馬車の中!
「風が気持ちいいですねっ!」
「ですねっ! あっ! ミッピン洞窟ですよっ!」
「懐かしいわね。ミッピンきのこをまた取りに行ってもいいかもしれないわね」
「今度はたくさん儲けたいですっ!」
「妾は換金するより自分で食べたいのう」
「このクエストが終わったら買って食べましょうっ!」
「いいですねっ!」
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「馬車が止まりましたね」
「魔物が出たのじゃろう」
「そんな気配がするわね」
「いまいち分からないです」
「ぼくは全然分からないです……」
「なんじゃかうずうずしておるな」
「やっぱり魔物が出てると戦いたくなるわ」
「後で嫌というほど戦うことになるんじゃから我慢しておけ」
「……それもそうね。じゃあ寝とくわっ!」
「魔物が出てると聞いてよく眠れますねぇ……」
「妾が言うのもなんじゃが、こやつは図太すぎるじゃろ」
…………
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「あー。よく寝たわ。まだつかないの?」
「半分ぐらいじゃな」
「なかなか馬車の中にいるのも暇ねぇ」
「お主はだいぶ寝てるじゃろ」
「暇だから寝てるのよ」
「というかよく眠れますね……」
「むしろクイーカは馬車の中でぐーすか眠ると思ってたわっ!」
「最初は眠かったんですけど、今はちょっと……」
「もしかして緊張してるとか?」
「それもあるかもしれないです」
「ふーん。まぁリラックスすることねっ! アタシみたいにっ!」
「それはちょっと難しいかもです……」
…………
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…………
「そろそろお昼の時間だわっ!」
「サンドイッチを作って持ってきてます」
「ありがとうきなこっ! もらうわっ!」
「妾も貰っておくかのう」
「わたしは……今はいいです。朝食べるの遅かったですし……」
「そう? じゃクイーカの分ももらっていい?」
「いいですよ」
「ぼくも食べれないです……」
…………
………‥
…………
…………
馬車は順調にオウフェンス平原に向かっていた。
たまに魔物が出て止まることもあるけれど、用心棒の人達が問題なく対処してくれてる。
だからぼく達はずっと馬車の中。
でも雰囲気は街を出た直後から変わっていた。
うきうきした感じで景色を見ていたクイーカさんはもう外を見ていない。
寝っ転がっていたコルネットさんは起きて集中している。
ニャルティさんだけ出発の時と変わっていない。
そしてぼくは……
「大丈夫ですか?」
ぼくを見てクイーカさんは言った。
たぶん、そんな言葉をかけたくなるような顔だったんだと思う。
「ちょっと緊張してきました……」
ちょっとっていうのは嘘だった。
本当はとても緊張していた。
最初はなんだかピクニック気分もあったけど、今はそんなのなくなっている。
「わたしもです……」
ため息をつきながらの一言。
「今まで採取しかやってきませんでしたもんね」
「そうですよね」
今まで魔物と遭遇したことは何回かあった。
そのたびに怖いとも思った。
でもそれらは偶発的なできごと。
今回とは違った。
「コルネットさんは緊張はしてないんですか?」
「アタシっ!?」
急に話を振られたせいなのか、驚くような表情を見せる。
「アタシは……まぁぼちぼちっていったところね」
言いながらにっこりと微笑む。
その笑みにはなんだか余裕を感じることができた。
「今までも戦ってはきたし、アタシのやること自体は変わらないからね」
「それが大きいですよね……」
はぁ……。
とため息をつくクイーカさん。
「今回はわたし達も戦いの中にいかなくちゃいけないわけですし……」
「ぼくもなんだか今になって怖くなってきました……」
ぼくは結界を破壊する役目。
破壊したらすぐに助けがくるとはいえ、短い間でも無防備になるのは間違いなかった。
「怖いのは当たり前じゃ」
そんなぼくにニャルティさんは言う。
「妾も初めての戦いの時は怖いと思ったぞ」
「ニャルティさんもそんな時があったんですね」
クイーカさんはなんだか感心するように言った。
「当たり前じゃ。恐怖を感じないのは妾の前にいるやつぐらいじゃと思うぞ」
