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魔物を倒して強くなろう!

ぼくはクイーカさんと並んで歩いた。

ぼくは胸がどきどきしていた。

でもそれは街に行けるどきどきともう1つ理由があった。


「あの……」


「どうかしましたか?」


にっこりと微笑むクイーカさん。

目があったけど恥ずかしくなってそらしてしまった。


「えっと……手をつないで案内するのが普通なんでしょうか?」


「ですねっ!」


即答だった!


「街まで案内するのに……いや! 街についてからも手をつないで案内するってことになってるんです!」


「……訂正しませんでした?」


「してません! 噛んだだけですっ! わたしってドジっ子ですからっ!」


てへっ!

ベロを出して微笑むクイーカさん。

とてもわざとらしい感じだったけどとても可愛い仕草だった。


「きなこさんの手、小さくて可愛いですねっ!」


「ちっ小さくないからっ!」


比べたことないけどたぶん普通の人と同じぐらい!

つまり標準サイズ! ……なはず!


「でも案内するのに手をつないで歩くって……」


とても恥ずかしいと思った。

ただでさえ女の人とあんまり関わったことなかったのに……

いきなり大人の、それも美人な女性と手をつないで歩くなんて緊張するに決まっていた。


「恥ずかしがっているきなこさんも可愛いっ! はぁはぁ……」


「へっ変な呼吸をしないでくださいっ! それに可愛いって言わないでっ!」


これならリュートさんについてきてもらえばよかったと思った。


「街まではスライムしか出ませんので仲良くらぶらぶで行きましょうっ!」


「スライム出るのっ!」


「そっちに食いついたっ!」


なぜかクイーカさんはがっかりした表情を見せる。


「スライムに襲われたりするんですか?」


「襲われますねっ! でも正直言って村人でも余裕勝ちできる雑魚だから問題ナッシングっ!」


手をつないでない方の手でグッジョブポース!


「移住者はステータスが高いとはいえ戦い慣れてない人がおおいですっ! だからスライム相手に戦って練習するといいと思いますっ!」


「えっと魔物を倒せば経験値がもらえてレベルも上がるんですよね?」


「はいっ! それでステータスが伸びたりスキルポイントゲットで新しいスキルを覚えたりできますっ!」


つまり今は弱いぼくでもスライムとかを地道に倒してレベルアップすれば強くなれるかもっ!

そう思うとなんだかやる気が湧いてきたっ!


「でもおかしいですね……」


言いながらクイーカさんはあたりを見回す。


「普通ならもう襲ってきてもいいころのはずなんですけど。たぶん2人のデートを邪魔しないように空気を読んでるんですねっ!」


「これってデートだったんですかっ!」


「デートに決まってるじゃないですかっ!」


なんだかぼくの方が変なことを言っているみたいになっていた。

クイーカさんは修道服を着ているせいか言葉に説得力が+20%上乗せされてる気がする。


「わたしってデートって初めてなのでどきどきしていますっ!」


「ぼくもデートってしたことないです……」


「2人とも初めて同士なんですねっ! これって運命? デスティニーっ!」


「真っ赤な顔で言われても……」


ちょうどその時に一匹のスライムと鉢合わせした。


「スライムだっ!」


それは赤くて上半分は丸、下半分はちょい潰れの丸。

動くとぷにぷにという擬音がつきそうな生き物だった。


「あっっっっ! いいところだったのにっ! 空気読んでくださいよっ!」


そしてクイーカさんはスライムにマジギレしていた。


「でもきなこさんの初戦闘を見たいから惨殺するのは我慢しますっ!」


……惨殺って……

思わず背中に寒気が走った。


「それじゃさっそく戦ってみましょっ!」


クイーカさんはぼくの手を話す。

とてもわくわく感がある表情だった。


「これを使ってくださいっ!」


クイーカさんは木でできた棒状のものを差し出す。


「これで楽勝ですっ! あっちの世界で使ったことなくてもスキルとかあれば上手に使えますっ! 習うより慣れろっ! ですっ!」


「分かりましたっ!」


ぼくは気合を入れたっ!

