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着いて5秒後のプロポーズ!

主人公の名前がきなこになりました。

「何ですかこの人っ! 超可愛いっ!」


着いたとたん視界を塞がれた!

顔がとても柔くて温かいものを押し付けらている!


「ちょ……なっ何が……」


着いた直後に魔物に襲われるのが怖いと思った。

でも着いたところは協会みたいなところだった。

ほっとしたぼくに……


「こんな子供が来るなんてっ!」


誰かが勢い良く飛びついてきたのが今の状況。


「はぁはぁ言ってる声が怖いんだけど!」


「安心して! 怖くないわっ!」


「めっちゃ怖いよっ!」


「普段は子供に手を出したら犯罪だから我慢してるけど移住者ならいいよねっ!」


「よくないと思う!」


「結婚しましょう! わたし達結婚しましょう!」


「展開が急すぎて訳が分からないよっ!」


「いいの今は分からなくてもすぐに……あいたっっっっっ!」


抱きつかれていた腕がほどけてぼくは開放された。

見てみると修道服を着た女性が頭を抑えてうずくまっていた。

その横には拳を握っている同じ修道服を着た女性。


「何を発情しているんだっ!」


黒くて長い髪をびしっとまとめたポニーテール。

とても似合っている眼鏡の感じがまさに仕事ができるっ!

