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みんなの力!

空には太陽が輝いている。

歩く道も綺麗な草原。

暑くもないし、寒くもない。

絶好のクエスト日和!

ぼくたち3人は元気よくクエストの目的地であるミッピン洞窟へ向かっていた。


「んっ……はぁ…はぁ…んっっっっ……んっはぁ……はぁ……」


元気よく……。


「…………」


「…………」


「んっ……もっもうだめ……んっ……こっ……これ以上は……んっっっっ」


「さっきからうるさいわよっ!」


クイーカさんから漏れる声にコルネットさんが文句を言う。

クイーカさんは顔を真っ青にして歩いていた。

そして出す声はぼくもとても気になっていた。


「そっ……んっ……そんなこと……言われても……はぁ……はぁ……」


「調子のってあれだけ飲むからだわっ!」


クイーカさんは2日酔いに苦しんでいた。

とてもお酒臭いのでぼくとコルネットさんは少し離れて歩いている。


「そっそんなに離れてあるかないでくださいよぉ……。さっ寂しいじゃなですかぁ……」


涙目で訴えられたけれどしょうがないと思う。

お酒の匂いはあんまり好きになれないから。

自分が大人になっても好きになれない気がする。

どうして大人の人はあんなにお酒が好きなんだろうって思ったぐらいに。


「どうして……んっっ……コロネットさんは……へっ……平気なんですか……?」


「鍛え方が違うからよっ!」


「鍛え方でどうにかなるものでもないと思いますよぉ……」


アルコール耐性は鍛えて強くなるわけではないことをどこかで聞いたことがあった。


「クイーカさん、大丈夫ですか? 休憩します?」


「休憩しなくていいわっ! だいたいクイーカのせいで予定より遅れてるんだからっ!」


クイーカさんは頭が痛いと朝起きるのを嫌がった。

ぼくたちが何度起こしても駄目だった。


「……予想通りの展開すぎて笑いも出てこんな」


ちょうどリュートさんが来てクイーカさんを起こしてくれた。

そしてそのまま説教タイムがあった。


「ぐすっ……そっ……そんなに……おっ……怒らなくても……いいじゃないですかぁ……」


頭が痛いのもあってなのかクイーカさんは本気で泣いていた。


「んっっ……まっ……待って……待ってくださいよぉ……なんか……朝より……んっっ……気分が……うっっっっっっ!」


クイーカさんが慌てて口を抑える。


「ここで吐くとかやめて欲しいわ」


「んっっ……んっ……もっもう……んっはぁ……限界……むっ……無理で……んっっ……んっっっっっ」


「ちょっ……本気で……」


「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


クイーカさんがうずくまり口から色々なものを逆流させる。


「だっ大丈夫ですかっ!」


「本当に吐いたっ!」


少し躊躇してぼくとコルネットさんがクイーカさんにかけよった。


「はぁはぁ……んっ……んっはぁはぁ……吐いて……んっっ……少し……すっきりしました……」


「だから宿屋にいるうちに吐いとけって言ったのに」


「あの時は……んっ……で……出なかったですから……」


コルネットさんがコップに水を注いでクイーカさんに渡す。


「ほら、口を注ぎなさい」


「ありがとうございます……」


クイーカさんは水で何度かうがいをする。


「大丈夫ですか?」


「はい……。だいぶ良くなりました」


声色が良くなっている。

顔色もだいぶ良くなっているような気がした。


「でも吐くのってちょっと気持ちいですね」


「……そうなんですか?」


「アタシに聞かないでよ」


「やっぱりお酒を飲むっていいですね」


言いながらへらへらと笑うクイーカさん。

なんだかまだ酔っ払ってるみたい。


「クイーカはこれからはクエスト前日にお酒を飲むのは禁止ね」


「えっっっっっ! ひっ酷くないですかっ! ねぇ!」


ねぇ!