さすがにスライムには負ける気がしなかった。


「やぁっっっっ!」


ぼくは棒を振りかぶってスライムめがけて振り下ろしたっ!

でもスライムは思ったより早い動きでそれを避ける。

そしてぴょんっ! と飛び跳ねて顔に体当たりしてきたっ!」


「あいたっっっっ!」


そんなに痛くはなかったけど思わず声が出た。


「最初はそんなものですっ! 慣れたらぱぱっとやっつけれますっ!」


クイーカさんは笑顔で戦いを見ていた。

そしてそれは……


「えいっ! やっっっ! あいたっっ!」


「きなこさんっ! おしいですよっ!」


「とぉっっ!」


すかっ……。


「きなこさんっ! 武器に振り回されてますっ!」


「これでもくらえっ! ……いたいっ!」


「……あれ?」


ぼくの攻撃は全く当たらずスライムの攻撃は当たりまくる。

幸いスライムの体は柔らかく怪我とかはしていない。

でもだんだん体力がなくなってきて……


「もっもう……だめ……」


ぼくはばたりと倒れた。


「きなこさんっ!」


そんなぼくに駆け寄るクイーカさん。

クイーカさんにスライムが攻撃するも……


「あっち行ってくださいっ!」


ビンタでスライムは飛んでいった。

どうやら一撃で倒したみたいだった。


「きなこさん! 大丈夫ですかっ!」


「だっ大丈夫……」


ぼくはくらくらする頭で立ち上がった。


「大丈夫ならよかったです……」


ほっとした表情のクイーカさん。

でもすぐに真面目な表示になった。


「あの……申し訳ないんですが……マイステータスカードを見せてくれませんか?」


「マイステータスカード?」


「その人のステータスやスキルを確認したり覚えたりできるカードです。ポケットに入ってるはずです」


言いながらごそごそとぼくのポケットをあさる、

そして1枚のカードを取り出し……


「こっこれは……」


クイーカさんはぼくのえぐいステータスを見て真っ青になった。


「戦ったことがない老人以下のステータス……」


ぼそりとつぶやかれた言葉にぼくはショックを受けた。

まさかそこまでひどいステータスだったとはっ!