って感じだった。


「発情してないですっ! 変な風に見ないでくださいっ!」


と言ってるのは長いぼさぼさで茶色の髪の女性。

立ち上がると背が高くてそこそこ首を上げて見上げなくちゃいけなかった。

……ぼくの身長が低いってことはないはず。


「胸を顔に押し付けておいて発情してないとは言わせんぞ!」


胸を……

ぼくは思わず目の前にいる人の胸を見てしまう。

露出は少ないけれどとても大きいってのが分かる胸。

あれを……


「あっ! 赤くなってます! 本当に可愛いですっ!」


「かっ可愛いって言わないでくださいっ!」


「怒ってる姿も超可愛いっ!」


「だから可愛いって……」


「話が進まねーじゃねーかっ!」


「あいたっっっっっっっっっ!」


また頭を抱えてうずくまる。


「そんなに頭を殴らないでくださいっ! おかしくなっちゃうじゃないですかっ!」


「むしろ正常に戻してやってるのだ!」


ポニーテールの女性はぼくの方を見る。

そしてにこりと微笑んだ。


「私の名前はリュート。ここで移住者の案内人をしている」


そう言ってペコリと頭を下げる。

だからぼくも同じようにした。


「えっとぼくは……きなこって言います。その……移住者らしいです」


「ふむ……」


言いながらリュートさんはぼくをじろじろと見る。

なんだか気恥ずかしい……。


「本当に子供みたいな容姿をしているな……。間違って来たわけじゃないよな?」


「一応16歳です」


自分でも一応って言ってしまうのが悲しかった。


「ふむ……。16歳なら成人済みというわけか……」


「こっちの世界なら16歳で成人できるんですね」


「そうですよっ! だからけっこ……」


「お前は黙ってろっ!」


「あいたっっっっっっっっっっ!」


…………


「この変態はクイーカという。普段は真面目なのだが相当きなこの容姿が好みだったようだ」


言いながらリュートさんは頭を下げた。


「だから非礼を許してやってくれ」


「いえそんな……。危害を加えられたってわけじゃないですし……」


クイーカさんを見ると頭を抑えながらも立ち上がった。


「私もごめんなさい。あなたを見た瞬間にどばーって何かが降りてきたんです。ちょっと深呼吸を……」


言いながらすーはーすーはー深呼吸をするクイーカさん。

落ち着いて見ると化粧っ気はないけど美人な顔立ちをしている。

あんな初対面じゃなかったらぼくのほうがやられてていたかもしれない。


「ばっちり落ち着きました。ふー。危なかったです。思わず変態さんの仲間……」


「私の中ではお前はもう変態として認識されてるけどな」


「……気を取り直して説明したいと思いますっ!」


こほん、と小さいせきが聞こえた。


「基本的なところから行きますね。この世界……イグラストムは全部で4つの国があります。そしてこの国に移住者は最初に送られるのです」


そこらへんは小説で読んでいたからなんとなく覚えていた。


「ここはサリスリト王国。4つの中で一番平和です。といっても比較的はって感じですけどね」


「それでぼくは魔王を倒さなくちゃいけないんですよね」


「それはですね。そうとも言えますしそうでもないともいえます」


「倒さなくてもいいってことですか?」


「女神様は立場上倒すのが目的って言うんですが強制ではないです。移住者は何人もいますが本気で魔王討伐したいと思ってる人もいればのんびり冒険している人もいます」


「割りと自由なんですね」


「ですねっ! だからわたしとここ……ちゃっちゃんと説明するから拳にぎらないでくださいっ!」


「…………」


「…………」


「えっとだからきなこさんも好きなことをしていいと思います。何かしたいことはありますか?」


「ぼくは……冒険がしたいです」


まだここに来て何も見ていない。

でもぼくが知らない何かがあると思った。


「冒険っ! いいですねっ! でも冒険するには仲間が必要ですっ! 移住者は強い人が多いですがそれでも1人じゃ厳しいですっ!」


思わずぎくりっ!と反応してしまった。

ぼくは移住者だけど強くはない……。

でもそのことをクイーカさんは知らないみたいだ。


「何をするにもまずは街に行くのが一番いいです。ここの近くに大きな街ライドンがあります。ギルドもあるのでそこで仲間を探すってのが一般的ですっ!」


ぼくは弱い。

だから仲間を見つけるのが一番大事だと思った。


「そこまで案内するのがわたし達の役目ですっ!」


とてもはりきった声が聞こえた。


「ばっちりしっかり案内しますねっ!」


「お前じゃ不安だな……」


今まで黙って見ていたリュートさんが言う。


「私が代わりに行こうか?」


「嫌ですっ! 絶対に嫌ですっ! わたしにはきなこさんに相応しい仲間を探す義務がありますっ!」


「そんな義務はないが……まぁ任せるとしよう」


「ありがとうございますっ! それじゃ短い間ですけどよろしくお願いしますねっ!」


言ってクイーカさんはがっちりとぼくの手をにぎる。

柔らかくて温かい手に握られて恥ずかしくなった。

でもぼくもその手を握り返した。


「ぼくの方こそよろしくお願いしますっ!」


「それではさっそく街の方へ向かいましょうか!」


「はいっ!」


クイーカさんが歩くのでぼくもそれに続いた。

クイーカさんは重そうな扉を開ける。


「一歩先から本格的な異世界ですよっ!」


ぼくは扉から出た。

緊張と嬉しさが混じった感情を持っていた。


「これが……」


教会は丘の上にあった。

すぐ見下ろしたところに大きな街がある。

たぶんあれがライドンなのだろうと思う。


「ちょっと寒いですね……」


「街についたら服を買いましょうっ!」


ぼくはきょろきょろと周りをみた。

南の遠くの大きな山からもくもくと煙が出ている。

東の方には巨大な雲に覆われている場所がある。


「あの火山にあるダンジョンには財宝が眠っていると言われています」


クイーカさんが指を指しながら説明する。


「あの巨大な雲はずっとあの場所にあります。1000年ぐらい。あそこにはウイソールっていう半分魚の種族がいます」


「人以外にも色々な種族がいるんですよね」


「ですね。あのビャックヒック山には」


クイークさんはいかにも険しそうな山を指差した。


「偉大なドワーフの王、サーランギが住んでいます。ですが今は近くの山に住むオークと戦争状態なので近づかない方がいいです」


火山に眠る宝。

1000年振り続ける雨。

半分魚の種族。

ドワーフの王。

どれも聞くだけでわくわくする言葉だった。

元いた世界では味わえない興奮があった。

それにそれらもこの世界のほんの一部分。

世界はどこまでも広がって見えた。


「それと……」


クイーカさんが何か言おうとした。

しかしばさりという音にかき消された。


「あれはっ!」


クイーカさんが叫ぶ。

ぼくは音がする空を見た。


「…………」


ぼくは言葉が出てこなかった。

巨大な翼、大きな四肢、赤い鱗。

小さな山ぐらいありそうな大きさ。

巨大な翼が上下するたびに風が吹いてきた。

とてもゆっくりに見える動きだけれど力強さが伝わってくる。

それはマイペースに見える動き、そして想像以上の速さで通り過ぎていった。

ぼくの体には鳥肌が立っていた。

あれは……あれこそは……


「ドラゴンだっ!」


思わず叫んだ。

叫ばずにはいられなかった。

ほんの数秒の出来事。

でも今までの人生で一番興奮した。


「ドラゴンは全ての生き物の頂点。ドラゴンの長は限りなく神に近い存在……」


クイーカさんも驚いた表情をしている。


「わたしも本物のドラゴンを見るのは初めてですっ! 凄いっ! 凄いですっ!」


クイーカさんの顔は興奮で真っ赤になってる。

たぶんぼくも同じだろうと思う。


「きっとこの世界がきなこさんを歓迎してるんですっ!」


クイーカさんは満面の笑みでぼくに言った。


「きなこさん、異世界イグラストムへようこそっ!」

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