変態神父との生活①
「ジェーン、おはよう。」
「……おはようございます…」
「よく眠れたかい?今日こそは、何処で寝ているか教えてもらうよ。」
「……」
よく眠れてないわあああ!!!
と、朝食が並んだ食卓を星一徹返ししなかった妾を誰か誉めてくれ。そしてこの変態をどうにかしてくれ。キラキラ輝く笑顔がうざい。むかつく。なんでお前は寝不足ではないのじゃ。
教会に来て4日目。両親は未だ帰ってくる気配なし。
妾はこの数日間、かつてない睡眠不足に悩まされていた。勇者だったころの野宿の旅ですら、もっとよく眠れた気がする。言うまでもなく、目の前で優雅にコーヒーを飲んでいる変態が元凶である。
4日前の夜、妾はカラスの行水の如く風呂に急いで入り、変態が来る前にねてしまおうと思った。
『ジェーンの部屋』とハートや花で囲まれたプレートが掛かっている部屋を見つけたが、無視。
こんなの、ここにいますよー変態さんどうぞー
と言っているようなものだ。
絶対はいんない。と決意して、寝る場所を探す。
昔は孤児院や病院代わりをしていたのだろう、部屋は無数にあった。
すこし汚いが、背に腹は代えられない、変態の部屋から一番遠い部屋の固いベッドの上で寝ることにした。
眠りについて、どのくらい経っただろうか。バタン、バタンと扉を勢いよく開け閉めする音に目が覚めた。
「うるさいのう……。こんな夜更けにだれじゃ…。強盗かの…。……はっ!!!!」
あ、やばいの。ここは家じゃあなくて教会。そして変態が一人。
強盗のほうがまだマシじゃ…。そう呟いてベッドから降りて、窓から脱出することを試みる。3階という高さは思ったより怖い。何枚かシーツをしばって長さを作り、窓の枠に端をくくる。
「はぁ…はぁ…ジェーン?何処にいるんだい?今日はお母さん達と離れて、寂しいだろう。一緒に寝てあげるから、出ておいで…。」
隣の部屋から、艶がある声が聞こえてきた。
いらんわーー!!全力で拒否する!!むしろそれが嫌で、隠れておるのじゃ!
隣から、ということはもうこの部屋も危ない。急いで下に降りる。
「はぁ…ジェーン。どこにいるんだ。こんな放置プレイ……。
興奮するしかないじゃないかぁ!!!」
こわいこわいこわいこわい。へんたい、こわい。最後の一言は聞いていません。聞きたくありません。
震える体を抑えて、地面に足をつける。霜が降りていて、裸足の足に薄着だとすこし寒い。
どこに逃げる…?よし、教会にいこう!
こうして、妾と神父の夜の鬼ごっこが始まった。
――――――――――
-そして4日目の朝-
「神父さま、夜に私を探すのはやめてくださいませんか。私は一人で寝る方が好きなんです。」
「そうなのか。でもそれは、君が人肌を知らないからじゃないのか?僕が教えてあげよう。」
「いいえ、結構です。それに私は寝相が悪いのです。」
「そんな、気にする必要はないよ。」
「昔父に、3週間の怪我を負わせました。
そのとき父は、『ジェーンと寝るのは、ライオンの檻に入るのと同じ。もう絶対一緒に寝ない。』と涙目で母に言っていました。」
「…………。」
よっしゃああ!これいったんじゃね?これで今日から妾は安眠できる!!
「そこまで言うならしょうがない。そのかわり、一つ約束してほしいんだ。」
「…なんでしょう。」
「神父さま、じゃあ、他人行儀じゃないか?そう思わない?」
「思いません。」
思わない。『神父さま』で、妾はかなり譲歩しておるぞ。
本当なら『変態くそ野郎』とでも呼んでやりたいのを我慢しておるんじゃ。
即答の妾に、神父は肩をすくめた。
「いいや、僕が気にするよ。一緒に住んでいるんだから、…もっと仲良くしよう。」
「はぁ…」
「よし、いい子だ。
じゃあ今日から僕の事は、
『お兄ちゃん』と呼んでくれ。」
妾→(゜Д゜)ポカーン
神父→(´▽`*)キラン
え、意味が分からないのじゃが。何を言っておるのじゃ、この変態野郎は。
混乱した頭を、深呼吸して落ち着かせる。
安眠とお兄ちゃん、安眠とお兄ちゃん。
妾の中で、天秤にかける。今ならば断る。しかし、4日寝不足の妾にはまともな判断ができなかった。
「……お兄ちゃん…。今日から寝かせてくださいね。」
そのときの神父は今でも思い出せる。目は爛々と輝き、頬が赤く色づく。そして、息づかいが荒くなっていき、だんだん前屈みになってきた。
「……妹プレイ、萌え。」
そう言って神父は食卓から走り去った。
一言いうなら
変態は滅しろ。
久々の更新です。亀更新です…。