クエスト終わりの食事会!
「随分と派手にやったものじゃのう」
ニャルティさんが洞穴の中に入ってくる。
いつものような、優雅な感じ。
とてもさっきまでガルゴンドの大群と戦っていたとは思えない。
「予定通り一発で決めたわっ!」
高笑いをするコルネットさん。
コルネットさんの前には黒焦げで倒れているグンデルがいた。
息をしているのでまだ生きてるみたい。
「でもぎりぎり生きてるなんて凄いわね」
「さすが幹部っていったところですね」
「魔王の幹部を一撃で倒したアタシ……。有名になることは間違いないわねっ!」
「グンデルも優秀な魔法使いじゃ。妾でも苦戦するぐらいのな」
言いながらニャルティさんはグンデルを紐で縛っていく。
とても手慣れた感じがした。
「作戦勝ちといったところじゃのう」
「アタシって天才だからっ!」
「本当にそう思ってしまうのが恐ろしいのう」
「ちゃんとアタシが倒したって報告しなさいよっ!」
「分かっておる。それでクイーカは怪我してるみたいじゃが、大丈夫か?」
「はい。ちょっと血が出ただけです」
クイーカさんの怪我は肩をガルゴンドの爪がかすってできたものだった。
少し痛そうだけど、もう血は止まっている。
大怪我じゃなくて、本当に安心した。
「結界がなくなった瞬間、中に突撃していったからね」
「おかげで助かりました!」
「いえいえっ! きなこさんを助けなくちゃって思って走っただけですっ!」
「きなこが結界に入ってしばらく結界がそのままだった時はあせったわ」
「そうですよっ!」
ぼくを見てクイーカさんが言う。
「結界は壊れないし、きなこさんは出てこないし、とっても心配しました!」
「クイーカ、泣きそうになってたわよね」
「コルネットさんも不安そうに爪を噛んでたじゃないですかっ!」
「ご、ごめんなさい……」
ぼくとグンデルが話している間にそんなに心配してるとは思わなかった。
でもよく考えたら心配して当然の状況だったし、心配してくれて嬉しいとも思った。
「謝ることではない。すぐそばにグンデルがおって逃げれなかったといったとこじゃろう」
「そうですよっ! きなこさんはちゃんと結界も壊してくれましたし、謝ることなんて何もないですっ!」
「それよりアタシは何があったから気になるわっ!」
「それは妾も気になるのう。妾が知ってるグンデルは敵なら殺すか人質にするやつじゃったぞ」
それを聞いてぼくは少し寒気がした。
もし魔王がぼくを仲間にしようなんて言ってなければ、結果は全然違うものになっていたはずだ。
「しかしそういう雰囲気ではなかったみたいじゃから気になった」
「えっと、魔王がぼくを仲間にしたがってるってグンデルが言ってて、その途中でカズーさんにもらった小瓶を投げました」
「魔王が仲間にって!」 「それって本当ですかっ!」
クイーカさんとコルネットさんが同時に大きな声を出す。
ぼくも同じように思ったから、その反応が当たり前だと思った。
むしろ……
「なるほどのう。グンデルにとってお主は敵ではなく、客だったのか。それなら納得じゃ」
うなずいているニャルティさんの反応の方が気になった。
ぼくが魔王に誘われたことが意外でもなんでもないみたいだ。
「ん? どうしたのじゃ?」
思わずニャルティさんを見ていたぼくに言う。
「えっと、ニャルティさんは驚かないんだなって思って……」
「ああ。なるほどのう。妾は魔王と会ったことあるからのう。じゃからきなこを仲間にしようとするというのも納得できることだったんじゃ」
「そうなんですね……」
そういえばニャルティさんは魔王が移住人だと知っているはずだった。
「じゃとすると、グンデルがここに来たのも……」
ぶつぶつと言って考え事をしている。
何って言ってるのかは聞き取れなかった。
「どうかしたの?」
「なんでもない。少し色々考えすぎただけじゃ」
「いろいろごちゃごちゃ考えすぎよっ!」
胸を張ってコルネットさんは言った。
「アタシ達はクエストを見事達成できたっ! それだけ分かってれば十分だわっ!」
「ですねっ!」
コルネットさんの言葉にクイーカさんは同意する。
「みんな無事でクエストを完了できただけでも、わたしは幸せですっ!」
「お主は怪我をしたんじゃが……」