と言われても……。

今の状況を見るとコルネットさんの言うことが正しい気がした。


「だいぶ良くなったみたいだから先を急ぐわよっ!」


「ちょっと休憩したいです……」


「……ぼくも疲れたからちょっと休憩しませんか?」


「……分かったわよっ! 10分だけよっ!」


なんだかんだでコルネットさんは優しい。

ぼくは座って地図を見る。

ミッピン洞窟までもう少しといったところ。

予定よりは遅れているけれども、大丈夫そうだと思った。


「思ったよりなんか駄目っぽい感じがするわね……」


コルネットさんがクイーカさんを見ながら言う。


「教会の人っぽかったからしっかりしてると思ったわ」


「優しい人ではあるんですけどね」


クイーカさんは地面に座ってぼーと空を見ている。

静かな、穏やかな時間。


「お腹空いてませんか?」


そんなクイーカさんにぼくは言った。

自分のスキルを試すのにちょうどいいと思ったから。


「クイーカはお腹空いてるんじゃないの? 朝は何も食べなかったから」


「そっそうですね……。お腹のものがなくなってお腹が空いたような……」


「それならサンドイッチを作ってみますね」


ぼくはリュックサックから鍋とパンと卵とじゃがいもを取り出す。

そして鍋にパンと卵とじゃがいもを入れた。


「あっという間に料理を作れるスキルなんだったかしら?」


「そうです。初めてやりますけど」


でもやり方は分かっていた。

昔から知っていたみたいに。

鍋に作りたいものの材料を入れて蓋をして念じればできる。

自分の頭を疑いたくなるぐらい簡単。


「本当にこれでできるの?」


コルネットさんも同じように思っていたらしい。

手順通りにやったぼくを疑わしい目で見ている。


「これでサンドイッチができてる……はずです」


ぼくはどきどきしながら開けた。

クイーカさんもコルネットさんも興味深そうに見ている。

すると……


「凄いですっ! 本当にサンドイッチができていますっ!」


クイーカさんが叫んだ。

鍋の中にサンドイッチが6個できていた。

卵サンドとポテトサンドが3つずつ。


「本当にできるんですねっ!」


たぶん作ったぼくが一番驚いていたと思う。

このスキルだと知った時はとても残念だったけれど、実際にやってみると自分凄い!って思う。


「味の方は……」


ぼくたちは1つずつ取って食べてみる。


「……普通だわ」


口をもぐもぐさせながらの感想だった。


「そんなことないですっ! とっても美味しいですっ!」


クイーカさんはばくばくと食べながら主張する。

すぐに2個目に手を伸ばしていた。


「こんなに美味しいものはないってぐらい美味しいですっ! コルネットさんは味音痴ですねっ!」


「ぼくも普通だと思うけど……」


食べた感想は普通。

まずいわけでもないし、とっても美味しいわけでもない。

あっという間にできるなら合格点だなってところ。


「きなこさんの愛情がこもってて美味しいですっ! わたしは3食いけますよっ!」


クイーカさんは3つ、4つと食べていく。

よっぽどお腹が空いたのだろうと思った。

天気がいい外でサンドイッチを食べていると、なんだかピクニックに来たみたいな感じがする。


「でも材料だけで料理が作れるならいいスキルだと思うわ」


最後の1口を食べてコルネットさんが言った。

本当に感心するような言い方だった。


「でも戦闘とかで役に立ちませんし……」


「戦闘って冒険の1部でしかないわけだから」


「そうですよっ! これは胸をはっていいと思います!」


2人から褒められてとても嬉しい気持ちになった。

自分も冒険に役に立てるかもしれない。

それだけでとても励みになる。


「なくなっちゃいましたっ!」


「クイーカは食い過ぎっ! だいたい吐いた直後によくそんなに食えるわねっ!」


「もっと作りましょうか?」


「いいんですかっ!」


「食いすぎて動けなくなったら困るから駄目だわ」


「それもそうですね」


「えっっっっ! もっと食べたかったですっ!」


「クエストが終わったらまた作りますから」


「本当ですかっ! やったっ!」


本当に嬉しそうに喜んでくれるクイーカさん。

クイーカさんには返しきれない恩があるから、少しでも返せてると嬉しいと思った。


「そろそろ良くなったんじゃないの?」


立ち上がってコルネットさんが言う。

どうやら10分経過したようだ。


「行くわよっ!」


「はいっ!」


