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ある提案

「こうして直接顔を合わせてお話するのは初めてですが、レンです。今日はよろしくお願いします。」


僕の言葉に制服を纏った三名の防衛軍のメンバーは表情を硬くしながら自己紹介を始めた。


「私が日本国防衛大臣近藤勇です。名前の由来はもちろん新選組隊長です。よろしくお願いします。」


「私は副長、もとい品川前線部隊副隊長の土方俊美(さとみ)です。お世話になります。」


「僕は土方副長のパシリつまり秘書の沖田蒼士(あおし)です。よろしく。」


その言葉に二人の上官は少し顔色を変えたが、僕の機嫌が損なわれないことを確認するとホッと息を抜いた。


「じゃあ、今度はこちらですね。少し説明したいこともあって大所帯になってしまいましたが、隣の…」


僕の言葉を遮って、六歳くらいの幼女に見えるミィが一歩前に出た。


「ミィじゃ。レンの許嫁(いいなずけ)であり本妻じゃ。よろしくの。」


それを聞いた三歳ぐらいの三尾の狐獣人が、後ろからミィの髪を引っ張った。


「我こそが本妻じゃ、お主なんぞ妾で充分じゃ。」


そんな喧嘩を始めた二人を、くるくる巻き毛のもう一人の幼女が蔓で巻き上げて後ろへと下がって行くのを三人が眺めているのに気づき、僕は彼女達二人が台場ダンジョンの元主のメギドとウェストリアだということを説明したが、沖田という人の目がまん丸になったのには少し驚いた。


「そして、こちらの三人が…」


華奢な高校生ほどの少女とゴツい体格の戦士が、間に小学生ほどの巫女衣装を身に纏った少女を挟んで一歩前に出て、自ら口を開いた。真っ先に口を開いたのは真ん中の少女だった。


「私はアルマキア獣王国第三十二代女王タマモです。隣にいるのは私の筆頭従者のシルク、それと近衛隊隊長のミライヤです。よしなに。」


その説明に三人はポカーンと口を開けたままになってしまったので、僕は慌てて補足説明をした。


「突然の情報に戸惑いもあるでしょうから、僕から説明させて頂きます。ここがそうだから他もそうとは言い切れませんが、あの特級ダンジョンには多くの魔物だけでなく、下層には異世界の神とその配下となる従者達が封じられています。」


僕は三人の反応を見ながら更に言葉を続けた。


「台場ダンジョンは、十層まではゴブリンキングを頭とした亜人達が支配しており、二十層までは雷氷狼を頭とした獣型の魔物が支配していました。しかしこれらの魔物は全て滅しましたので、二十層までは既に消滅しています。これは神の声の伝えた通りです。ここまでは良いですか。」


三人の頷きを確認して、僕はそのまま説明を続けた。ミィやメギドが煩くなりそうだったので、背後にテーブルを出し山盛りのお菓子とジュースを出すと、ウェストリアやタマモも喜んで貪りついていた。彼女達の世話はシルクとミライヤに任せた。


「三十層より下層は、既にアルマキア獣王国の支配にあり、そこでは魔物は殆ど全て駆除されています。更に五十層より下層では、野菜や果物、穀物の栽培が行われており、更に牛、鶏、豚などを飼育していますので、その産物の輸出も可能です。」


その言葉に三人の顔色が一斉に変わり、近藤が即座に喰らいついた。


「輸出が可能ということは、それを私達に提供する意志があると判断して良いのか?」


「もちろんです。しかし、それには条件があります。」


「アルマキア獣王国を国として認め、国交を結べということですか?」


即座に返ってきた土方の言葉に、やはりこの人は話が通じると僕は感心した。


「日本国政府が、かつての自国の領土に新たな国が興るのを容認すると思うか?」


その質問は、僕ではなく彼女の隣にいる沖田に向けられていた。


「全く不可能とは言いませんが、限りなく低く、もし認めてもかなりの譲歩を要求するはずです。」


「彼は?」


僕の質問に、彼は自らの口で答えた。


「私は先日まで、日本国首相の岸多の秘書を務めておりましたので、彼らがどんな性格でどんなことを考えるかは手に取るように判ります。おそらくは品川前線部隊に命じて、アルマキア獣王国を攻め落とし、支配下に置けと命ずるはずです。」


その言葉に、背後からブワッとした殺気が巻き起こった。その余りの気配に三人の身体は一瞬竦んだように見えた。


「で、解決策は?」


僕はそんなことなど無視して、土方さんに話を続けるように促した。


「最も有効と思われる策が一つありますが、それにはあなたの協力が不可欠になります。」


「判りました。やりましょう。」


僕の言葉に彼女はさすがに驚いたように見えた。


「あなたに魔眼があるように、私には神眼があります。あなたが考えていることはある程度理解できています。新国家の樹立、とても素晴らしいと思います。民のことを考えずに己の欲望のみを優先するものなど政治家とは呼べません。そんな人間が頭にいる国ほど不幸な存在はありません。」


僕の言葉に彼女は立ち上がって僕の両手を取った。


「よろしくお願いします。哀しいことにこの国の民を引っ張って行くためには御旗が必要です。旧皇居にある一級ダンジョンには、とある皇族の家族の方達が閉じ込められているという情報があります。その方を救って頂きたいのです。今の日本国政府の掲げる天皇はもう老齢で、男子の後継がおりません。本来の皇統を受け継ぐ為にも是非ともよろしくお願いします。」


それを聞いた僕は、とりあえずカレーやカツ丼といった皆の夕食を準備してから、箱型住居を取り出して獣王国の三人を案内し、彼らに二、三日ここで防衛軍の人達とこれからのことを話し合いしながら待っていてほしいと言い残して、ミィとメギド、ウェストリアを連れて直ぐ様に皇居一級ダンジョンへと飛んだ。


そのダンジョンは五十層からなるダンジョンだったが、知的な魔物は存在しておらず、四人で片っ端から殲滅していき、三日で僕らは最下層に到達して、攻略済みの階層は全て消去した。そのダンジョンの攻略を伝える神の声は、土方さんからの連絡ではどうやら国内限定らしく、日本国政府からの連絡が鬱陶しいと愚痴を零された。

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