ギルドで出会った紅蓮術士!
「とっても似合ってますよっ!」
「そっそうかな……」
「バッチグーですっ!」
どうしてウドゥさんやカズーさんが、ぼくのことを移住人だと分かったのか不思議だった。
「きなこさん、ギルドに行く前に服買いましょう!」
と言われるまでは。
そしてぼくは、バザールで服を買った。
薄めの長袖。ほとんど無地に近い感じ。
「これ動きやすいですねっ!」
「冒険者用ですからっ!」
来ていた服はリュックサックに入れている。
この世界の服を着ると、なんだか一層気合が入る。
「これでもう移住者とは思われませんねっ!」
「あれ? あんまりそう思われたくなかったんですか?」
不思議そうな表情。
「移住者ってみんなステータスが高かったり、有用スキルを持ってたりするって聞いたので」
そう言うとクイーカさんは納得した表情を浮かべる。
「勝手に期待されてがっかりされるのも嫌ですものね。その気持ち分かりますっ!」
ぼくとクイーカさんは会話をしながら歩いた。
賑やかなバザールから離れていく。
建物の数もだんだんと減っていっていた。
「……けっこう離れたところにあるんですね」
イメージはどん!と街の中にある感じだった。
でもどうやら端の方にあるみたいだ。
「ギルドに集まる冒険者はバザールの人達とはまた違う騒がしさがありますからね」
「……言われてみればなんだか怖そうな場所ですね……」
「大丈夫ですっ! 問題はたまにしか起こらないのでっ!」
「たまには起こるんですね……」
やっぱり怖そうなところだと思った。
「そういえば冒険するのは3人以上って何でなんですか?」
「何か問題が起きた時……。例えば誰かが大怪我して動けないという時に1人が対処にあたって、もう1人が助けを呼びに行けるようですね。2人だと動きが取れないっ! って場面もありますし」
「ちゃんと理由があるんですねっ!」
「はいっ! ただ認められれば2人以下で冒険もできます。先程あったウドゥさんは1人で冒険しているそうですよ」
「ぼくたちはあと最低あと1人探さないと行けないんですね!」
「ですねっ! 男性のパラディンとか男性の魔法使いとか男性の盗賊とか入ってくれたらいいですねっ!」
「なんで男性ばかりなんですか?」
「それは言わなくても分かると思いますっ!」
「クイーカさんって男の人が好きなんですか?」
「違いますっ!」
即答だった!
「そりゃきなこさんのことは好きですっ! でも男好きじゃないですっ!」
クイーカさんは力説する!
「男性がいいなーっていうのはそういう意味じゃないですっ! そういう意味だったらわたしがビッチみたいじゃないですかっ! わたしはビッチじゃないですっ!」
「ごっごめんなさい……」
謝るけれどもクイーカさんはヒートアップする一方だ!
「というかわたしは処女ですっ! 正真正銘の処女ですっ! なんなら今から確認してもらっても大丈夫ですっ! っていうかしてくださいっ!」
「かっ確認するって……」
何事かと通りを歩いている人がこちらを見る。
とても恥ずかしくなってきた。
「ギルドは後でも大丈夫だと思いますっ! だからっ!」
どかん!
という音がした。
見てみると大きな建物の扉が吹っ飛んで、燃えていた。
「ギルドの扉がっ!」
クイーカさんが驚いた声を出す。
どうやら今扉が吹っ飛んだのがギルドみたいだ。
「本当にアンタ達は見る目がないわねっ!」
そして中から怒鳴り声が聞こえた。
「こんな美人で強いアタシが仲間にしてやろうって言ってるのにっ!」
ぼくはおそるおそる中を見てみる。
たくさんの人の中で目立つ人が1人。
「あの人って……」
赤髪と赤色の目。そして尖った耳をしていた。
格好は上も下もほとんど下着同然。
下だけひらひらしたマントみたいなのがあったけれど、ほとんど意味がなさそうだった。
「エルフですね……」
「エルフ……」
ぼくが想像するエルフとは違う雰囲気。
でもとても綺麗だと思った。
「もういいわっ!」
すると女の人が勢い良く歩いてきて……
「いたっ!」
ぼくとぶつかった。
ぼくは後ろに倒れ、その上に女の人が覆いかぶさった。
「きなこさんっ!」
クイーカさんの叫び声が聞こえる。
痛みはあんまりなかった。
大丈夫……そう返事して起き上がろうとした。
「あいたっ! 入り口に何突っ立ってんのよっ! ……って!」
ぼくが伸ばした右手がちょうど女の人の胸に当たっていた。
とても薄い生地だったので……
「ごっごめんなさいっ!」
慌てて離した後もしっかりと感触が残っていた。
「あっ……アタシのおっぱいをっっっっっっっ!」
「っていうか早くどいてくださいっ!」
どんっ!