「これじゃスライムに勝てないはずです……。でもスライムに勝てないってことは……」


クイーカさんはうっ!と苦しそうな声を出して口を抑えた。


「だっ大丈夫ですかっ!」


「すみません。ちょっと吐きそうに……」


「吐きそうになるぐらいショックなことなのっ!」


「えっとですね……」


言いながらもじもじと指を動かすクイーカさん。


「だめですっ! ざっ残酷すぎてわたしの口からじゃ!」


「なっ何を宣告されるのっ!」


「それは私が説明しよう」


「リュートさんっ!」


ぼくは振り返って言った。


「なんでここに?」


「女神様から連絡がきたのだ。それで追いかけてきた」


こほん。

一度リュートさんは咳をする。


「魔物を倒せば経験値が入りレベルが上がる。そしてステータスの上昇や新しいスキルを習得することができるのは聞いたな?」


「はい。それでぼくも頑張れば……」


「確かに魔物を倒せばレベルは上がる。倒せればな」


言われてぼくは気がついた。

スライムも倒せないぼく。

それってつまり……


「魔物を倒せなければレベルも上げれない。スライムは一番弱い魔物だ。それを倒せないなら……」


「レベルを上げて強くなることはない……」


断崖絶壁から突き落とされた気分だった。

つまりぼくは最弱。一番弱い。そしてずっとそのまま……。


「あばばばばばばばばばばば!」


「気を確かにしろっ!」


「そっそう言われても……」


「幸いにも料理のスキルがある。レベルを上げないとスキルは覚えられないが今あるスキルを伸ばすことはできる」


「でも料理がうまいって……」


「料理がうまければ街で店が持てる。それでなんとかやっていけるはずだ」


でもそれじゃ……


「冒険はできないんですかっ!」


「ぼっ冒険なんて危ないですよっ! 危険ですっ!」


クイーカさんががばっと立ち上がって言った。


「わたしと静かに暮らしましょうっ! 結婚して暮らしましょうっ! あそこならずっと平和に暮らせますっ! そして毎晩わたしとこづく……あいたっっっ!」


「真面目な話をしてるんだぞっ!」


「わたしだって全力で真面目に言ってるんですっ!」


「真面目だから余計にたちが悪いんだっ!」


「ぜっ絶対に冒険は無理なんですか?」


目から涙が溢れ出そうになった。

いくら弱いとはいえ何かできると思った。

現実の時のぼくとは違って……。


「頼れる仲間がいれば無理ではない。自分はサポートに徹すればいいからな」


「それじゃっ!」


「しかし初対面で弱くて有用スキルもない人間と一緒に冒険をしたいと思うか?」


「そっそれは……」


「街で暮らすのも悪くない。冒険だけが全てではない。街にだって元の世界にないものはたくさんある」


「でも……でも……」


ぼくは冒険したいと思った。

あの小説の人達みたいに。

2人が言ってることは正しいと分かってる。


「なんでそんなに冒険がしたいんですか?」


優しい声だった。


「できれば……教えて欲しいです」


「……ぼくは元の世界にいたころずっと病弱でどこにも行けませんでした」


「だから異世界物の小説に憧れたんですね……」


ぼくはこくりと頷いた。


「あんな風に知らないとこを自分の足で冒険できたらってずっと思ってたんです……」


そしてその夢が叶おうとした。

この世界のぼくは健康体。

走ることだって泳ぐことだってできる。


「でも……異世界でもぼくは……ぼくでした」


それもただの空虚になった。


「きなこさんっ! 可愛そうっ!」


ぐしゅぐしゅという音が聞こえた。

クイーカさんが泣いていた。

ぼくのために泣いてくれていた。


「……無念なのは分かる。だが……」


「決めましたっ!」


リュートさんの言葉をクイーカさんが遮る。


「わたし案内係やめますっ! やめてきなこさんと一緒に冒険しますっ!」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


それにすぐにリュートさんが反応する。


「お前っ! 本気なのかっ! あれほど努力して案内係になれたというのにっ!」


「本気の本気ですっ!」


クイーカさんは意気込むように両手を上げ下げする。


「わたしが協会にいたのもきなこさんと出会うためですっ! きなこさんの冒険を手伝うためですっ!」


「ほっ本当に……いっ……いいの?」


信じられないと思った。

今ある立場を投げ捨ててぼくに協力してくれるなんて……


「モチのロンですっ!」


「……お前は決めたら曲げない性格だよな」


やれやれといった顔。


「お前は今日でくびだ。好きにしろ。上には私が報告しておく」


「ありがとうございますっ!」


「……たまには顔を見せろよ」


それだけ言ってリュートさんは協会の方へ戻っていく。

ぼくは本当に唖然とした感じだった。

でも冒険ができることは分かった。

クイーカさんのおかげで。


「ありがとうっ! クイーカさんっ!」


「いいんですっ! わたしはわたしがやりたいことやっただけですからっ!」


クイーカさんはにこりと微笑む。


「だからきなこさんもやりたいことをやりましょうっ!」


「うんっ!」


この世界には色々なものがある。

冒険をしたらきっと色々な出来事に遭遇する。

でも……


「それじゃ行きましょうかっ!」


「クイーカさん……」


「何でしょう?」


「手をつないでもいい?」


「喜んでっ!」


でも今日以上に嬉しい出来事はないんだろうなとぼくは確信できた。


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