「アタシは天才だからねっ!」
「むしろ馬鹿だからじゃろう」
「何ですって!」
いつも通りに会話をする2人。
本当に凄いって思った。
「とにかく自分の身を守ることを最優先にするべきじゃな。クエストが失敗したってだからどうしたって話じゃしな」
「まぁアタシがいる限り失敗なんてありえないわっ!」
自信満々に拳をならすコルネットさん。
そんなコルネットさんをニャルティさんはジト目で見ていた。
「お主はちと黙ってくれんかのう……」
「もうすぐ着きます!」
前の方から声が聞こえた。
なんだかその言葉が聞こえて緊張感や恐怖心がとても大きくなった。
「準備などをお願いします!」
「だそうじゃ」
「アタシはいつでもいけるわよっ!」
「えっと……」
おそるおそるという感じでクイーカさんが手を挙げる。
「どうかしたの? 本番前にトイレに行きたいとか?」
コルネットさんの言葉に、
「ちっ、違いますよっ!」
クイーカさんは顔を赤くして首を振る。
「お主は本当にデリカシーがないのう」
それには心の底から同意した。
「えっと、最後に作戦? を確認しときたいんです……」
「作戦って言ってものう……」
ほっぺたをかくニャルティさん。
「妾がガルゴンドを倒しながら囮になって引きつける。そしてコルネットの護衛で結界がある洞穴まで移動」
「そして結界が壊れたらアタシが中の魔法使いを倒すっ! 分かりやすいわねっ!」
「わたしはコルネットさんの援護をすればいいんですよね?」
「そうじゃのう。囮と言っても全員が妾を襲うとは限らんしのう」
「その……ニャルティさんは1人で大丈夫なんでしょうか?」
「カカカッ!」
ニャルティさんは楽しそうに笑う。
「妾は|悪魔戦争<デビルウォー>で生き残った数すくない純粋な悪魔じゃぞ。ガルゴンドなんぞに遅れを取るはずがなかろう」
「それを言うならアタシだって援護なんていらないわよっ!」
「お主がそう言ったら面倒くさくなるんじゃが……。まぁコルネットというよりきなこを助けてやってくれ」
「分かりましたっ!」
「アタシも全力で守るから安心しなさいっ!」
「はいっ!」
みんなの言葉にちょっとだけ心が軽くなった気がした。
「問題があるとすれば、結界を作っている触媒がどこにあるかということじゃ」
「結界のすぐ近くにあるんじゃないんですか?」
ぼくはニャルティさんを閉じ込めていた結界を思い出しながら言った。
「ある程度近くに触媒がないと駄目じゃが、すぐ近くにってわけじゃないんじゃ」
「今回はもしかしたら敵の魔法使いが持っている可能性もあるってことですか?」
「ありえるし、あの時みたいに近くに置いているかもしれん」
「入ってみないと分からないってことですね」
「そうじゃ。じゃが深追いはするなよ。入ってすぐに敵がいたら、または10秒探してなかったら外に出るのじゃ」
「ですね。その時はクエストは諦めた方がいいかもしれないです」
クイーカさんがまっすぐぼくを見る。
「きなこさんに何かがあったらって考えるだけで怖いですし……」
「……分かりました」
ぼくはニャルティさんが言ったことを心の中で反芻した。
「結界の中にいるやつも追いかけて出てこんじゃろうし……」
「出てきたらアタシの出番ってわけねっ!」
「腕っぷしでは役に立つから期待しておるぞ」
「任せといてっ!」
「わたしも頑張りますっ!」
「ぼくもっ!」
「妾も久しぶりに全力を出すかのう」
「到着しましたっ!」
その言葉を合図に馬車が止まり、ぼくたちは降りた。
「この先がオウフェンス平原です。我々はここで待機しています」
「帰りが徒歩になるのは流石に嫌じゃからのう」
ぼくたちはオウフェンス平原へ向かって歩いた。
「不安ですよね……」
「ですね」
コルネットさんとニャルティさんは自信満々に見える。
でもぼくとクイーカさんは不安でいっぱいだった。
「手、つないでくれませんか?」
ぼくはクイーカさんに言った。
「クイーカさんと手をつないでいると安心するんです」
「わたしもきなこさんと手をつないで歩くと安心します」
クイーカさんは言いながらにこりと微笑む。
自然で可愛い笑顔。
ぼくはクイーカさんと手を繋いで歩いた。
不安がどこかに飛んでいったような気がした。
クイーカさんも同じだと嬉しいっと、ぼくは思った。




