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第166話 休暇明けの学園

 無事自宅に到着したことに、私は胸を撫で下ろした。見慣れたモンリーズ家の屋敷は、以前と何も変わっていない。


「お嬢様! ご無事でよかったです!」


 玄関ホールへやって来ると、すぐに私を抱きしめたのはバルバラだった。事前に説明はしてあったが、お父様にセドリック宛の手紙を送るついでに作戦を説明はしていたのだ。それを身の回りの人物に周知していたのだろう。


「ただいま、バルバラ」


「シルヴィオも何ともないですね⁉ もう、この乳母の心臓を潰さないで下さいよ」


 私の後から馬車を降りて入ってきたシヴァを見て、そちらにもバルバラは抱き着く。突然のことにシヴァは驚いていたが、大人しくその抱擁を受け入れていた。

 報告を聞いたのか、玄関ホールでバルバラやメイド達と戯れているとお父様がやって来た。ルネも一緒だ。


「お帰り、リリー。シヴァもいるね」


「ただいま帰りましたわ。お父様」


「ちゃんとお嬢様を守れたようね」


「はい」


 バルバラのような熱烈な歓迎は無いものの、お父様もルネも嬉しそうに微笑んでいる。その顔を見て、やっと帰ってきたんだと私は安心した。


「それじゃ、私の執務室へ行こうか。報告を聞こう」


 お父様の勧めもあって、私達は執務室へ向かった。


「シヴァは荷物の整理と、情報共有があるのでこちらへ」


 ルネに促されてシヴァは私達とは別の部屋へ連れて行かれる。チラッとシヴァの様子を見ると、彼もこちらを見てルネに分からないように後ろ手で手を振ってくれていた。




 一通りの報告を行うと、お父様は考え込む。今後、アマトリアン辺境伯は罪に問われるものの、その時期は未定。まだ書類を集めただけだし、その整理や不足した情報の収集に時間もかかるだろう。

 ロミーナは王宮で保護されているが、アマトリアン辺境伯夫妻はモンリーズ家も敵視するに決まっている。代替わりで弱体化したとはいえ、腐っても辺境伯だ。裁判が開始されるまで、政治的にあれこれ突っかかられてもおかしくない。それか、あえて水面下で動いて何もしてこないか。


「アマトリアン辺境伯と敵対することになったこと、申し訳ありません」


「いや、どうせ罪は白日の下にさらされる。それまでの間、不利にならないように上手く立ち回ろう」


 私を真っすぐ見つめながら言ってきたお父様はなんとも頼もしい。


「残る問題は、直後に起こる婚約解消だが……本当に、後悔は無いね?」


「はい」


 確認され、私は即座に返事をした。お父様は苦笑いをしながらも受け入れてくれる。


「……分かったよ。アレクサンド殿下と話し合って、婚約解消の手続きを進めよう。もうすぐ三学年だ。その一年で、後継者教育を仕込んでいくから覚悟して欲しい」


「分かっています。私、絶対にやり遂げて見せますわ!」


 私が意気込みを語ると、お父様は準備していた封筒を私に手渡した。何かと思い、首を傾げながら読んでみる。


【長旅お疲れ様。こちらは順調だよ。例の話は三学年の卒業パーティの時に】


 アレクサンドからの手紙だ。人に見られても大丈夫なように、ふわっとしたことしか書いていない。それでも、十分私には伝わった。お父様も同じなのか、目が合うと頷いてくれる。

 ゲームでのリリアンナ・モンリーズの婚約破棄イベントのことを思い出す。あの時はリリアンナが糾弾される流れだったが、今回はそうはならないはずだ。イザベラとの婚約の話は、きっと別機会になるだろうから黙っておいた方が良いだろうか。

 そんなことを考えながら、私は期待に胸を膨らませていた。






***






 久しぶりに年末年始を自宅で過ごし、長期休暇を終えた。今日は久しぶりの登校日だ。色々と事件があったし、マルグリータは風邪をひいてしまったしで、なんだかんだ誰とも会えていない。

 休暇明けの学園は、休み中何をしていたのか、レポートは無事完成したのかなどの話題で盛り上がっている。教室に着くと、いつものようにたくさんの生徒に囲まれたイザベラの姿があった。

 今日は羽根飾りの付いた銀の髪飾りを付けている。蜂蜜色の髪は丁寧にカールされていて、立派なドリルになっていた。遠目から見ればなんとも悪役令嬢っぽい。


「明けましておめでとう。イザベラ」


「今年もよろしくね」


 私が声をかければ、ニコニコと返事をしてくれる。久しぶりの再会に、なんだか嬉しくなった。

 髪型に関しては、本人は気にしていないようだ。


「おはようございます」


「おはよう、ヤコブ」


 後ろからヤコブも現れる。そんな彼と登校のタイミングが被ったのか、ひょっこりとメロディが顔を出した。


「おはようございます! イザベラ嬢、リリアンナ嬢。それに、ヤコブ様も」


 ストロベリーブロンドの髪が、汗で額に張り付いている。少し走って来たらしい。満面の笑みで声をかけてくれるメロディはさすがヒロイン。文句なしの可愛さだ。


「おはようございます! 姉上」


 後ろから声をかけてきたのはレオナルドだ。突然のことで驚いてしまうが、彼はそんなこと気にもしていない。


 レオナルド、イザベラ、ヤコブ、メロディ。二学年目のおなじみの面々が集まり、なんだか気が緩んでしまう。心置きなく休暇中の話を話をしていた所で、イザベラが口を開いた。


「そういえば、三学年のロミーナ・アマトリアン辺境伯令嬢が休学届を出したって本当ですの?」

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