お台場ダンジョン
膝をついたように崩れ落ちたユニコーンガンダムの傍を通り抜けた先にある、かつてのテレビ局の階段付近に出来たお台場ダンジョンの入り口には、オークやオーガ、ゴブリンが群れをなし、周辺には小さな集落のような物が幾つも形成されていた。
暗く開いた大きな穴からは、次から次へと魔物が姿を現しており、既に溢れた状態が継続していることが容易に想定された。
「かなりの魔物が溢れているね。規模的には特級で間違いないかな?」
「そうじゃの、先ずは入り口付近の魔物を殲滅してから突入じゃの。」
「どうせ、綺麗に片付けないといけないから、入り口周辺は燃やし尽くしてしまうね。」
そう言って、ダンジョン入り口上空へと舞い上がった僕は、神級火魔法の一つであるインフェルノを放った。
直径数十メートルにも及ぶ巨大な白に近い色をした火球は、地上へ到達すると同時に薄く広がり始め、周辺に向かうにつれて赤みが混していった。
その光に触れる物は、最初は一瞬にして蒸発するように消え失せ、中心から百メートルほど離れた場所でも街灯は溶けるように崩れていった。
その炎は五キロ先にまであっという間に広がっていき、海や運河で隔てられたお台場地区は全て火の海となり、炎に包まれた建物はその殆どが融けて崩れ落ちており、その場は大規模火砕流が襲った大地のように真っ赤に染まっていた。
「相変わらずエグい魔法じゃの。しかも、それでいて魔力は大して消費しておらんのじゃろ?」
「そうだなぁ、あと千回くらいは連発可能かな?だから、無尽蔵というわけではないよ。」
二人がそんな会話を交わしている間にも、ダンジョンのゲートからは魔物が出現し続けていたが、どの魔物もそれと気づかぬうちに消滅しているように見えた。
その日僕らは対岸の埠頭だった場所に拠点を設置することとし、 対岸の灼熱地獄を眺めながら夕食を食べていた。
「こうしてると、あの頃のことを思い出すよね。」
「せやの。あの頃はお主の理不尽な魔法に呆れながら、儂は見ていることしかできんかった。あれは反則じゃ。」
食後のミルクと砂糖をたっぷり使った珈琲を口にしながら、ミィがしみじみと語っているのを聞きながら、僕も必死だったあの頃のことを思い出していた。
「あぁでもしなければ、僕はキミの所に辿り着けもしなかったからね。仕方ないと思いながら、あれらの大魔法を使ってた。」
そう言って、僕も同じような極甘なカフェラテを口に含んだ。
「魔人達には、人の心も理解できない神の操り人形、死神ドールとも呼ばれてたけど否定できないよね。」
「今だから言うがの。お主の見た目は凄く可愛らしかったから、実は隠れファンも多かったんじゃよ。あ奴らは早々に戦線を離脱したの。まぁ、その分アンチも増えたがの。」
そんな他愛もない会話をしながら、暇な時には埠頭から糸を垂れ、燃え盛る対岸を眺めていた。本屋で手に入れたコミックやアウトドア用の本を読んだり、料理本を見ながら調理して時間を潰し、火勢が衰えるのにはまだ当分の時間が必要と思われたが、切羽詰まった理由もないので、僕達はそこでゆっくりと休み、これからの探索に備える為に、保存食や料理を次から次へと作成していった。
拠点として作成した1LDKの拠点は過ごしやすく、五十年ほど経過していてもベッドの柔らかさは、ミィの世界のものとは比べ物にならず、水魔法と火魔法を応用したお風呂も十分満足できるもので、お風呂やトイレの排水は大地に垂れ流していたが、一日一度はクリーンの魔法を大地に使用して、清潔を心がけていた為に、匂いに悩まされることもなかった。
台場はそのまま燃え続け、十日ほどしてようやく火の手は収まりを見せ始めていた。
「そろそろ行こうかな。準備はできてる?」
「誰に聞いておるのじゃ?そんなことは口にせんでも判るじゃろ。」
僕達はホームを空間庫に収納し、食糧や衣服を確認すると、周囲を片付けた後に、埠頭に残っていた魔物を全て殲滅し、埠頭に架かっていた橋を落とした。
「これでこの埠頭に来る魔物は、泳いで渡ってきた奴らと、空から来た奴らだけになるから、餌のことも合わせて考えると、それほど魔物が溢れることは無いだろうね。でも念の為に魔物除けのドーム型結界を張っておくね。」
「周辺の埋立地の魔物も、かなりの数を駆除したせいか、半径五キロほどの範囲には魔物も存在せんからの。先ずは大丈夫じゃろ。儂も以前のようにとはいかんが、こちらに渡ってきたときの倍くらいには力を取り戻せたからの。準備は万端じゃ。」
「じゃあ、行こうかな。」
そう言って、僕はいつものようにミィを肩に担いで台場へと飛び立った。




