お台場ダンジョン10
その後、門からミライヤ率いる獣人軍団が飛び込んできたが、誰もが興奮してはいたが、感動と幸福感に満たされた表情で、中にいる顔見知りに自分の今の思いを伝えようと語り込んでいた。
「で、質問です。あなたが彼らに食べさせた料理には世界樹モドキの葉は使用されていないのですね?」
シルクの問いかけに、僕はキョトンとして当たり前だと思われる返事を返した。
「そんなの当たり前じゃん。あれは麻薬の一種だし、はっきり言えば毒葉だよね。究極の興奮作用だけでなく、理性を失わせて狂化させてしまうほどのタチの悪い食材じゃん。どうして、そんなゲテモノを料理に使わないといけないの?使うわけないじゃん。」
僕の言葉に彼女は一瞬身をビクッとすくませていたので、はっきりさせる意味で僕は更に言葉を続けた。
「あのカレーに使っているのは世界樹の葉を乾燥させたものだよ。肉の臭みを消したり、様々な食材の味をまろやかにするのに加えて、各種の香辛料の良い所どりを可能にする究極の香辛料の一つだよ。」
「そ、そうですか…せ、世界樹の葉!ま、まさかこの世界には世界樹が存在するのですか?それも香辛料として葉を使えるほど身近に存在するというのですか!」
タマモの驚いた声に、周囲の獣人達の目が一斉に僕達に向けられた。
ヤバっ失敗した。僕がそれを自由に使えるのは、前の世界の世界樹に自分の子供を新しい世界に連れていってほしいと願われ、託されたからだった。
植物の生育の可能な直径十キロほどの空間を作成し、そこに全世界の各地から集めてきた貴重な植物を含む多くの植物を集めたボタニカルガーデンを作成し、その中央の小高い丘に世界樹の子供を植え、その世話をする為に戦乱で孤児になった多くのアルラウネ達を招いた。水と光はやはり必須なので北の方角には巨大な水性の魔晶石を利用した山を築いてそこから川となって水が流れるように工夫し、十二時間ごとに明滅を繰り返すように調節した光の巨大な魔晶石が上空を移動するように設定し、夜が真っ暗では寂しいと思って小さな魔晶石を散りばめた。その光景を映像に映し出して世界樹に見せると、自分も連れて行けと騒ぎになったのは良い思い出である?
「まぁ、いろいろな事情があって今はこれ以上話せないかな。」
と答えた僕の顔を、タマモとシルクの二人がジト目で見ていたが、今は気にしないことにした。
「あっ!料理があの場に放置されてて勿体ないから回収してくるよ。」
そう言って、僕は誤魔化しも兼ねて許可を得る前に急いで転移した。
「あいつ、逃げたのじゃ。」
突然姿を消したレンに驚いた二人は、ミィの言葉に振り返り、まだ幼女にしか見えない彼女にレンのことを尋ねた。
「彼は、いったい何者なのですか?」
その言葉にニヤッと笑った彼女は、両手を腰に添えて、少しお腹を突き出したポーズを取ると、自信満々に答えた。
「魔神を倒し、その魂を救い、人でありながらも神にさえ届きうる力を持った究極のお人好しじゃ。」
「「…はいっ?」」
その返事を皮切りに、次々と矢継ぎ早に繰り出される二人からの質問に、ミィがたじろぎあたふたしているところへ、食事を回収してきた僕が戻った。
「あれ?何してるの?なんかあった?」
そんな問いかけに黙り込んだ三人だったが、宴会の場所をどこに設置すれば良いか尋ねると、正門前の広場を呈示された。
テーブルの全てを広場に並べてもまだ足りないように思えた僕は、タマモにお願いして王宮の食堂のテーブルと椅子を追加し、そこのスタッフにも協力して貰いながら準備を進めた。幸いにも現地のテーブルの上にあった配膳されていた食事はきれいさっぱり食べ尽くされていたので、食器とテーブル、椅子を新たに作成した空間庫に収納し、水魔法を使って洗浄、風魔法と火魔法の合成魔法を使用して乾燥させていたので、あとは再配置するだけでよかった。
王宮のスタッフの人達は、非常に優秀な方が多かったので、僕は料理の準備に取り掛かった。
「この王宮には何人くらいの人が暮らしてるの?」
「子供も含めて、五万人ほどが暮らしている。もしかして、それだけの料理を準備するつもりか?」
僕の問いかけに即座に返答したシルクの頭の回転の速さに驚いたが、
「少し持ってる料理だけでは足りないから、足りない分はここで調理するね。」
そう答えて、広場の端に、金属製の網の下に備長炭を真似て僕が作成した炭を並べた長さ二十メートルほどのレンガブロック製の竈を取り出し、焔魔法で着火し、何箇所かにミノタウロスのロースやカルビ、ヒレ、ザブトン、ミスジなどなどあらゆる部位の肉をタレに漬け込んだものを設置し、コカトリスや火喰い鳥、ロック鳥などの鳥肉系、更にオークファイター、オークジェネラル、オークキングなどのオーク系魔物の肉を漬け込んだものも並べていった。
付け合わせの野菜は、ボタニカルガーデンで採取したキャベツ、レタス、人参、もやしなどの野菜を大雑把に切り刻んで大きな籠に盛ったものの他に、りんご、梨、柿、葡萄などの果物を氷水に浮かべた大きな桶も出した。
それぞれ人手が必要な場所には王宮の食堂スタッフの人についてもらい、最後に光魔法で生み出した色とりどりの光球を無数に空に浮かべて準備を終えた。
「何とか準備終わったけど、これだけの規模なら王宮の人達で回せるかな?」
僕のあっけらかんとした問いかけに、二人は目をまん丸にしてコクコクと頷くだけだったが、その横でミィは、これっぽっちのことで動転してたらレンと一緒に活動するのは無理だなと思ったのか、口元歪めてニヤッと笑っていた。




