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お台場ダンジョン2

「あれ?ようやく稼働している文明の利器の姿を確認できたね。あれは偵察用ドローンかな?」


僕の言葉にミィが上空を見ると、十字型の物体が空を飛んでいるのが確認できた。


「偵察ということは、斥候使用の魔道具とか使い魔のようなものかの?」


「そうだね。近い所で言うと魔道具と呼ぶのが良いかもね。」


「どうするのじゃ?鹵獲するのか?」


「どうせ今日からお台場ダンジョン攻略するからここを離れるし、この結界利用して確保した地域をそのまま放置もできないから、彼らに管理してもらえば良いんじゃないかな?日章旗ついてるから、おそらくは自衛隊関係だと思うから。」


そんなことを会話して、今後のことについての相談をしながら、彼らはゆっくりと食事を取り、食後にミルクと砂糖たっぷりなお子様向けカフェラテを飲み終えると、ドローンに向けて手招きをした。


ーーー

「どうしますか?接近しますか?」


ドローン捜査員の言葉に、土方は即座にゴーサインを出した。彼らの言葉は理解できるものではなかったが、その態度からこちらに害をなす存在とは思えなかった。


埠頭に着陸したドローンの前にしゃがみ込む形で二人の子供が笑顔を見せていた。


「あ〜あ〜、私の名前はレンと言います。こちらはミィです。日本語を喋るのは久しぶりですので、聞き取り難い部分もあると思いますがご容赦下さい。」


「「「日本語だ!」」」


管制室に驚きの声が響き渡った。すぐに土方が代表して彼らに答えた。


「大丈夫だ。間違いなく通じている。こちらは日本国防衛軍関東方面前線基地管制室だ。私は防衛副大臣の土方という。よろしくお願いする。」


その言葉に少年は一瞬身を引くような動作を見せたが、すぐに返事を返した。


「最初からお偉いさんとは、ビックリですね。時間も無駄にできませんから単刀直入に説明しますね。僕達はこれからお台場にある特級ダンジョンを攻略しに向かいますので、ここを離れることになります。」


その言葉に驚愕したのは管制室にいた一同だった。


「たった二人で、たった二人で突入するのか?大丈夫なのか?」


こちらを心配するような言葉に、少年は軽く笑みを浮かべて答えた。


「やはり日本人としての気質は変わってないのですね。安心しました。何者かも判らない存在の安否を心配してくれる人達は、特にお偉いさん方の中には普通見受けられませんよ。」


「そんなことは当たり前だろ!年端もいかないような子供達が無茶をするのを黙って見ていることなんて出来るわけないだろ!」


土方の怒ったような声に


「僕達は、自分の安全を確認するためにスラムの子供達を先行させて様子を見る大人達を、嫌と言うほど見続けてきましたからね。」


落ち着いた声で少年は答えていた。


「では、尚更僕達が確保したこの地域は、あなた達に託したいと思います。ここの地点を中心に魔道具による簡易ドーム型結界で半径十キロ圏内を覆っています。運河により隔てられている部分にいた魔物は殲滅していますが、陸続きになっている部分は、目に付いた大型魔物や集団しか討伐してありませんから、十キロ圏内全てが安全とは言えませんが、かなりリスクは低下したと判断します。もしこの場所を維持するということであれば結界発生用の魔道具を残していきますがどうしますか?」


「「「うぉぉぉぉぉ!」」」


歓声が管制室に響き渡っていた。


「ぜひ、ぜひともお願いします。上の者がどれだけ反対しても、ここにいる軍だけになっても必ず維持するように努めます。ぜひ、ぜひ、お願いします。ここにいる部隊員の多くは、その地を故郷とする者の血縁なんです。」


そう答えながら、土方は自分個人の判断で前線の軍に属する軍艦全てに出撃命令を出した。


「そうですか。出撃するための準備もいるでしょうから、僕達のダンジョンアタックも一日日をずらします。前線部隊の基地はどこにありますか?横浜ですか?横須賀ですか?」


「横須賀です!」


「了解しました。今日は東京湾内に居を構える海竜や、巨大鮫などの大型魔物を駆逐しますから、明日六時に出港して下さい。お願いします。」


そう言ったあとで、少年と幼女はドローンから離れていった。


それからの管制室は土方も含め良い意味で大混乱に陥っていた。念願の東京進出のための橋頭堡を手に入れることができるのである。その興奮はあっという間に前線基地全体へと広がり、必要となるであろうテントや食糧などの備蓄集めに皆が奔走した。


「半径十キロなら大井埠頭沖から晴海埠頭の向こうまで巨大魚や魔物は居ないということだろ。なら、水産物の確保も可能になるということになるよな。漁業のための準備も必要になるぞ。」


基地の中での話題は、そのことで持ちきりだった。


「大井の車輌基地や大井競馬場の周辺も、穀物生産に向いているだろうから、農業の為の準備も必要だ。必要な資材や物品をまとめろ。結界で覆われて魔物の心配がないならそんなことも可能になるということだ。」


そんな会話が基地の至る所で交わされ、翌日の六時には全ての艦船の出航準備が終わっていた。


昨朝早くに、土方副大臣からの連絡があり、大慌てで会議を抜け出し、夜遅くに横須賀に到着した近藤は度肝を抜かれ、その事実を素直に受け入れることができずにいた。


「本当に大丈夫なのか?」


その不安を吹き飛ばすように元気な土方の声が管制室に響き渡った。


「悩む暇などありません。永久に取り返すことができないと思っていた東京をこの手に取り戻すチャンスなんて、今後永久に訪れることはありません。今しかないんです。今やらなければいつやるんですか!」


「し、しかし、上の者の理解を得る為には時間が…」


近藤の言葉に、土方はキレ気味に言葉を返した。


「上の者達が行動に移せないならば、ここにいる軍の隊員の中で志願する者だけで行動に移させて頂きます。義勇兵となって私が率いて参ります。既に護衛艦9番、11番、13番、21番、25番の艦長達も賛同してくれました。既に空母型護衛艦の9番には、ヘリコプター空挺部隊、漁業、農業のための部材、一年分の食糧、燃料などの積み込みも終了しています。」


その土方の言葉に近藤も動いた。


「皆の決意が硬いのは了解した。横須賀基地は必要最低限の部隊員を残して、総員品川埠頭を始めとした東京湾岸へと移動する。責任は私が取る。総員活動を開始せよ。」


もともと燃料や食糧補給は殆ど無く。陸上の燃料タンクなどは殆ど空の状態であり、周辺の地域にも人は残っていなかったために、移動を決意すれば、準備が整うのは早かった。


全員が徹夜で作業を続け、どうにか準備を整えられた横須賀前線部隊は、どう説得しても参加を望まない部隊員二百人ほどを乗せた一隻の護衛艦を除いて、その殆ど全てが品川埠頭方面へと向けて出航した。


少年の言っていることが現実なら、もし品川埠頭を中心として、半径十キロの結界が張られているなら、羽田空港の使用も可能となり、東京駅、皇居は言うに及ばず、新宿都庁までもがその範囲内に治まるはずであった。


しかも、その結界内に既に大型魔物が存在しないのであれば、我々はかつての首都を取り戻すことができる可能性があると言えた。ただ範囲内である明治神宮にもう一つの特級ダンジョンが残されていることも考慮すると、決して安易な気持ちではいられるはずもないが、千載一遇のチャンスとしか言えないと土方は考えていた。

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