とクイーカさんが女の人を突き飛ばす!
「きなこさんっ! 大丈夫ですかっ! 汚されませんでしたっ!」
「……大丈夫みたい」
ぼくは怪我がないか確認して言った。
「ならよかったですっ!」
クイーカさんは安堵の表情を見せた。
本当に心配してくれたんだなと思って嬉しかった。
「それより……」
ぼくはクイーカさんに突き飛ばされた女の人を見る。
女の人は立ち上がると怒った表情でこちらに来た。
「いきなり何するのよっ! あほじゃないのっ!」
「あほじゃないですっ! こんな公共の場であなたがきなこさんを押し倒したから助けてあげたんですっ!」
「おっ押し倒すって……」
女の人の顔が真っ赤になる。
「そんなことするわけないでしょっ! こっこんな子供に欲情するわけないわよっ!」
「きなこさんの良さが分からないなんておこちゃまですねっ!」
なぜかクイーカさんは勝ち誇った目で女の人を見ている。
なんだかよく分からない状況だった。
「だいたい子供連れがなんでこんなところに来るのよっ! ここは冒険者が仲間やクエストを見つける場所よっ!」
「きなこさんは子供じゃないですっ! わたしときなこさんで仲間を見つけに来たんですっ!」
クイーカさんがそういうと
へ?
という感じの表情で僕を見る。
「あんた冒険者なの?」
「……まだ仲間を探してるところですけど……」
「年齢は?」
女の人の視線を感じた。
目付きは悪いけれどとても綺麗な人。
そんな人に見られるととても恥ずかしいと思った。
「えっと……16歳です……」
「16歳にはとても見えないわね……。しかも仲間を探して……」
「駄目ですっ! 駄目ですっ! 絶対に駄目ですっっっっ!」
クイーカさんがぼくと女の人の間に入った。
「まだアタシは何も言ってないわよっ!」
「どうせ仲間にして欲しいっていうつもりなんでしょっ!」
「それはっ……」
「でも駄目ですっ!」
「クイーカさん……。いきなり断っちゃ……」
「今の目つきみましたっ! きなこさんが16歳だと分かったらいやらしい目つきになりましたよっ!」
「いっ嫌らしいめつきなんてしていないっ!」
「だいたいそんな格好してるなんて絶対にビッチですよっ! ビッチ!」
「アタシはビッチじゃないし、これは紅蓮術士の正式な衣装だっ!」
「その格好できなこさんを誘惑するつもりでしょっ!」
「誘惑なんてするわけがないっ! あっ……アタシは屈強な男が好みだからなっ! だいたいビッチって言う方がビッチなんだぞっ! このビッチ!」
「誰がビッチですって!」
「あんたのことだよっ! この糞ビッチ!」
「言いましましたねっ! 言いましたねっ! 言いましたねっ! ビッチのくせにっ!」
どっちがビッチかどうか言い争いをしている2人。
なんだか聞いているのも嫌になってきた。
「何なんだこの騒ぎは……」
「リュートさんっ!」
猫の姿のリュートさんがいた。
「ウドゥが帰ったから来てみれば……。やはりまだ教育が足りなかったか……」
言いつつ深い溜め息をついた。
それよりこの状況をどうにかしてほしいと思った。
2人ともとても綺麗なはずなのにとても低次元な争いをしている。
「もうすぐギルドのやつがくるだろう」
言いながら大きなあくびをする。
付き合ってられるか。
そんな感じに見えた。
「静かにしてくださいっ!」
なくなった扉から新しい女性が現れる。
「そんなに騒ぐならここを出禁にしますよっ!」
金髪の長い髪をくるくると巻いた女性。
きりっとした顔立ちが印象的だった。
そしてその声に反応して争いは終わった。
「ごっごめんなさいっ!」
ぼくはすぐに謝った!
