する。
「でも“正解”じゃなくて“正しい”って言い方が気になる」
ユウマは慎重だ。
「え、じゃあ虚偽?
いや逆に罠か……?」
二人で悩みながら灯籠を回る――
「……あ」
タケルの袖が、うっかり灯籠に触れた。
何も起きない。
「今の、カウントされてないよね……?」
「大丈夫だと思う……たぶん」
タケルは深く考えるのをやめた。
「……考えても分からん!
やっぱ①だ!」
「タケルの直感、信じるよ」
⸻
◆ サトル&子分A
「フッ……こんなの簡単だ」
サトルは鼻で笑い、中央の③《運命》を叩いた。
「派手な名前が正解に決まってるだろ」
「さすがです! サトルさん!」
子分Aが勢いよく頷いた。
次の瞬間、灯籠が淡く光る。
「ほら見ろ!」
観客から「おお……?」という声。
サトルは、勝ち誇った。
⸻
◆ アキラ&サクラ
「“正しい”……言葉が限定されてる」
アキラは看板を見つめる。
「真実と虚偽は対立。
運命は曖昧。
知恵はメタ。
迷いは……」
サクラは⑤を見て、眉をひそめた。
「“選ばせないため”の言葉かもしれない」
「でも、“選べ”と明示してる以上、
選択自体が前提――」
「⑤……“迷い”?」
アキラが口を開きかけた、その瞬間。
「――はい、そこまで!」
DJフレアの声が割り込んだ。
⸻
◆ ユズル&エリカ
ユズルは――
最初から灯籠を見ていなかった。
「ちょっと、どこ見てるの?」
「問題文」
ユズルは、ゴーグル越しに指で三角形を作り、看板を眺める。
一拍。
「それと……フェルマーの定理を混ぜて、クッキングする」
「いやー、これは美味しくなるね」
「さっぱり分からないけど、
ユズルが言うなら間違いないわね」
ユズルは、もう一度だけ看板を見る。
『正しい灯籠を一つ選べ』
「……これ、選ばせる気ないね」
「は?」
「“正しい”灯籠は――
“選ばれない”ものだ」
「つまり?」
⸻
「――タイムアップ!!」
DJフレアの声が響いた。
「さあ!
各チーム、解答をどうぞ!」
⸻
「俺たちは①《真実》!」
「理由は直感だ!」
観客がズッコケる。
「俺たちは③《運命》!」
「一番カッコいいからだ!」
さらにズッコケる。
「⑤……“迷い”」
「“正しい”って言葉がある以上、
“確定”や“断定”を避けた選択肢が一つだけある」
「“選ばせる”ための言葉ばかりの中で、
唯一、選択を鈍らせる名前よ」
観客がどよめく。
「最初の二組は正直ヒヤッとしたけどさ」
「三組目は……ちゃんと考えてる」
そして――。
ユズルは、係員へ向き直った。
――少し、間。
「“正しい”灯籠は、
“選ばれない”ものだ」
「つまり、
この問題の正解は――
“選ばないこと”」
一瞬の沈黙。
次の瞬間、係員が深くうなずいた。
「……正解です」
ざわり、と境内が揺れた。
「え、マジか!?」
「そんな発想あり!?」
エリカは肩をすくめる。
「ほらね。
この子、問題を“解いてない”のよ」
ユズルはゴーグルを外すと我に返り、
慌ててエリカの後ろに隠れた。
「……人、多い」
タケルは呆然と呟く。
「無自覚の天才か……おそろべし」
「勝手に名前つけないの」
サクラが突っ込む。
「でも……タケルにしては、的確ね」
「ひどくない?」
笑いが起きた。
歓声の中――
「お前ら、絶対合格してるぞ!」
「期待してる!」
最終的に、
観客からも応援を受ける四チームとなっていた。
――数日後。
中央アリーナ。
そこで下される判断が、
彼らの未来を分けることを――
このとき、まだ誰も知らなかった。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます!
今回で、『モンマス』は投稿100話目を迎えました!
タケルがモンマスを手にした日から、モチとの出会い、始まりの町での冒険、推薦試験――。
気づけば、みんなでここまでやってきました。
100話まで続けられたのは、読んでくださる皆さんのおかげです。
本当にありがとうございます!
そして次回から、いよいよ合格発表です。
タケルたちは中央学院へ進めるのか。
ここまで一緒に来てくださった皆さんに、最後まで見届けてもらえたら嬉しいです。
ブックマークや評価、いいね、感想などで応援していただけると、これからも走り続ける力になります。
これからも、タケルたちと一緒に冒険を楽しんでください!