「こんなの怪我のうちに入らないですっ! リュートさんにゲンコツされたときの方が10倍ぐらい痛いですっ!」
「ぼくも自分のステータスが役に立てて嬉しかったですっ!」
「そうじゃのう。後は馬車に乗ってのんびりと帰るだけじゃ。早くお風呂に入りたいのう」
「そうよっ! 早く帰ってのんびりしましょうっ! 馬車って意外と寝づらいのよっ!」
「意外でもなんでもないと思うぞ……」
ぼくたちは洞穴を出た。
グンデルはニャルティさんが引きずっている。
「あんな大群を倒されたんですかっ!」
ぼく達が到着すると馬車の人が驚いていた。
「それにその引きずられているのは! まさか……」
「そのまさかじゃ。こやつは魔王幹部、グンデルじゃ」
「…………」
驚きすぎて言葉が出てこない感じだった。
「なんかとってもいい気分ねっ!」
うきうき声のコルネットさん。
「とっても注目されて気持ちがいいわっ!」
「わたしはやっぱり恥ずかしいですねぇ……」
「ぼくもです……」
「とりあえずこいつは荷物のとこに投げ入れとけばよいじゃろう」
グンデルを護衛の1人に渡す。
護衛の人はおっかなびっくりという感じでグンデルを馬車の荷物を集めるところに置いた。
さすがに投げ入れるということはなかったけど。
そしてぼくたちはまた馬車の同じ場所に座った。
「なんだかあっという間でしたね」
ぼくはオウフェンス平原の方向を見ながら言った。
今はもうガルゴンドの姿は全く見えない。
「ついて1時間も経過してないからのう」
「採取クストの六分の一ってところねっ!」
「でも採取クエストの5倍ぐらいつかれましたぁ……」
クイーカさんはぐったりとしている。
「終わってほっとしたのもあるじゃろう」
ニャルティさんはぼくとクイーカさんを交互に見る。
「お主らは移動中もずっと緊張していたからのう」
「見ていたこっちが緊張しそうなぐらいだったわよっ!」
明るく笑うコルネットさん。
「本当そうですよねぇ。緊張しすぎて何も食べれないぐらいでした」
「ぼくもです」
クエストが終わって馬車に乗れた。
その安心感からなんだかお腹が空いてきた。
「ぼくは何か食べようと思いますけど、クイーカさんもどうですか?」
「食べますっ!」
即答だった!
「とにかく何か食べたい気分ですっ!」
「分かりましたっ!」
ぼくはリュックサックをあさる。
何か美味しいものがないかって。
そんなぼくに……
「アタシも欲しいわっ!」
「まだ食べるんか……」
「魔力を消費してお腹が空いたのよ!」
「ニャルティさんはどうですか?」
「……妾ももらおうかのう」
「結局、ニャルティも食べるんじゃないっ!」
「妾は動きまくったからのう」
「どうせならみんなで食べましょうっ!」
ぼくはお願いして安全なところで馬車を止めてもらった。
そしてぼくのスキルでおじやを作った。
米が馬車にあってよかった。
「ありがとうっ!」
「結界破れる以外にこんなスキルがあるのねっ!」
「クエスト途中でこんなに美味しいものが食べれるとは思わなかったよっ!」
馬車の人や護衛の人達とも一緒に食べた。
ぼくたちがクエストを達成できたのも、みんなのおかげだから。
そして食べながら楽しくお話もできた。
特にクイーカさんと護衛の女の人はとっても意気投合したみたい。
明日にでも一緒に何か食べに行こうって約束している。
とても楽しい時間だった。
「いいアイデアじゃな」
ぼくの隣に座ってニャルティさんが言った。
「妾のアドバイスをちゃんと実践してくれて嬉しいぞ」
アドバイス?
ぱっとは出てこなかったけど、少し考えて分かった。
「たくさんの場所に行って、たくさんの人と会うがいい。ですよね?」
「そうじゃ。その通りじゃ」
とても嬉しそうな笑顔。
「さっきまでは護衛とその対象。それだけじゃった。でも今は違うじゃろう」
「それを狙って言ったわけではありませんけどね」
ただお礼がしたいって思っただけだった。
「だからいいのじゃ」
「ですね」
なんだかだんだん眠くなってきた。
たぶんそれは今の雰囲気がとても心地いいからだと思う。
安心できる空気だからだと思う。
「馬車で眠りますね」
ぼくは立ち上がった。
まだ楽しそうな雰囲気。
楽しい食事会はまだ終わる気配はない。
出発まで時間がかかりそうだなって、ぼくは思った。