なんだか美人だけど怖そうな人だと思った。
「クイーカ」
リュートさんが出すとても低い声が聞こえた。
「ちょっとこっちに来い」
「はっはい……」
しゅんとした感じでリューカさんのところへ移動する。
説教されるんだなって分かった。
赤い髪の女性はふくれっ面でこちらを見ている。
「あなたがきなこさんですか?」
「そっそうですけど……」
「リュートさんから連絡をもらいました。私の名前はアンクルンです。ここのギルドの受付をやってます」
「えっと騒いじゃったりして……ごめんなさい……」
「いえいえ。こちらとしてもコロネットには困ってるんですよね」
「コロネット?」
「あっあの人のことです」
「コロネットっていう名前なんですね」
コロネットさんは赤い髪をいじりつつこちらを見ている。
何だか居心地が悪そうだ。
クイーカさんを見ると半泣きの表情になっていた。
「もう二度と汚い言葉は使いませんっ!」
と言わされている。
「コロネットは能力はとても高い優秀な紅蓮術士です」
「紅蓮術士って凍らせたりするんですか?」
「えっと炎に特化した魔法使いって感じですね」
紅蓮といえば寒くて血が吹き出る地獄っていうイメージだった。
でもこの世界ではそのまま炎っていう感じのようだ。
「紅蓮術士自体あんまりいません。エルフの紅蓮術士はコロネットぐらいですね」
「凄い人なんですねっ!」
「はい。でも性格に難がありまして」
「なんとなく分かります……」
「パーティというのは何か問題があれば連帯責任何ですよね。だからああいった人を受け入れるところはあんまりなくて……」
「だからぼくたちのパーティーに入れて欲しいってところですか?」
「まぁそんなところですね。あの子もどこかパーティーに入れば何か変わるかもしれませんし……」
ぼくはコロネットさんを見た。
目があった。
なぜかコロネットさんは顔を赤くする。
「分かりました。でも……」
「でも?」
「決めるのはコロネットさんだと思います」
ぼくはコロネットさんに近づく。
「あっ……アタシになんか用事でもあるの?」
ぼくはポケットからマイステータスカードを取り出す。
そして見せた。
「こんなぼくのパーティーでよければ……その……入ってくれないでしょうか?」
こんな風に誰かを誘うのは初めてだった。
だからとても緊張し恥ずかしいと思った。
「アタシにパーティーに入って欲しいの?」
「うん」
「なんで……アタシを誘うの?」
「それは……」
考えてみたけれどまだ会って数分。
コロネットさんのことはよく知らない。
「見ていて一緒にいたいと思ったんです」
だから素直な言葉を言った。
自分の気持に正直で自信がある感じ。
それはぼくが持っていないものだ。
「一緒にいたいって……」
コロネットさんはすごく顔を赤くする。
たぶん、パーティに誘われるという経験があんまりなかったんだろうと思う。
「しょうがないわねっ! そこまで言うなら入ってあげるわっ! 本当に仕方なくねっ!」
「ありがとうコロネットさんっ!」
「そっそんなに嬉しそうにするんじゃないわよっ! だいたいアタシはあんたみたいなガキは嫌いなんだからっ!」
言いながらもコロネットさんは嬉しそうだった。
思わず笑みが出た。
そんな表情をしている。
それはとても可愛い笑顔だった。
そしてクイーカさんはまだ説教されていた。
「新しいパーティーができるというのは何度見てもいいものですね」
アンクルンさんも嬉しそうな表情。
ぱっちりとした笑顔だった。
そしてぼくに1枚の用紙を渡す。
「なんだか申し訳ないんですが……」
その紙は請求書だった。
扉の修理代。
と書いてある。
「これって……」
ぼくは壊れた扉を見る。
もう燃えてはいない。
でも扉として使えるようには見えなかった。
「パーティーは連帯責任が基本なので」
再びにっこりと微笑むアンクルンさん。
有無を言わせない迫力だった。
「分かりました……」
本格的なパーティができてぼくが最初に学んだこと。
それは連帯責任の難しさだった。




