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明治神宮ダンジョン3

「さてさて、このダンジョンのラスボスは何様なのかな?」


少し先程からハイになっている僕が軽口を叩きながら扉を開けると、渋い感じの低い低音の声が頭の中に響いた。


「ほぅ、久方ぶりの来客は子供三人と雷氷狼か…リーダーはお主か?少し話しても良いか?」


古竜を思わせる竜が僕に話しかけた時にミィが口を挟んだ。


「儂はミィという。お主の名前を聞いても良いか?一万年程前に似たような者を見たことがある。」


「ほぅ、一万年程前というと、我が宙を彷徨っておった頃か?あの頃はまだやんちゃだったから迷惑をかけていたかもしれん。」


古竜は少し戸惑うような反応をして、思案に暮れるような顔を見せ、ミィの顔を失礼なくらいジロジロと見たが、特に思い当たるところがなかったようで、その質問に素直に応じた。


「我の名前はリーゼンベックという。古の火山のマグマより生まれた竜神の一柱じゃ。」


その答えを聞いて、ミィは口角をクイッとあげて、笑いながら応じた。


「やはりな、儂の昔の名前はミシエルじゃ。覚えがあろ?」


「…ミシエル……様っ!!」


そう叫ぶと同時に、その古竜は五体投地してミィの前に土下座した。


「も、申し訳ありません。いかに姿が変わろうと大事な恩人であるミシエル様に気づかないことなどあってはならぬことです。この身をどのようにされても文句はございません。」


僕とメギドは茫然とその三文芝居の観客となっていた。二人の話によれば一万年前にミシエルの地を訪れたリーゼンベックは、当時のドラゴン族の治める国を蹂躙したらしく、困り果てたドラゴン族の王より相談を持ちかけられたミシエルが一蹴して、三千年ほどの間、パシリとしてこき使ったらしかったが、彼の生まれた星に問題が発生したとのことで帰郷することになったらしかった。


「しかし姉御、お若くなられましたな。見違えましたぞ。」


僕は思わずツッコミかけたが、どうにかスルーすることができた。


「お主がここにおるということは、ダンジョンマスターはお主に縁のある者か?お主の帰郷の原因と何か関わりがあるのか?」


「姉御、その通りです!」


ミィは無い胸の代わりにお腹を軽く突き出してふんぞり返っていた。


「ここのダンジョンマスターは、我の生まれた星に数百万年ぶりに新しく誕生した自然神です。」


「ん?お主も自然神ではないのか?」


「いえいえ、我などは竜神といっても自然神と比較すれば半神のようなものです。比較になりません。」


「それ程貴重な存在である自然神が、なぜにこんなダンジョンに封じられておるのじゃ?我が納得いくまで説明せい!」


「それでは、先ずは彼女の本質から説明せねばなりません。」


「ん?死を司る死神(しがみ)ではないのか?」


そのミィの言葉に、リーゼンベックは静かに首を振った。


「確かに彼女の誕生と同時に、我が星の生きとし生ける者全てがその活動を停止しました。動ける者はアンデッドを除けば一部の神のみ、力の弱い神は人と同じく活動を停止しました。」


その言葉に疑問を覚えた僕は、即座に口を挟んだ。


「待って!死んだんじゃなくて、活動を止めた?もしかして、時神(ときがみ)か!時神が生まれたのか!」


僕の言葉にリーゼンベックは小さく頷いた。


「さすがミリエル様と行動を共にする方です。その通りです。本来は宇宙や星の誕生の時くらいにしか生まれない自然神として比較にならないほどの力を持つ時神が生まれたのです。時神は神や人の子として時折り生まれますが、彼らの力は弱く、誕生時に迷惑をかけると言ってもたかが知れています。ですから対処も可能で、成長を上手に誘導してあげれば通常の神の一柱として活躍することも可能になります。しかし彼女の力は度を超えていたのです。彼女は星中の生命活動を停止させ、更には自身の生命活動をも停止させたのです。」


その頃には、僕達はすっかり彼と打ち解けており、人形(ひとがた)となった彼とテーブルを囲んでティブレイクしながら会話を続けていた。


「他の神が世の理を遮断する結界を張ってみたりしましたが、彼女の力はそれ以上に強く、結界が用を足していないのは周りの生体の状況を見ても明らかでした。生命活動停止しているなら空間庫への収納も可能だろうと、一人の神が試みましたが、収納と同時に彼は生命活動を停止し、彼女は外へと放り出されました。更に試行錯誤を続けた神達は、どうやら生命活動を停止した生物は他の星へ移動させることで復活することが判ると、あのクソ神共は赤子の世話を私に押し付けて、自分に従属する者達だけを連れて星を出ていきました。そして星に残されたのは、私と赤子と不死系の魔物達だけとなりました。」


「ヒドい!ヒドすぎるのじゃ!そんな輩を神とは呼べん!魔物にも劣る奴らばかりじゃ!その場に我がおったなら一人残らず全てを皆殺しじゃ!」


自分の境遇とも重ねたのか、メギドが泣きながら抗議していた。


「お嬢ちゃん、ありがとな。そんだけ怒ってくれるだけでも我はありがたいよ。」


そう言って、リーゼンベックは涙を軽く拭って話しを続けた。


「そして数千年が経った頃、その腐った神達がヘラと名乗る女神を連れて我が星へと戻ってきたんです。そいつが『彼女をダンジョンコアとして封じることができれば、その影響を遮ることができる。その場合、もちろんこの星のダンジョンに封じるのでは危険が大きすぎるから、他の犯罪者の星に封じれば良い。』とヘラヘラ笑いながら、極々簡単なことのように提案してきたんです。我はその瞬間にブチ切れてしまい、激怒したまま闇雲に全力をもってその女神に抵抗しようとしたのですが、その女神に同行していた数人の男神に簡単にボコボコにされ、気づい時にはドラゴンゾンビとしてこのダンジョンの最下層に封じられていたんです。」


「弱いの、弱すぎるのじゃ。たった数人の神にボコされるようなひ弱な修行はさせておらんかったはずじゃが。」


ミィの激怒の方向に、再びリーゼンベックは五体投地した。


「でも、今までの説明で、僕達にも判ったことがある。僕達の星にこの特級ダンジョンを乱立させたのはその女神の一派だということ、それは間違いないよ。そしてメギドをダンジョンに封じた奴らとも絶対に関わりがあるはずだ。」


僕のセリフが終わらぬうちに、メギドの全身から虹色のオーラが噴き上がっていた。ケリをつける相手がはっきりしたことで、ダンジョンに封じられた時の怒りが果てしなく再燃していた。


「おいトカゲ!そのヘラという女神の姿をしっかりと頭に浮かべるんだ。あとは我が勝手に抜き取る。その取り巻きの奴らの姿もできるだけ思い出せ、出会った時に即座に八つ裂きにしてやるのじゃ。」


メギドの身体は急速に成長し、あの時のボンキュッボンのスタイルへと変化し、リーゼンベックのボス部屋を彼女のオーラが覆い尽くしていた。あまりの凄まじさに彼の全身からは冷や汗が噴き出し、全身の震えが止まらなくなっていた。


「こら!」


僕のメギドの後頭部へのハタキが炸裂し、


「へっ?」


と声を漏らし、メギドはプシューと音を立てて全身からオーラを更に噴出させて、ボンキュッボンの大人の女性は瞬く間に元の幼女の身体へと縮んでいった。

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