お台場ダンジョン13
二人より先に起きて、朝食の準備をする時に少し思うところがあって、和食のものを準備した。
白米、自家製ふりかけ、味付け海苔、鮭の塩焼き、揚げと大根の味噌汁、香の物、生卵、佃煮盛り合わせをテーブルの上に並べた。
「今日は和食かの?匂いですぐに分かったぞ。久しぶりだから嬉しいのぉ…あれ?醤油で煮込んでるような匂いしたから煮魚か角煮でもあるのかなと思ったが…まぁ非常食になんか作ったのなら、また食べれるしの、楽しみが増えて嬉しいの。」
そんなミィの言葉を聞いて、こいつ鋭いなと感心しつつ、まだ布団にくるまるウェストリアを起こし、椅子に座らせたが、料理を見るやいなや彼女はカッと目を見開き、片っ端から食べ始めた。いくら神が何も食べなくても生きていけるからといっても、食の楽しみはなくてはならないものの一つと言えた。
「さて、開けるよ。」
十分な食事を取り、体調も万全に整えた僕達は巨大な白い石門の前に立ち、扉にある銀色のプレートに手を触れると、キィーンという高周波の作動音が響き、中心部から左右に扉が移動を始め、内部の真っ暗闇だった空間に僕達の背後から光が差し込むと同時に、両サイドの壁が白く輝き始めた。
一辺が三百メートルほどの立方体の空間の中央部分に、直径五十メートルほどの水晶のように透き通った球体が豪奢な台座に据え付けられているのが目に入った。
「メギドちゃん!」
その球体が目に入ると同時に、ウェストリアが声を上げながら台座の元へと駆けつけ、台座に飛び乗るとその球体を慈しむように抱きしめた。
そこには九本の尾を持つ真っ白な狐型の獣神が丸々ように横たわり、その身体に突き刺さった数十本の管が彼女の身体から銀色に輝く、おそらくは神素と呼ばれるエネルギーを採取していることが判った。
「…惨すぎるね。おそらくはこのダンジョンを維持するためのエネルギーとして利用するために、彼女の持つ神素を燃料炉の代替としているのだとは思うけど、辛すぎるよね。」
「何割かの管は機能してないように見えるが、あれは?」
「おそらくは消滅させたダンジョンフロアに繋がる管だと思うよ。既に消滅させたから神素が必要なくなったんだよ。」
久しぶりにイラついているらしい僕は、球体にしがみついているウェストリアに離れるように指示し、その世話をミィに頼んで入り口近くまで避難させると台座の前に立ち、彼女に刺さっている管を遠隔で操作し、その一本を抜いた途端、空間に赤黒い靄が出現し、それはみるみるうちに巨大な真っ赤な龍へと姿を変えた。
「彼女を救おうとすると、作動するトラップみたいなものか…丁度よいお前を燃料炉に変えてやるよ。」
高熱の複数の炎弾や火焔のブレスを吐きまくる赤竜を、僕は大地から無数の鎖を出現させて捕らえ、それで赤竜を雁字搦めにして固定すると、メギドから抜いた管をそいつにぶち指した。
その管は刺さると同時に竜から真っ赤な魔素を吸い始め、それと同時に竜は絶叫を上げた。
「エネルギー取り出すのに、どんだけ苦痛を与えるんだよ。どう考えても不良品だろ。」
絶叫を上げ続ける赤竜は無視して、僕は次の管を抜くと、やはり空間に黄色い靄が出現して巨大な竜へと姿を変えた。そいつも同じように処理をして作業を繰り返していくと、一時間ほどで三十頭ほどの竜が鎖に巻き付かれて地面へと転がり、メギドから抜かれた管を突き刺された竜達は絶叫を上げ続けていた。
あと二十本ほどかと思い、彼女の状態を確認しようと思い球体を覗き込むと、そこには薄っすらと目を開けたメギド神がいた。
(お主は何者だ?我をここへ閉じ込めたクソ神どもの仲間か?)
(良かった。意識が戻ったんだね。僕、僕達はあなたと同じくクソ神どもに迷惑を押し付けられたこの世界の住人だよ。)
(一体、外はどうなっておる?我にはこのダンジョン内のことしか判らんようになっておる。良ければ事情を説明してくれるか?)
メギドとそんな念話を交わしながら、僕達がここまで辿ってきた経緯や、前世界で知り得た情報などを説明しながらも、僕は彼女に刺さった管を抜いていき、出現した竜を捕らえ管を突き刺していった。
(一つだけ忠告がある。我の身体には吸収されなくなった神素がかなりの量溢れてきている。今はまだコントロールできているが、それもギリギリだ。おそらく、この我の精神を押さえつけているダンジョンコアが壊れると同時に、我は一気に暴走状態になる。その時にお前達を巻き込む可能性は否定できん。我を救おうとしてくれるお主達に迷惑をかけるのを我は好まん。)
(大丈夫だよ。これでも少しは腕に自信があるんだ。)
その念話にメギドは口角をあげてニヤッと笑った。
(これまで狂化した我を抑えられた者はただの一人もおらん。それでも言うか?)
(僕もこれまで負けたことはないんだ。例え神様相手でもね。)
その言葉にメギドは本当に嬉しそうに笑った。
(長い間生きてきたが、我にそんな言葉を吐ける者はおらなんだ。では契約しよう。我を抑えることができるなら、我はお主の配下となろう。好きなように使うが良い。)
その念話が終わるか終わらないうちにメギドの両眼が妖しく真っ赤に輝き、同時にダンジョンコアが弾け飛んだ。