「はいー」


ぼくとクイーカさんも立ち上がる。

10分の休憩でクイーカさんの具合もだいぶ良くなったようだった。


「ご心配おかけしてすみません。もう大丈夫ですっ!」


いつもの笑顔を見せてくれた。


「そういえばミッピン洞窟ってどんな魔物が出るんですか?」


歩きながら聞いた。

ぼくにしてみたらどんな魔物が出ても同じだと思ったけど。


「確かギルーっていう空飛ぶ小さい魔物とあとトロールが出ますね」


「トロールっ! って強そうですけど大丈夫なんでしょうか?」


「そうでもないわよ。アタシなら余裕で1撃粉砕できるわっ!」


「強いトロールもいますけどこのあたりにいるのは力だけ強くて動きは遅いのでそんなにって感じですねー」


「そうなんですねっ!」


動きが遅いならぼくも逃げ回れば大丈夫そうだと安心した。


「あれがピッピン洞窟だわ」


コルネットさんが指差す先はぽっかりと空いた入り口がある。

小山にあって洞窟といってもそんなに大きくなさそうな感じがした。


「そういえばあそこに変な結界があるって聞きましたね」


「ギルドの連中が話してたわね」


「変な結界?」


なんだかお宝の匂いがした。


「かなり強力で誰も入れないみたいです。先にお宝があるかもって話してました」


「行けない、通れないところの先にはとりあえずお宝があるって思ってるのよ。あの連中」


「…………」


たぶんお宝は男のロマンなんだと思った。


「そういう結界は破らないのがいいと思います。何が出てくるか分かりませんし」


うんうんと頷きながらクイーカさんは言う。


「前に教会にある結界を勝手に破ったら大変なことになりましたし、リュートさんにしこたま怒られました……」


「何が出てきてもアタシなら余裕で倒せるわっ!」


「その自信の持ち方は羨ましいですね……」


そんな会話をしているとあっという間にミッピン洞窟にたどり着いた。

中は暗くて先が見えない。

なんだかわくわくしてきた。


「アタシが明るくしてもいいんだけど……」


「わたしがやりますね」


こほん。と小さな声が聞こえた。


「光よ照らせ!」


クイーカさんが言うとぼくたちの周りがぱっと明るくなった。

とても大きな懐中電灯を真ん中に置いた感じ。


「クイーカさん、凄いですっ!」


初めて見た魔法。

とても凄いって思った。


「えへへへへへ。わたしはサポート用の魔法は得意なんですよね」


「さすがに照らすとなるとアタシの炎よりこっちの方がいいわね……」


「あっ!」


ぼくは洞窟の奥から何かが飛んで来るのを見つけた。


「何か来てますっ!」


「あれがギールですっ!」


ギールは小さなコウモリだった。

でも明らかにぼくら目がけて飛んできている。

こんなに積極的に襲ってくるコウモリはぼくの世界にはいなかった。

そのギールは10匹ぐらいの塊でこちらに向かっていていた。


「光で追い払ってもいいんですが……」


「ここはアタシの出番よっ!」


ボッという音が聞こえた。

見るとコルネットさんの左手が燃えていた。

ギールは凄いスピードで近づいてきている。


「ファイアバードっ!」


言いながら手をつぎだした。

すると手から小さな炎が飛び出した。

それはよく見ると鳥の形をしている。


「1匹でいいんですか?」


クイーカさんの質問に


「アタシを誰だと思ってるのよっ!」


コルネットさんは自信満々に答える

ファイアバードはギールよりも早かった。

あっという間にギールの群れに近づいて……


「ぎゃっっ!」


ギールに体当たりしていく。

そしてファイアバードに当たったギールは断末魔を上げて消えていった。

ファイアバードは何度もそれを繰り返し……


「全滅しましたね……」


最後の1匹を倒したところで消えた。


「これぐらい楽勝だわっ!」


そう胸をはるコルネットさん。

本当に凄いって思った。


「やっぱりコルネットさんの魔力は凄いです。普通は3匹ぐらいで消えるはずなのに……」


「これでアタシの実力が分かったでしょっ。さくさくって終わらせるわよっ!」


意気揚々と洞窟の中を歩いて行く。

その背中は何が出てきても大丈夫そうな自信に満ち溢れていた。

ぼくの料理スキル

クイーカさんのサポート呪文。

コルネットさんの炎の魔法。

みんなの力が見れてぼくはとても満足した気分になれた。

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