戦場を駆けるぼくたち!
「絶景じゃのうっ!」
ニャルティさんの嬉しそうな声が聞こえた。
表情もなんだか嬉しそう。
「どこが絶景なのよ……」
反対にコルネットさんは気分が悪そうな顔をしていた。
ぼくもクイーカさんも似たようなものだけれど……。
「たくさんいるといってもあんなにうじゃうじゃいるとは思わなかったわ……」
実際、オウフェンス平原にはたくさんのガルゴンドがいた。
いや、たくさんどころじゃない。
大群だった。
「多くて100匹ぐらいって思ってたんだけど……」
思わずぼくは息を飲む。
「どうみても1000匹以上いますよね……」
クイーカさんは驚愕の目で見ていた。
想像以上のガルゴンドの多さに護衛の1人が、
「おっ、応援を呼んできますっ!」
そう言って帰っていった。
なんだかとても大変そうな事態になっている。
「それで応援待つの?」
「待ってたら余計にひどくなるぞ」
「それじゃ予定通りにするんですか?」
クイーカさんの言葉にニャルティさんが頷く。
「そうじゃな。予定通りに行うとしようか」
「1000匹もいるけど、大丈夫なの?」
「カカカッ。余裕に決まっておるじゃろう」
ニャルティさんは不敵に笑った。
「妾が引き付けておくからそのうちに奥にある洞穴を目指すのじゃな」
ニャルティさんが指差す。
ガルゴンドで埋まっていてよく見えないけど……。
「氷の翼」
一瞬でニャルティさんの背中に氷の翼が生える。
「それでは作戦開始と行こうかのう」
言ってニャルティさんは空を飛んだ。
そのままオウフェンス平原に入っていく。
ガルゴンド達は侵入者の出現に興奮した。
金属音のような、変な鳴き声が耳を襲った。
「うっ、うるさいですね……」
「あれだけ大量にいればね」
「でもニャルティさんはどうするつもりでしょうか?」
クイーカさんの心配そうな声。
「大丈夫よ」
コルネットさんの声は明るく、普段通りのものだった。
「むしろガルゴンドが心配になるぐらいだわ」
ニャルティさんは空を飛び、ガルゴンドの群れのど真ん中まで移動。
群れがニャルティさんの方へ移動している。
「カカカッ! そんなに妾に殺されたいかっ!」
ニャルティさんが右手を出す。
「氷の壁」
ばきばきと水分が凝固する音が聞こえる。
数秒で巨大な氷の壁ができた。
「妾は大悪魔、ニャルティティ。妾に殺されることを光栄に思うが良い!」
そしてニャルティさんは氷の壁を地面に叩きつける。
「ゆっ、揺れてますっ!」
クイーカさんが叫ぶ。
本当に地震が起きたみたいだった。
高速で叩きつけられた氷の壁は下にいたガルゴンドを叩き潰し、砕けた氷は高速でガルゴンドの体を貫いた。
ばたばたと倒れていくガルゴンド。
そのスペースを埋めるかのようにガルゴンドが移動していた。
「80匹ぐらいは殺せたかのう」
ガルゴンドの群れの空白地帯。
優雅にニャルティさんは降り立った。
「氷の刀」
そして氷の刀をさし、地面にさした。
「凍らせろ」
地面が一瞬で凍った。
ニャルティさんの周りのガルゴンドの足が凍って身動きがとれなくなる。
それを見た周りのガルゴンドがさらにニャルティさんに押し寄せる。
「カカカッ。どんどんくるがいいっ!」
襲ってくるガルゴンドをニャルティさんは切り伏せていく。
四方八方から襲ってくるガルゴンド。
でもニャルティさんは踊るように攻撃を避け、手足を切断していった。
「きれい……」
ぼくは思わず見惚れてしまった。
戦っているというより踊っているように見えた。
「きなこっ!」
そしてぼくはコルネットさんの声で我に返った。
「走るわよっ!」
見ると一直線先に洞穴が見えた。
たくさんいたガルゴンドはほとんどニャルティさんの方へ向かっている。
今がチャンスだった!
「行きましょうっ!」
「うんっ!」
ぼく達は洞穴に向かって走った。
結界にたどり着かなくては話にならない。
「フレイムバードっ!」
全部のガルゴンドがニャルティさんのところにいったわけじゃない。
邪魔になりそうなガルゴンドをコルネットさんが焼いていく。
「戦うあなたに守りの加護を!」
そしてクイーカさんがコルネットさんに呪文をかけて援護している。
ぼくは無我夢中で走った。
走ることしかできないし、それがぼくの役目だった。
そして思ったよりも早く洞穴に辿り着いた。
「カカカッ! 次に斬られたいのはどいつじゃっ!」
少し遠くではニャルティさんが戦っていた。
「本当に1000匹倒すつもりみたいだわ……」
「おかげでこっちはほとんどいませんね」
「それじゃぼくは……」
行きます。
そう言おうとした。
でも……
「きなこさんっ!」
クイーカさんに包まれた。
「クイーカさんっ!」
「ちゃんと戻ってきてくださいねっ!」
クイーカさんの体が震えているのが分かった。
たぶん、ぼくが洞穴に入るのがぼく以上に怖いのだろうと思った。
ぼくもクイーカさんが洞穴に入るというなら、同じように思うから。
「大丈夫です」
元気づけるためじゃなくて、確信を持ってぼくは言えた。
「ぼくにはみんながついてますから」
1人じゃ洞穴に入る勇気もない。
でもクイーカさん、コルネットさん、ニャルティさんがいるから結界を越えることができると思った。
「だそうよ」
言いながらコルネットさんがクイーカさんを引き剥がす。
「あんたも心配症だわね。きなこは大丈夫よ」
ぼくは洞穴を見る。
真っ黒い結界があった。
奥に何が待っているのか分からない。
でもぼくがいかなくちゃいけない。
オール1のステータス。
スライム以下のステータス。
だからこそぼくが行かなくちゃいけない。
それがぼくにできることだから。
「結界を壊せたらよろしくお願いします」
「もちろんよっ!」
にこっとコルネットさんが微笑む。
それは何よりも頼りになる笑顔だった。
「それじゃ、行ってきます」
すぐに戻るつもりだけどぼくは言った。
そして返事を聞く前に、結界を通り抜けた。




