結界破りのぼくと七色月の異世界!
「おはようございますっす!」
いつもの元気がいい挨拶と明るい笑顔のハープちゃん。
1日頑張るぞっ!
っていう気持ちにしてくれる。
今日はクエストないんだけど。
「おはよう、きなこ」
「おはよう、じゃな」
コルネットさんとニャルティさんは先に起きて朝食を食べていた。
「おはようございます」
ぼくもそう返して椅子に座った。
まだちょっと眠い。
「今日は何かするんですか?」
「今日はこやつと演劇を見に行く予定じゃ」
ニャルティさんがコルネットさんを指差して言った。
コルネットさんとニャルティさんは演劇とかを見るのが好きみたい。
クイーカさんとぼくもあんまりそういうのは楽しめないタイプ。
特にクイーカさんは4人で観に行った時に途中で思いっきり寝てしまい、終わった後コルネットさんに怒られていた。
「最近よく2人で出かけてますよねっ!」
「ニャルティがどうしてもって言うからねっ!」
「頼んできてるのはお主じゃろう……」
2人の言ってることは正反対だけど、たぶんニャルティさんが言ってる方が正しいんだろうなって思った。
「きなこはリュートのところに行くんでしょ?」
「その予定ですね」
「じゃあ夜はこっちに来るように言ったら?」
「それもいいかもですね」
またここで食事会をするのもいいなって思った。
「それよりクイーカは起こさなくていいのかのう?」
「ですねっ!」
ぼくはハープちゃんに頼むことにした。
「もう少ししたらクイーカさんを起こしてくれてもいい?」
「了解っす!!」
「ハープちゃんもどこかにでかける?」
「ハープは大丈夫っす! 明日からしばらくお休みみたいなもんですからっ!」
「それもそうだね」
ぼくはハープちゃんに朝ごはんを持ってきてもらう。
自分で取りにいったらハープちゃんは物凄く怒る。
自分の仕事を取られるのが嫌みたい。
「明日から1人でお留守番っからねっ!」
朝ごはんを出しながらぼくは言った。
グンデルを倒して9日が経過している。
ぼくたちがグンデルを倒したということはそこそこ話題になった。
そしてクエスト報酬+特別報酬で合計3000万クルトンをもらった。
正直、よく分からない金額。
自分の取り分でも375万クルトンある。
でもそれ以上にギルドの人達とよく話すようになったことの方が嬉しい。
いくつかのパーティーと一緒にクエストをしようとも誘われた。
「でも特別クエストが依頼されるって凄いっすよね!」
「運がよかっただけだよ」
結界が効かない。
そのことが実証されてぼくたちのパーティーには直接依頼が来るようになった。
そして明日から行うのは古代遺跡の探索。
奥に誰も破壊できない古代の結界がある。
だからぼくが入ってその先がどうなってるか見てくる。
そしてできたら結界を破壊するというクエスト。
報酬も大きかったけれど、遠くまで行けるのが嬉しい。
古代遺跡の場所は馬車でも10日ほど必要な場所。
護衛はグンデルの時に同行してくれたパーティーに依頼している。
「お土産楽しみにしてるっす!」
「うん。何か良さそうなものを買ってくるね」
ぼくが言うとハープちゃんはやったーって感じで喜んでくれた。
「それじゃクイーカ様を起こしてきますねっ!」
ハープちゃんはばっという感じで部屋を出た。
「クエスト楽しみですねっ!」
「またアタシの伝説が増えると思うとわくわくするわねっ!」
「またってお主に何か伝説でもあったかのう……」
「魔王の幹部を倒したのはアタシなのよっ! もっとちやほやされてもいいと思うわっ!」
そしてなぜか睨まれるぼく……。
「きなこばっかり褒められてむかつくっ!」
「お主は本当にガキじゃのう……」
「若々しいって言って欲しいわっ!」
そんな会話をしつつ2人は食事を食べて準備をする。
「おはようございますぅ……」
そんな中、クイーカさんがのそのそとやってくる。
「起きるの遅いわよっ!」
「妾はもう出るとこじゃぞ」
「そうなんですねぇ……」
はわわと欠伸をする。
「朝食っすっ!」
そんなクイーカさんに朝ごはんを出すハープちゃん。
「それじゃ言ってくるわっ!」
「リュートによろしく頼むぞ」
「行ってらっしゃい!」
ぼくは食べ終わり、のんびりと朝ごはんを食べるクイーカさんを見ていた。
…………
…………
「お待たせしましたっ!」
クイーカさんが目を覚まして40分ぐらい。
準備ができたのでぼくたちは屋敷を出た。
そしてリュートさんへのお土産を買うために、バザールへと向かう。
「何がいいんでしょうね」
相変わらずバザールは色々なものがあって、どの店にするかだけでも時間がかかりそう。
「リュートさんの好きな食べ物ってあります?」
「うーん、どうでしょうねぇ」
指を唇に当てて考えている。
「きなこさんが作ったら何でも喜ぶと思いますっ!」
「何でもが一番困るんですけどね……」
「そんなに考え込まなくてもいいと思いますっ!」
「それもそうですね」
教会なので食べれるものも決まってるだろうし。
リュートさんはそこらへんは真面目そうだし。
「何か煮物作りますね」
「わたし、きなこさんが作る煮物大好きですっ!」
ぼくはいつも野菜を買うところ回って材料を揃えていく。
「よう、きなこっ!」
買い揃えたぐらいで声をかけられた。
「カズーさんっ!」
「……いきなり会うなんてついてないですね……」
相変わらずカズーさんを嫌っているクイーカさんだった。
「俺は疫病神かってんだっ!」
