三国会談2
「それでは、第一回三国東京会談を始めたいと思います。関係者の方々は隣の部屋へとお移り下さい。」
日本国防衛軍の制服とメイド服を合わせたような衣装を身に着けた女性の声が広間に広がり、数名のメイドがそれぞれの国の担当達を隣室の会議場へと案内していった。
上座には智仁天皇陛下が座り、右隣にはテキが着席し、左隣にはレンが座った。レンは下座が良い、席がなければ立ってても良いと言ったのだが、近藤やタマモ様がそれを良しとはしなかった。ミィとメギドはレンの背後に座っていたが、ウェストリアは遠慮したようだった。
左側は上座から順番に近藤、土方、沖田と座り、右側はタマモ、シルク、ミライヤの順番に腰を降ろした。
一番の下座に座るスミスは上座に座る幼児が智仁天皇と推察したが、左右に座るどちらがレンかは判らなかった。スミスの秘書と筆頭護衛官は彼の後ろに立っていた。
「長い話になると思いますので、秘書と護衛官の方も椅子に着席して貰えませんか?初めての場所と相手で落ち着かないかもしれませんが、僕も後ろの二人も本気を出すことなくこの程度の島国ならば五分もかからず消滅させることができますから、警戒する必要は全くないですよ。」
どこが警戒する必要はないだ。そこまでの化け物と同室しているというだけで緊張するに決まっているだろと思ったスミスだったが、言っていることに嘘はないとも理解できていたので、後ろの二人には座るように支持をした。実際に護衛官の方は、既に立っていられないくらい真っ白な顔をしていた。
「ありがとうございます。それでは早速第一回三国会談を開催したいと思います。司会は現在のこの地球の状況を一番よく知る私めが務めさせて頂きます。先ずは簡単な自己紹介をさせて頂きます。五十年前に異世界へと召喚され、そこで五千年ほど過ごし、最近この世界へ戻ってきた元日本人レンといいます。無礼な所も多々あると思いますが今日は宜しくお願い致します。」
その挨拶だけでスミスの頭は混乱した。あの外見で五千歳を超えていることも信じられなかったし、異世界帰りの日本人ということも理解できなかった。
「それでは最初に各自の簡単な自己紹介をして頂きたいと思います。」
そのレンの言葉に続いて、それぞれが名前と各国での役職を紹介していき、最後にレンの背後に居た二人が口を開いた。
「我は惑星テラハ十二神の一人であり、アルマキア獣王国の守護神を務めるメギドである。現在はレンの従者、将来の伴侶として共に生きておる。レンに仇なす者は我の敵であることを十分に理解せよ…」
そこまで喋った時点でレンが突っ込んだ為、説明はそこで終わったが、そのメギドを押しのけてミィが立ち上がった。
「ミラホリア星団創世神と対になる魔神であったミィである。このレンにより自らの運命の束縛から救い出され、今はこうして共にある。レンは儂の全てであり宝である。いつか真の子宝に恵まれることを祈っておる…」
その時点で突っ込みが入り、説明はそこで終わった。
周りの人間達は、テキも含めてその情報に驚愕していた。自分達がその存在を全く知ることのなかった神という存在が、今こうして目の前にいることが信じられなかった。
「はい、この二人のことはスルーして早速議題に入りますね。合衆国代表のスミスさん、あなたと米国がこの真日本国とアルマキア獣王国をどのように評価しているかを教えて頂けますか?」
突然の指名に、スミスは一瞬戸惑ったが、想定内の質問であった為にスラスラと答えることができた。
「最初ここに来るまでは、真日本国に対する評価は、日本国政府に不満のある部隊によるクーデター部隊を念頭に置いていましたが、真の天皇である智仁天皇陛下の存在、生活基盤の整備なども含めた十分な軍備と国民を守ろうとする意思、将来を見越しての戦略の構築など、あらゆる面で国家として認定して良い、逆に支援してほしい存在だとその評価を改めました。そして、アルマキア獣王国への評価は、最初はこの世界への侵略者の可能性が否定できない存在でしたが…」
そこまで語ったスミスの背筋に冷や汗が流れた。前を見ると獣王国の三人以上にレンの背後のメギドからの殺気が凄まじく、身体全体がガタガタ震え、顔面は真っ白となり血の気が失せていた。
「人間よ、それ以後の言葉は慎重に口に…」
そこまでいった時点で、レンの突っ込みが入り、メギドは頭を抱えて涙目になっていた。
「お気にめさらず、言葉をお続け下さい。」
そのレンの言葉にホッと息を吐き、スミスは言葉を続けた。
「配下の者から、彼らもまた今回のダンジョン出現に伴う被害者であることを教えられました。本来それだけの軍備と備蓄があるならば、侵略という手段も選べたはずであるのに、それを選ばず我々地球の人間達に手を差し伸べてくれたことには感謝しかありません。」
そこまでの説明を聞いて、メギドや獣王国の三人の殺気も失せていた。
「合衆国は、真日本国とアルマキア獣王国を正式に国家と認定し、その日本連合国の成立を歓迎します。そして日本連合国が成ったあかつきには、正式に合衆国と国交を結んで頂けたらと考えております。海に大きく隔てられた両国ですが、この訪れた災厄に手を携えて立ち向かっていきたいと考えますが、いかがでしょうか?」
智仁天皇、テキが顔を見合わせ納得したように首を縦に振ると、それを見た近藤達も頷き、獣王国の三人はメギドに視線で確認を取ると笑顔を見せた。
「どうやら三国政府全ての方々が満足する提案であったようです。それでは三国間での国交は成立したと考えます。並びに日本連合国も合衆国は承認したと考えてよろしいでしょうか?」
スミスが大きく頷いたのを確認してから、レンが新たな提案をした。
「この日本連合国は、あくまで日本国内に限定した活動、行動の制約になるのですが、現在の地球にはあまり時間的に猶予がありません。早急にダンジョンに対応していく必要があります。それで提案なのですが、真日本国、アルマキア獣王国、合衆国の三国で新たに太平洋条約機構、英文字で表するならNorth Pacific Treaty Organization を創立しませんか?魔物やダンジョンからの「集団防衛」、「危機管理」及び「協調的安全保障」の三つを中核的任務として、加盟国の領土及び国民を防衛することを最大の責務とした組織です。いかがでしょうか?」
その提案に興奮したスミスの全身に寒ボロが出て、身体が小刻みに震えていた。喉から手が出るほど飛びつきたい提案だった。しかし代表権を持つ自分であっても、この場所で即座に同意することは難しい案件であった。
「もちろん、今の各国家に他国の援助ができるほどの軍隊は残されていないことは重々承知しております。ですから現在の状況での共有する武力はここにいる三人。私とミィとメギドとなります。私達の拠点は舞浜に建設する予定ですから、そこを拠点として世界に遠征することになりますね。」
その言葉にスミスは絶句した。地球規模での活動に疑問を持ったこともその一つだった。
「私達三人は空も飛べますし、ここから合衆国程度の距離であれば、瞬間移動も可能です。距離的制約はありません。」
「ま、まさか…」