そう言いつつもカズーさんはなんだか楽しそうだった。
「わたしあっちで買い物してますねっ!」
ぷいっとした感じでクイーカさんは離れていく。
「今日はお店出してないんですか?」
カズーさんはぼくたちと同じようにぶらぶらとバザールを見ているみたいだった。
いつもお店にいるイメージだったので、なんだか新鮮。
「そろそろ他所で商売しようと思ってな」
「街を離れるんですね」
「いろいろ仕入れてきたいしなっ!」
「良い物があったら教えて下さいっ!」
「もちろんだっ! きなこはお得意様だからなっ!」
思えばこの世界に来て初めて買ったのは今も背中にあるリュックサック。
多分、一生の相棒になると思う。
当時の持っているお金からしたらとても高い買い物だった。
でも買って正解だったって確信できる。
「逆にきなこが冒険でいいものを見つけたら俺に売ってくれよっ!」
「いい値段で買ってくださいねっ!」
「お前も言うようになったなっ!」
そう言ってギャハハハハといつものように笑う。
「そろそろクイーカが不機嫌になりそうだなっ!」
見ると近くのお店からちらちらこちらを見ていた。
「また会った時はよろしく頼むぞっ!」
言いながら人混みの中に入っていく。
「クイーカさんっ!」
ぼくはクイーカさんを呼んだ。
「行きましょうっ!」
「はいっ!」
クイーカさんは買ったものをぼくに隠すようにポケットに入れた。
買っていたのは小さな石でできた置物。
たぶん、リュートさんへのプレゼントなんだと思う。
恥ずかしいから見られたくないんだろうって思った。
だからぼくは何も言わなかった。
そして買い物を終えたのでバザールを出て街の入口へと向かった。
「あっっっ!」
そして声をかけられた。
目の前には小さな体だけどとても凄いっていう噂のウドゥさんがいた。
「久し振りだねっ!」
「お久しぶりです」
「偶然ですねっ!」
ウドゥさんは前は斧だったけれど、今日はハンマーだ。
体と同じぐらいの大きさがある。
ぼくだったら持つこともできなさそうだって思った。
「えっと! 結界破りだよねっ!」
「…………」
「あれ? 違ったかな?」
「合ってますよっ!」
そう言ったのはクイーカさん。
「だよねっ!」
「その呼ばれ方、好きじゃないんですよね……」
嫌というより恥ずかしいというのが本音だけど……。
「そうなんだっ! 格好いいのにっ!」
グンデルを倒したクエスト以降、ぼくを結界破りって呼ぶ人が増えた。
ギルドの中ではそっちで呼ばれることの方が多いぐらい。
「じゃきなこでいいんだよね!」
「ぼくの名前覚えてくれてたんですねっ!」
「もちろんだよっ! 今日はリュートのとこにいくの?」
「そうです」
「よろしく言っといてねっ!」
「分かりましたっ!」
「それじゃクエストで一緒になった時はよろしくねっ!」
ばいばいっ!
そう言ってウドゥさんはどたどたと走っていく。
「懐かしい人に会ったって感じですね」
それを見送りながらクイーカさんが言った。
「ですね」
ウドゥさんはこの街に来て初めて会った人(?)。
だからとても印象に残っているし、そしてとても懐かしい感じがした。
そのままぼくたちは街を出て草原に出る。
「やっぱり変わってませんね」
ぼくは周りを見ながら言う。
教会と街をつなぐ草原。
来たのは初めてここに来た時以来。
「遅かったな」
「リュートさんっ!」
「待ってたんですかっ!」
草原を少し進んだ場所にリュートさんがいた。
どうやらぼくたちを待ってたみたいだ。
「遅かったからな。迎えに行こうとしていたところだ」
「そんなにわたしに会いたかったんですかっ!」
からかうような言い方。
でもとても嬉しそうな声色、
「どうせまだ寝てるだろうと思っただけだ」
そう言って教会へ向かって歩き出す。
「素直じゃないですねぇ!」
笑顔でクイーカさんは言った。
ぼくとクイーカさんはリュートさんの後ろを歩く。
もちろん、手をつないで。
いつものように。
「いいお天気ですねっ!」
空は雲一つない晴天。
なごやかな天気。
「今日は綺麗な月がみれそうですっ!」
うきうきしながらクイーカさんは言う。
「ブルームーンだと嬉しいですねっ!」
「ですねっ!」
そう言いつつもぼくは何色でも嬉しいって思った。
クイーカさんと見れるならどんな形でもどんな色でも綺麗に見える。
「この世界って元いたところと色んなことが違います」
「そうみたいですねっ!」
「その中でもぼくはこの世界の月が好きです」
七色に色が変わる月。
月の形を合わせたら数え切れない顔を見せてくれる。
そんな月がぼくは好きだった。
クイーカさんと同じぐらいに。
「クイーカさん」
「何でしょう?」
ぼくはずっとクイーカさんといたいって思った。
もちろんコルネットさんやニャルティさんにも同じ思いを持ってる。
でもぼくにとっての特別な人は、やっぱりクイーカさんだ。
ぼくは初めてこの世界にきたことを思い出す。
着いて5秒後のプロポーズ。
その返事もいつかしないといけない。
そしてその返事もすでに決まっている。
「これからも色々な月を一緒に見ましょうねっ!」
「もちろんですっ!」
結界破りのぼく。
七色月の異世界。
この世界の果てまでぼくは旅を続けるつもり。
クイーカさんと一緒に。
ずっとずっと手をつないだまま、どこまでも歩いていきたいとぼくは思った。
今回が最終話です。
25日間、ありがとうございました。
明日からまた新シリーズを始める予定なので、そちらもよろしくお願いします。




